Last*Lost
忍ぶれど
「ん? どうしたんだタクト。今日は鍛錬休み…っておまっ、えええっ、ちょ、えっえっ、な、なななな」
「笑えよ畜生…っ……ぐずっ…」
昨日から悲しさとか悔しさとか色々いっぱいいっぱいで布団では泣くわ朝鏡みたら目ぇ腫れてるから体調悪いといって朝ごはん断るわ泣いても泣いても涙は止まらないわ
困った。
自分は我慢強い方だと思っていたのだが、どうやら色々ありすぎて許容量オーバーのようだ。
隣に座り心配そうに覗き込んでくるハンゾー。
「…こっちみるなよバカ。」
「悪りぃ」
そういって顔を一度は反らしたものの、その後気になるのかチラチラこちらをみては心配そうな目。
「……泣いてたって、黙ってろよ」
そういってハンゾーの肩を借りて声を殺して泣いた。背中をポンポンとされて子供扱いされたみたいで悔しかった。
「……で、何があったか話してくれんだろ?
「嫌だ」
ズバッと言い切った俺にハンゾーはずっこけた。
「おま…俺の服ベタベタにしておいてその態度はねーよ!」
「さて何のことやら」
「ーーーーッてめー!
なら俺だってお前が泣いて」
「っばか!シーっ!おま、声でかいんだよ!」
「なら言えよ」
ハンゾーをみ、ため息をついてタクトは話しだした。
「……で、その髪留めがあの《霊障の森》にあるわけ。ま、入り口付近だろうけど中には入れないだろ」
そうだな…と呟いた後に不思議そうな顔をしてハンゾーは言った。
「でも何で長男に貰ったものを次男が捨てるんだ? あそこんちの次男は長男には逆らわないだろ。ならそんな長男からのプレゼントに手ェ出さないはずなのに」
内心舌打ちをする。こいつカンはいいからな
嘘を言っても仕方がない、か。
「サクタにぃに貰ったなんて俺一言も言ってないけど」
「? じゃあ三男から? 意外すぎるんだが」
それも違う、と答えるとハンゾーのまわりにかなりの疑問符が飛び交った。
「俺が前いたところで血の繋がらない兄にもらった。」
「?! お前他家に養子入り暫くしてたのか?」
…何故そうなる
「俺梅篷にも養子入りしてんだけど……」
あ、ハンゾーが白目むいてる
意識どこいった?戻ってこーい
あ、戻った。
「お前…それ多分秘密事項だろ、そんなあっさりと言ってもいいのか?」
「え?何で秘密事項?」
今度はこっちに疑問符が飛ぶ
「そりゃおま、梅篷本家は有名武家のひとつだろ?
幼少幼年の頃は屋敷の外のものとは関わらねぇってくらい外部との接触が絶たれてるからお前のことだって俺は梅篷本家のお坊ちゃんってきいたんだ!
表向きにだってそうなってんのに…」
「屋敷内ではよく養子扱いされるけど…?」
「梅篷の凄さしらねーのかてめぇ!
内部情報は上層部でさえ分からないっていわれてんのに。中で働いてる奴らも化けもの並に強いって話だしな!」
そ、そんなに凄かったのか梅篷。
そうすると余計にどうして俺が梅篷養子入りしてんのか全くわからないんだが
本当、何故に?
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