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【 緊急事態!

航、可愛い女子大生と会ってるなう 】


高校時代、元Eクラスの俺たちの間に隠し事というのがあまり無かった。

いや、無いというか隠せない。俺が童貞だということも一瞬でバレた。…が、わりと周りの奴らも童貞だったからそれは問題無い。そもそも俺は見た目からして童貞っぽいらしいが。


授業中であれ頻繁に受信するラインメッセージが主な情報源で、しかもそれは超リアルタイムである。


【 は!?女子大生!?詳しく 】

【 航ふざけんな 】

【 小、中学の時の友達だって。遠くからしか見えなかったけど可愛いかった。 】


なっちくんは結構お喋りで、仕入れた情報…というかネタはすぐにラインで報告してくれる。俺やモリゾーはそのネタで暇潰しをするかのように怒涛の返信攻撃をするのだが……

なっちくんからの俺と同じラインメッセージを見ているはずのモリゾーが、俺の隣で静かにスマホで文字を打っている。

チラリとモリゾーのスマホ画面を見ると、そこに表示されているのはラインのトーク画面で、しかも上部には【 矢田 るい 】という文字が。

は?こいつ矢田くんとやり取りしてんのか?


「お前このタイミングで矢田くんとラインしてんの?なに話してんの?」

「矢田くん今日航と映画見に行くって珍しく自分からのろけてきたんだよ。」


そう言いながらモリゾーが見せてきた矢田くんとのやり取りは、確かに矢田くんからののろけたメッセージが書かれている。


【 今日は航くんと映画おデート 】

【 おデートよかったな、ところで美女との合コンセッティングしてくれるって件どうなった? 】

【 誰もお前とは合コンしたくないってよ 】

【 oh… 】


会話はモリゾーの【 oh… 】で終了していたが、どうやらこの後モリゾーは矢田くんに新たにメッセージを送信したらしい。


【 航のやつ、可愛い女子大生と会ってるんだって? 】

【 は? 】


……っておい!!!

これ絶対矢田くんに言ったらダメなやつじゃね!?

俺がなんとなくそう思ったその直後、なっちくんからの今更もう遅いメッセージが届いた。


【 あ、ちなみに矢田くんには内緒な?航矢田くんには言ってないらしいから。 】


なっちくん…それ、も う 遅 い 。

ほらな。だから俺たちは、このお喋りな友人とラインがある限り、隠し事ができないのだ。





【 航のやつ、可愛い女子大生と会ってるんだって? 】


モリゾーからのラインメッセージに、一瞬ドクンと心臓が大きく音を立てた。

学校の後の、楽しみにしていた航との映画デートは、数分前に届いた航からの【 ちょい遅れる 】というメッセージに若干のテンションダウン。だが、まあそんなことはたいしたダメージではない。

俺と航がそれぞれ通っている大学の丁度中間あたりに位置する駅で待ち合わせをしていたから、俺は一足早く駅で航を待つ事にした。

そんな時、モリゾーから届いたこのメッセージ。

は?なんで?嘘だろ?
可愛い女子大生ってなんだよ!!!

居ても立っても居られず、その真相を確かめるべく、俺は待ち合わせ場所の駅から電車に乗って、航が通う大学へと足を運んだ。

つくづく自分が面倒な人間だな、と思う。嫉妬深い性格とか、本当どうにかなんねえかな。俺は航を信じているはずなのに、好きすぎるから不安で不安でしょうがないのだ。高校ん時から俺まったく進歩ねえな…。


【 矢田くんモリゾーからなんか聞いた!?それあんまり大したことじゃないから気にしないで!! 】


…あ、なっちくんからラインきた。大したことないっつったって、じゃあ航は今誰と会ってんの?

俺は航のことなら、些細なことでも気になるんだよ。


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