異能学園デゼスポワール


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『高等部副会長について・さらけ出した感情』



「立ち入り禁止の地下室?」

ヒロの言葉に皆が声を揃えて首を傾げた。
ヒロが頷いて先ほどのことを説明した。
もし生徒会が地下室に入るのを許されているなら、ティーアもその存在を知っているのかもしれないと思って尋ねてみたが、当の本人は考え込んだ後に首を振る。

「いえ、知りませんね。
高等部の副会長なら…何か知ってた、かもしれませんが…」

途切れ途切れにそう言っては苦笑してため息を吐く。
そういえば六堂の存在は知っているが、副会長のことは何も知らないな、と思ったヒロ。
転校してきたばかりだからか、と納得するも翼が割り込んで聞く。

「実際見たことないけど、どんな人なの?」
「俺が聞いた話だと、ものすごく強いらしいたい」

さすが情報網、というべきか仮令がすかさず聞いた話を挟んでくる。
他のメンツで誰か知ってる人は居ないか、と見回すもどうやら皆知らないようだ。

「強いんだとしたら、良い戦力にもなりそうですよね。
まあ、居ない人のことはどうでもいいですが」
千秋を腕を組んで興味なさげに言いつつも、会話を続ける。
確かにそうだ、もしその副会長が居てくれればかなりの戦力になっただろうに、と考えてティーアに尋ねる。
「なあ、それって誰なんだ?」
「…貴方は知ってるでしょう」

自分で考えろと言わんばかりにティーアに睨まれて「そんなの知るか!」と言いかけたのを飲み込み、考える。
どこかで副会長と会ったことあるのだろうか。
今まで会った人間も確かに強かったが……少なくともこの中の者ではないのだろう。
頭を抱えると仮令がそっと教えてくれた。

「セパルって名前たい」
「セパル?」

どこかで聞いたような、と記憶を揺り起こそうとすると呆れかねて、まあ仕方がないか、と割り切ることにしたのか、ティーアが言った。

「あの研修の時、貴方の力の覚醒に協力した者が居たでしょう。
あの人ですよ」
「…あぁ!脳内に語りかけてきたよく分かんない奴!!」
「なんのことだ?」

状況が把握出来ないメンバーの心境を代表して春樹が口に出す。
ヒロはあの時、自分の身に起きたことを全員に説明した。

「そんなことが…」
「結城の能力を覚醒させるって、その人何者なんだ?」

全てを話してから、話題から地下室からそれてしまったことに気づいて、数々の会話を終わらせるように言う。

「話戻すけど…あからさまにおかしいよな。
いくら生徒会長でも、立ち入り禁止の地下室に入るなんて」
「確かにそうだな」
「というか、生徒会長だから、尚更駄目じゃない?」
「…もしかして」

ヒロに同意を寄せる春樹と翼をよそに、丁が珍しく何かを考え込むかのようにうなだれている。
どうしました、と聞くと、
「別に関係ないよ」と言われ、何も聞かせてもらえなかった。

普通の生徒が入るのは好奇心か何かで済ませられるかもしれない。
そして、それを注意するのが生徒指導グループの教師や…生徒会のはずだ。
生徒会の最高権力者である会長が、立ち入り禁止の場所に入るなんて。
そしてティーアも、そのことを知らなかった。

これは怪しいだろう。
六堂が何か企んでいるのか、もしかしたらティーアも一緒になって何か良からぬことを考えているのかもしれない。
ティーアがスパイになって、六堂をかばい、自分達を欺くつもりなのではと思った瞬間。

「まさかあんた、六堂先輩が何か企んでいるとか思ってんのか」

ぼそりと、しかしはっきりと耳に捉えた声の主はティーアだ。
突然核心をつかれたことと、ティーアがタメ口を使ってきたことに一瞬驚きつつも、すぐに冷静になって。

「そうだな」

と答えた。
それと同時にティーアがジャマダハルを構えてこちらに突っ込んできた。
反射神経で何とかかわし、ティーアと向き合う。
周りも皆呆然とした。
そんな中ティーアが怒った声で、しかし泣きそうな声で叫んだ。

「ふざけるんじゃねえよ!」

先輩のことを悪く言うな!という悲痛な叫びをあげて、涙をこぼした目でヒロを睨んだ後にバッと立ち去った。
ハッとしたイリスがすかさずティーアを追いかけに行く。
ヒロもつい足が動いたが、バトンを前に振るわれてその足が止まる。
バトンの持ち主のシェアスは、ふるふると首を横に振って微笑んだ。

「ティアって頑固だから、こういう時は放っといてあげた方が良いんだ、実は」

そのうち落ち着くからね、と人差し指を口元に当ててニコッと笑った。
普段悪戯好きなシェアスが、お姉さんに見えた瞬間だった。
ヒロはシェアスの言う通りに「分かった」と言って、進みかけた足を戻した。


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