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「お待たせしました〜!航さんアイスコーヒーで良かったですかぁ?」

「あ、…はい。ありがとうございます。」


正直余計なお世話だけどな!!!

せっかくの好意を申し訳無いが、さっさと飲み干して俺は帰らせてもらうぞ!と彩花ちゃんの友人が奢ってくれたアイスコーヒーに口を付けたが、そのコーヒーの苦味に眉を顰めてしまった。


「う…。」

「ん?航くんどうしたの?」


…ここのコーヒー、苦いなおい。俺は苦いコーヒーが苦手なのだ。アイスコーヒーにはガムシロップが絶対に必要で、なんなら2個入れでもいいくらい。


「俺苦いの苦手…。」


コーヒーの苦味に声が出てしまった俺の顔色を窺ってきた彩花ちゃんにコソリと話すと、彩花ちゃんは「あはは!」と満面な笑みを浮かべて笑った。


「そういやそうだったね!あたしのと交換してあげる!キャラメルマキアートだよ!あんまり口つけてないから飲んで?」

「え…、あ、いや、それは…、」


あんまり口つけてないって言うけど、一回はつけたよな…?それってつまり、…間接キス……。


「あたしこっち貰うね?」

「えっ!いやそれ、今俺口つけたぞ!?」

「平気だよ〜。」


…いや、俺が平気じゃねえんだけど。

俺が一口飲んだアイスコーヒーを飲んでしまった彩花ちゃん。そして、俺の目の前には恐らく一口二口ほど彩花ちゃんが口を付けたキャラメルマキアート。


…ごめん、彩花ちゃん。俺はこれを、飲むわけにはいかない。変なこだわりかもしれないが間接キスでもダメだ。るいが嫌がる。俺は、るいが嫌がることはしねえ。


居心地の悪さは増すばかりで、どうにかして早くここから立ち去ろうと思っていると、彩花ちゃんの友人がにやにやしながら口を開いた。


「ふっふっふ、彩花やるぅ〜。」

「ちょっと!なおちゃんうるさいよ!」

「でも間接キスだよ?それ。航さん困ってんじゃん。」


彩花ちゃんの友人のその発言に、彩花ちゃんは顔を真っ赤にして黙り込んだ。そしてまた俺の顔色を窺うように、チラリと視線を向けてくる。


「…航くん、ごめんね…?小学生からのノリがまだ抜けなくて…。嫌だった?」


ここで俺は、ハッと過去を思い返す。そうだ、彩花ちゃんと間接キスなんて今まで数え切れないほどしてきた。今更何を気にしているんだろう。

友人として今後付き合っていくには、これくらいで気にするわけにはいかねえな。と、俺は彩花ちゃんの飲みかけのキャラメルマキアートにささったストローに口をつける。


「全然嫌じゃねえよ?おお、これうま!めっちゃ甘い!」


ここで俺は、間接キスという言葉を頭から消して、キャラメルマキアートの味に集中することにする。そして、これを飲み干したら俺は帰る。


しかし、この空気を変えるようにキャラメルマキアートの感想を話す俺の隣で、彩花ちゃんは元々赤かった頬をさらに赤くさせ、ぼそりと小声で口にした言葉を、俺は聞き逃すことができなかった。


「…やっぱりあたし…、諦められない。」


そしてこの言葉が聞こえた直後、彩花ちゃんは俺に縋り付くように、俺の二の腕を両手で握った。


「ねぇ、航くん…あたしにチャンスをもらえない…?」


え?チャンス?チャンスって??

え、なんのチャンス!??


俺は彩花ちゃんの言葉に、驚きや混乱で唖然として固まった。そんな俺を動かしたのが、ピコン!と音を立てた俺のスマホである。

うわ、マナーモードにしてなかった。


ハッとしながら俺は彩花ちゃんに掴まれていない方の手で、ポケットに入れていたスマホを取り出し画面に目を落とす。


【 突撃していい? 】


は?


今度はその一文を見て俺は唖然。

差出人はるいからだ。

なんとなく嫌な予感がして、視線を窓ガラスの方に向けると、見間違うはずもない、一際目立った容姿をしたイケメン男が、むっすり不機嫌面を浮かべて店の外に立っていた。


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