異能学園デゼスポワール


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『非日常の始まり・案内』



「という事があったんですよ」
「それはそれは、災難だったねえ。それは多分、三組の綾部と、同じクラスのロッティだね。後で指導しておくよ。そうかそうか……、スカートで開脚を」
「言わなくていいです」

 登校中の出来事を「おかしくないか」と愚痴をこぼすように、ヒロは迎えに来たクラス担任の教師に話すと、相手はただ笑ってそう言った。このような事は、この学園では日常茶飯事なのだ。
 ヒロはこのお気楽そうな教師を見る。どこか抜けているような印象を受ける、レトロな丸眼鏡をかけた初老の男性教諭で、厳しくも優しいといった感じだろう、特に行く末が不安になるような人物ではなかった。

 これからヒロのホームルームとなる教室の扉を開くと、今まで騒がしかった教室内が静まり返る。転入生が入ってくるのは高校では珍しく、それが異能学園となると尚更だ。ヒロは、彼らが騒ぎたくなる気持ちもよく分かった。

 担任について、黒板の前に立つ。クラスメイト達は興味深々といった様子でヒロの顔やらを見ている。ひそひそと話し声が聞こえる。ヒロがどんな能力を持っているのかを賭けている生徒達もいた。
 担任は黒板に名前を書き終え、自己紹介をするようにと目線で促した。

「東櫻木高から来ました。結城ヒロです。ええと、何か色々あってここに来ました。よろしく」

 ヒロが自己紹介を終えると、誰からともなく拍手を始める。担任は、教室の隅の空いている席を指した。
 ヒロは担任に言われた席に座り、隣の人の顔くらいは覚えておこうと右を向く。先には、ヒロを池に落とした挙句、魔法で遠くへ飛ばした張本人の黒髪の少女がいた。
 その場で叫び出したい気持ちを必死に抑えながらショートホームルームの時間を過ごしたのは言うまでもない。

「さっきは……本当にごめん、つい」
「つい、じゃありません。ごめんで済んだら警察はいりません」

 相手に悪気はなかったと分かっていても、怒る素振りだけはしておく。また後で何をされるか分からない。

「カシャッ」

 ふと背後から、如何にも口で言いましたというようなシャッター音が聞こえた。振り返るとそこに、眼鏡を額で固定した軽薄そうな見た目の少年がいた。

「ミステリアスなイケメン転校生、現る! 冗談。撮っとらんよ」
「悪い、仮水、ちょっと失礼するぜ」

 眼鏡の少年を優しく押し退けるように、ヒロの前に出てきた2人の男女。少年の方は金髪にピンをしていて、少女の方は周りにいる女性よりも少し身長が低めで髪が焦げ茶色だった。

「クラス委員長のケチ、転校生と少しくらい……」

 先ほど押し退けられた眼鏡の少年はそう言うが、金髪の少年は「悪いな」と苦笑いをする。

「初めまして。俺はお前のクラスで委員長をやっている園崎春樹そのざき・はるき だ。校内の案内を頼まれた。これからよろしく」

 金髪の少年、園崎春樹は手を差し出す。ヒロはその差し出された手を握り、「あぁ、よろしく」と返す。

「付き添いの琴浦翼ことうら・つばさ です! よろしくね! ヒロくん! 早速校内を案内するね!」

 焦げ茶色の髪の少女、琴浦翼も春樹のついでにと自己紹介をするのと同時にヒロの背中を押す。

「おいおい、そんな無理矢理押したら結城が困るだろ」
「あ! そうだよね! ごめん!」

 こうして春樹と翼による校内案内が始まった。

「あ、そういえば、さっき眼鏡の子いたじゃん?」
「ん?あぁ」

 翼が思い出したかのように先ほどの眼鏡の少年の話をする。彼の名前は仮水仮令かりみず・たとえ という。新聞部の部長らしい。

「ここ変人ばかりでびっくりしただろ?」
「え、あ、まあ……」
「仮令くんもそうだけど、まともな子もいるんだよ」

 翼と春樹はここにはまともな人もいるから安心していいんだよ、と言わんばかりに説明する。2人によりヒロは安心する。

 そんなこんなで話をして歩いているうちに校内案内が終わる。授業が始まり、そして終わり、

「変な奴に絡まれないようにな!」

 と春樹に気をつけてと言われて昼休み。1人で食うか、とヒロは屋上へと移動した。


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