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「絢斗、後輩だってよ。やったな。」

「まじで〜?どんな子?可愛い?」

「絢斗、そういう興味を後輩に見せるのはやめろ!一年Aクラスの三木くんな。」

「へー、ミッキーね。どれどれ、春川先輩が手取り足取り優しく生徒会について教えてやろう。」


ペロリと唇を舌で舐めながら春川先輩が僕に視線を向けてきた。


「おー、まあイケるな。合格!」

「だから絢斗、後輩をそういう目で見んのやめろ!」


春川先輩の発言に、古澤会長が近くにあった雑誌を手に取り、バシッと春川先輩の頭を叩いた。


「有り寄りの有り。」

「無し無し!!とりあえず早くAVしまってくれ!!」

「へーい。」


かっこいい顔してなんなんだあの人…。僕が今まで抱いていた春川先輩のイメージが完全に崩れていった。

部屋の奥の方には、デスクに腰掛けたもうひとりの三年の先輩が苦笑いを浮かべている。


「あ、三年の山崎で〜す、よろしくね。」

「三木です、よろしくお願いします。」


山崎先輩にお辞儀をしたあと、顔を上げると宇野先輩と目が合った。


「あ、俺二年宇野。よろしくー。」

「よっ、よろしくお願いします…!!」


片手を上げ、宇野先輩が僕に挨拶してくれた。

僕は慌てて、再びお辞儀をした。


「雄飛後輩ビビらせんなよー、ミッキー辞めたらお前の所為だから。」

「は?ビビらせてねえだろ、ミッキーが辞めたら確実に卑猥な行動ばっか取ってる絢斗の所為だろ。」

「うんうん。その通り。雄飛もっと言っていい。」


…わ、宇野先輩にミッキーって呼ばれた…。嬉しくて口元がニヤける。憧れの人と知り合えた喜びがはんぱない。


「卑猥な行動?それを言うならお前もだろ雄飛、AV見てる時チンコ勃ってたぞ。」

「は?嘘つくな勃ってねえよ。俺はもうAVじゃ勃たねーんだよ。」

「はいはいはい終わり終わり終わり!もうお前らまじでいい加減にしろ!!」


春川先輩と宇野先輩の会話を、古澤会長が大声で怒鳴りながら必死で止めた。


「あー…まあ、とりあえず、こんな奴らだけど、ほんと、怖くはないから。…大丈夫そう…?」


控え目に問いかけてくる古澤会長。多分、僕に辞められると困るのだろう。

でも心配しなくても大丈夫。僕は、二人の先輩を見て怖いと思ったことはないし、僕は宇野先輩ともっともっと近付きたいから。


「大丈夫です!生徒会、頑張ります!よろしくお願いします!」


僕は張り切ってもう一度、先輩方に向かってお辞儀をした。


今日から僕の、

生徒会役員としての学校生活が始まった。





「あ、そうそう。生徒会に一年入ったんだってー。雄飛がこの前言ってた。」


そう言ってから、チューとストローで紙コップのミルクティーを啜るなっちくん。ミルクティーを飲んでいるなっちくんの表情は少し浮かない表情に見える。


「不安ってか?」

「え?」

「なんか顔が嫌そう。」


今日はバイトも無く、暇だからなっちくんとファーストフード店で駄弁っていた時のことだ。ちなみにるいはバイトだから夜まで帰ってくることはない。


「んー、嫌っちゃ嫌でもしょうがねえことってわかってるけど一年どんなやつだろ?って気になったりしてちょっと嫌。」

「まあ、わかる。同じ学校に居ないといろいろ気になるよな。」

「うん。航だって矢田くんのこと考えるとそうだろ?」

「まあな。」


るいにその気はなくても周りにはあるからそれが不安。なっちくんとは互いのことを理解し合えるから俺の話にもよくうんうん頷いてくれる。


「でも雄飛のことだから後輩にビビられてねえかな?」

「それなっちくんの願望だろ。」

「まあね。」

「後輩にはすげえ優しいかもしんねえぞ雄飛。ってか雄飛普通に優しいやつだけど。」


それを言うと、なっちくんは唇を噛んでもっと嫌そうな顔をした。おっと余計なことを言ってしまったな。

俺は素知らぬ顔をしてポテトをむしゃむしゃと食べた。


「…そうなんだよ。雄飛って優しいんだよ。んで男前だし。かっこいいし…。」

「はいノロケ入りましたー。」

「いいだろ、ちょっとくらい話させろ。航くらいしか話せる人居ないんだから…。」

「あかりたちにさっさと話せばいいのに。」

「…んー。」


煮え切らない態度のなっちくん。

まあ言いたくなった時言えばいいけど。


「…恥ずかしいし。」

「あかりたちに話すのが?」

「…うん。」


頬を少し赤らめて頷くなっちくん。確かにそんな赤い顔して男子大学生がモジモジしてる姿は見ていても恥ずかしいわ。


「ぶふっ、…まあわざわざ話す必要ねえかもな。」


どうせ言わなくてもバレバレだし。

もじもじしてるなっちくんをあいつらなら優しく見守ってくれるだろう。


「てか久しぶりに高校行ってみる?俺らOBだし普通に顔出しても良くね?」

「おぉ!行きたい!いつ行く?」

「バイトない日かな。るいとかも誘う?」

「いいね!よし!そうしよ!!」


ふと思い付き、提案した内容に、なっちくんは嬉しそうに食いついた。


やっぱ、学校での雄飛の様子が気になるもんな。

わかる。雄飛勉強頑張ってるかなー。


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