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綾部の迎えが来るのをかれこれ15分ほど待っていると、「すんませ〜ん、綾部奈知居ます〜?」と男二人組が店内に顔を出した。

どうやら迎えに来たのはこの前の男ではないようだが、やたらイケメンな二人組に、一緒に迎えが来るのを待ってくれていた人が「あ!綾部くんの友達のイケメンくんだ!」と嬉しそうな声を上げた。

なるほど…これがあの噂の友達か。確かに話題にされるだけあってめちゃくちゃイケメンだ。電話の人がこの二人に迎えを頼んでくれたのだろうか。

見るからに寝巻きでわざわざ来てくれた感満載のそのイケメンの友達は、無愛想な態度で会釈をする。…やべ、なんかこの人怒ってねえか…?


「あの、綾部ならここに…。」


人を抱き枕のようにして抱きついて寝たまま離れない綾部に困惑しながら俺は綾部の友人に呼びかけると、綾部の友人はその姿を目にした瞬間、呆れたような顔をして「「はぁ〜」」と二人揃って溜息を吐いた。


「おいなち坊なにやってんだよ。」


不機嫌そうなイケメンが、そう言いながら綾部の尻を蹴り始めた。


「ん…、ぐぅ。」

「ぐぅ、じゃねえぞボケ。」

「るい蹴りすぎ蹴りすぎ。」


もう一人の友人は、綾部の尻を蹴りまくる友人に笑いながら、綾部を俺から引き離してくれた。


「つーかなちくんなに酒飲んでんの?」


不機嫌そうなイケメンは、不機嫌そうな顔のまま俺に問いかけるように視線を向けてきた。


「や…、それが、コーラ頼んだつもりが何故かそれがコークハイだったっぽいんすよ…。」

「はあ??」


こ、こわ…。イケメンの不機嫌顔怖すぎる…。


「とりあえずタクシーに押し込んでうち連れて帰るか。」

「…なんか、まじすんません…。」

「いやいや、俺らは全然大丈夫なんで!それよりなっちくん、酔っ払ってなんか変なことやらかしませんでしたかねぇ?」


“なっちくん”?ってのは綾部のあだ名か。


「あー…いや、特には…。」

「それならいいんだけど。」


こっちのイケメンはにこやかに話してくれて、ちょっとホッとする。


結局友人二人に引き摺られるように居酒屋を出た綾部は、その後タクシーに無理矢理押し込まれて帰っていった。

夜遅くにも関わらずわざわざ迎えに来てくれるほど親しい友人を持つ綾部なら、ただのバイト仲間の俺なんて仲良くなる必要ねえか。と自虐的に考えてしまい、やっぱり俺はまたちょっと寂しい気持ちになった。


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