Last*Lost
ピン留(死なない方の、髪を留めるのに使うものを指す)
屋根の上まで登ったところで、
俺は溜息をついた。
風が髪をなぜる。確かに伸びてきていた。邪魔といえば、邪魔か。
あぁ、俺バカだ。
イルミが折角ピンくれるって、しかも俺のためだってわかってたのに、
変にムキになって走り回って……
俺は膝を抱え下を向いた。
しばらくしてからイルミが屋根に登ってきた。
気づかないフリをして顔を下げたままにする。
「ごめん」
イルミの謝る声がきこえた。
「タクトに似合うかなって思ったんだけど…嫌だった?
ごめん、髪邪魔だろうから切ればいいっていえばよかったのに。」
そ、と近づいてきたイルミをみて何故か涙が溢れた
「イル兄はあやまんなくって…いいんだよ。変にムキになってたのは、俺。ごめんね?
ピン留…いま、貰っていい?」
「もちろん」
そういうとイルミは俺の髪をなぜてすっ、とピンを留めてくれた。
「似合うよ」
無表情のはずのその顔が、少しだけどほころんだ気がした。
「ありがと」
俺は俺の知らなかった皆を知れそうです。
ここに落としたおなごさんたち、ちょっとだけ感謝します。
ありがとう。
← ■ →
▲