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「あ!お兄ちゃんこれ誕プレね!りなとお母さんとりとから!!」

「え、お前も?」


りなから大きな紙袋を受け取りながら、驚き混じりにりとへ視線を向けると、りとは「…まあ。うん。」とそっぽ向きながら頷いた。


「うわ、まじで?お前俺に誕プレとか初じゃん。」

「…貰いっ放しは悪いと思ったんだよ。」

「なんだよお前、可愛いとこあんじゃん。」


まさか憎たらしい弟からそんな言葉を聞けるとは、と感動しながらソファーに座っているりとの頭をガシガシと撫でると、思いっきり振り払われた。

あ、前言撤回。やっぱり可愛くはない。

でも、物凄く嬉しい。貰った紙袋の中身を見ると、紺地に茶色の持ち手の通学にも使えそうな鞄だった。


「あ、すげえ良い。サンキュー、使うわ。」

「りなが選んだんだよ!」

「だと思った〜。」


貰った鞄をオシャレと褒めると、りなは嬉しそうで、それから満足そうだった。

褒めると喜ぶ妹はとても可愛げがある。

弟は可愛げ全然ねえけど。

兄妹から貰った誕生日プレゼント、大切に使おうと思う。


その後、ゆりさんが作ってきてくださったケーキをみんなで食べた。


お菓子作りが得意なゆりさんの作るケーキはとても美味しくて、みんな「美味しい美味しい」と口にしながらケーキを味わう。

素直じゃないりとの口からも「うま。」という言葉が出ていたから、その腕前は確かだ。


「おお、母ちゃんやったな。りとくんにうまいって言わせられるのはなかなか凄いぞ。」

「おお!やったな!母ちゃんプロなるわ!」


そっくりな親子のその会話に、場の空気が和んだところで、室内には再びインターホンの音が鳴り響いた。


「あーあ、りなちゃんどうやら奴が来てしまいましたわ。」

「あー来てしまったか。奴が。」


インターホンの音を聞き、航とりながそう会話する。…その奴とは……


「おじゃましまぁぁぁす!!!りなちゃん来てる!?」

「はいはい、来てる来てる。」

「あ、矢田くん誕おめこれプレゼント!」


まるでりなに会いに来たおまけのように渡された誕生日プレゼントは、コンビニ袋の中に入ったコンドームと何故か春雨スープ二つ。意味不明な組み合わせに反応に困っていると、クソカベに続いて家に入ってきたモリゾーに真っ黒なビニール袋を渡された。

はい、エログッズ決定。

中身はあとで見ようと思っていると、「今見ろよ。」とモリゾーに言われ。中身を覗いたらいろんな種類のローションやコンドームが入っていた。


「……おお。…サンキュー。」


内容が内容だけに素直に喜べねえけど、…うん。まあ…ありがたいな。と袋をそっと閉じる。


「…お礼はエリート大の美女との合コンセッティングでよろ。」

「あほか。」


思わずモリゾーの発言に手が出た。ぱしんとモリゾーの頭を叩くと、その背後で「ちょっとーモリゾー早く中入れよー。」となっちくんがモリゾーの尻を蹴っている。


「あ、矢田くんおじゃましま〜す。これ俺と雄飛から!」


そう笑顔でプレゼントを渡してくれたなっちくん。どこかのショップで買った服のようで、エログッズでないことになんとなくホッとした。

そんなに何個もコンドーム貰って引き出しにしまっててもし母さんに見られたらちょっと…うん。困る。とか俺も少しは思うわけだ。

とりあえずこれはタンスの奥にでもしまっておこう。



「りなちゃぁぁん!!久しぶり会いたかったですぅぅぅ!!あっ!お母様方こんにちは!!」


りなの姿を見て騒がしく部屋に入ったクソカベが次に母さんたちの姿を目にしたところで、スッと背筋を伸ばして挨拶した。


「日下部くん元気やなぁ〜!」と笑っているゆりさんに、頷きながら笑っている母さん。


「クソカベ毎日ライン送りすぎー。」


さっそくりなはクソカベにそんな文句を言っており、俺たちはクソカベに「そんなに送ってんのか?」とクソカベを見る。


「だって全然りなちゃんに会えないからラインでアピールするしかないと思って!」


わりと真剣にそう話しているクソカベに、俺たちは呆れたように「ああそう。」と頷いた。

四人がゾロゾロと部屋に現れ、騒がしくなったところで、母さんとゆりさんが「あとはお若い者たちでどうぞ」と立ち上がり、近くの喫茶店へ行こうかと話している。


「おー、すげー俺も同棲してえ。」と隣の部屋に勝手に入っていった雄飛と、その後を追うなちくん。


「で?スケベグッズどこしまったんよ。」と引き出しを漁るモリゾーに、りなに構いっぱなしのクソカベ。

お前ら何しに来たんだよ!と叫びたくなる状況の中、俺は肝心なところを見落としていた。


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