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「今日はみんなに大事な話があります。」


放課後、生徒会役員に召集をかけた古澤会長が、真面目な表情で話し出した。


「ん?なんすか?改まって。」

「絢斗も雄飛も、今がどういう時期かわかってる?」

「へ?」

「どういう時期?とは。」


キョトンとした表情の宇野先輩と春川先輩に、古澤会長が「はぁ、」とため息を吐いた。山崎先輩も苦笑気味だ。

僕はと言うと、さっぱり話がついていけない。


「俺とザキさんはさ、もう三年で受験生なわけ。生徒会役員は三年の夏までなんだよ。」


と、そこまで話をした古澤会長に、春川先輩と宇野先輩がハッとするように顔を見合わせた。


「…お前ら俺らが引退することまったく頭になかっただろ…。」


再び「はぁ、」とため息を吐きながら、額に手を当てた古澤会長。


「え!?古澤会長って引退するんですか!?」

「バカ!するに決まってるわ!!」

「えぇ!?嘘でしょ?」


大袈裟な態度で口を開けたのは、春川先輩だ。


「え、じゃあ誰が会長やるんすか?絢斗?」

「は?俺?まじ?春川帝国できちゃうけど?」

「うわ、きっつ…古澤会長、これ無理あるっしょ。」

「うん、俺もそう思う。だからどっちかというと雄飛にやってもらいたいんだけど…。」

「異議あり!!!!!」


困ったように口にした古澤会長の言葉に、ピン、と高く春川先輩が手を上げた。


「雄飛が会長とかこの学校破滅するから!」

「まあ確かに俺が会長ってのも無理あるけど、絢斗が会長なのも大概だろ。」

「春川帝国舐めんな。」

「あ、もういっそのことミッキー会長にします?」

「えっ!?」


良い案思いついた、とばかりに古澤会長に向かって発言した宇野先輩に、俺は驚いた後全力で首を振った。


「ぼ、僕は、宇野先輩が会長で良いと思います…!」


そして正直な意見を口にすると、「いやいや…」と宇野先輩は、顔を引きつらせた。


「…俺が会長はねえだろ…。俺の知ってる歴代の生徒会長ってみんなSクラスの秀才な人なんだけど。」

「はいはーい、僕Sクラスでぇ〜っす。」

「……困ったなぁ。どうしようか。」


とにかく調子の良いことばかり言う春川先輩と、自分はありえないと言う宇野先輩。困り果てる古澤会長と、始終苦笑している山崎先輩。


この話はなかなか先へ進まず、本当ならば夏休み前には生徒会役員の世代交代を行うらしいのだが、生徒会顧問と相談した上で最終的に決まったことは、古澤会長と山崎先輩の善意で二人が秋まで役員をやってくれることになった。





「ちょっとるい聞いて聞いて、貴哉秋まで生徒会やるらしい。」

「は?秋?なんで?」


朝、大学の教室に到着した俺を、待ってましたというような態度で仁は到着したての俺にすぐ話し出した。


「生徒会長決まんないんだって。」

「…あー…。なるほど。」


昨晩にでもその話を古澤としたのだろう。

生徒会か、懐かしいなあ。……なんて呑気に思い返している俺は、今の古澤にとって憎まれるべき存在かもしれない。


「今の役員っつったら春川と雄飛だもんな…。」

「そうそう、誰かさんが引き入れたあの二人な。」

「ハハ…そうだったそうだった。あー…懐かしいな、生徒会。」


俺は自分の責任から目を逸らすかのように、昔のことを思い返す。


「ちょっとさー、貴哉の相談乗ってやってよ。ほら、るいの責任でもあるんだしさ。」

「ハハ…。まあ、相談くらいならいくらでも乗るけど。」


生徒会長…か。

俺は雄飛が最適だと思ってるんだけど…

そう上手く決まる話でもないのだろう。


「今度、生徒会に顔出してみるか。」


秋まで役員を続けるという古澤のことを、俺もなんだか心配になってきた。


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