褒美と告白


「じゃーん!」
俺は今、久々に自分以外の誰かが作った料理を目の当たりにしている。
普段誰かから料理を作ってもらうことなど皆無な俺にとってそれは、珍しい以上にありがたいものだった。
何よりその料理を作ったのが自分の好きな人となればなおさら嬉しい。
満面の笑顔でナマエがテーブルに並べたのは、鮭のムニエルやシチューといった洋風の料理だった。盛り付けも見事なもので、少し前までの目も当てられないようなナマエの料理とは全く違っていた。
まるで別人が作ったようだ。
「わぁ!ナマエすごい!」
となりのエルも目を輝かせている。
「当たり前でしょ、この日のためにいっぱい練習したんだから!」
そのセリフに、練習台となったであろう仲間たちを思い出す。
特にアルヴィンは手酷くやられただろう。かわいそうに。
しかし、そんなことを気にしていてはせっかくの料理も美味しくなくなってしまうというものだ。
アルヴィンには申し訳ないが、ありがたくいただくとしよう。
「さ、まだまだいっぱいあるから、じゃんじゃん食べてね!」
「うん!いただきます!」
エルはナマエに向かって頷くと、手を合わせてからスプーンを手にとった。
それにならって、俺も手を合わせる。
「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
ナマエは席に着きながらそう言った。
料理は、見た目以上に美味しかった。
◆         ◆         ◆
燭台のロウソクにともされた火が、ぼんやりと部屋を照らす。
その明かりのしたで、俺はナマエとワインを飲み交わしていた。
黄金色に輝くのは、それが最高級のパレンジワインであることを示している。兄さんから買ってもらわなければ、一生縁がなかったであろう高級品だ。
それを明かりに透かしながら、ナマエは気の抜けたような表情でふにゃりと笑う。
「夕飯、美味しかった?」
「ああ、美味かったよ」
「良かった。アルヴィンも喜ぶよ」
ナマエの口から出た名前に、ああやっぱりなと納得した。今度アルヴィンにあった時にはお礼を言っておかなくては。
グラスを傾けて中身を飲み干す。
「ねえ」
不意に耳元で声がして、肩を震わせた。
目線を後ろに向けると、いつのまにかナマエが俺の背中に寄りかかるようにして立っていた。
酒に酔っているのか、耳に当たる吐息は少し熱い。
「何だ?」
「人気投票1位、おめでと」
ろれつの回らない舌で囁かれれば、何も言わないわけにはいかなくて。
「ありがとう」
平静を装って返事をすれば、そのあとは声が聞こえなくなった。
寝てしまったのか、と一人納得して再びワインに手を伸ばす。
ボトルをつかもうとしたその手は、もうひとつの手によって唐突に掴まれた。
瞬間、背中に衝撃が走り椅子から落ちる。
見上げると目に入るのは、天井ではなくナマエの顔。
酒が入って上気した顔が、くしゃりと微笑む。
「でも、たとえ何位だったとしても私の中の1番はルドガーだからね」
いきなり告げられた赤面ものの台詞。
真意を問おうと口を開きかけた頃には、ナマエは俺の胸に寄りかかって眠ってしまっていた。
「言い逃げ・・・・・・」
随分と酔っ払った彼女に、頭を抱えた。
でも、と彼女の顔を見る。
幸せそうに眠る彼女の手は、俺の服を強く握っていた。
そんな姿を見せられたら「まあ、言い逃げされるのも悪くないかな」なんて思えるんだ。
「ああ、ありがとな」
多分聞こえてないだろうけど、俺はナマエの頭を撫でながら呟いた。

褒美と告白
(料理という褒美もいいけれど、君からの告白が一番心に響くよ)

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あとがき
遅くなってしまいましたが人気投票記念です。
ルドガーさん1位おめでとう!感情移入しやすくて、強くてかっこいいルドガーさん、大好きです!そしてアルヴィン君……今回も不憫キャラにしてごめんね。
ルーク版、ジュード版もあるのでぜひよろしくお願いします!


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