『幽霊』
「夜の櫻木学園には幽霊が出るっていう噂があるんだって!」
研修の日から何日か経った頃、ヒロの席の周りに集まる春樹、翼、シェアス。話題はシェアスが出してきたものだ。
シェアスの言葉を聞いた瞬間、春樹が固まる。
「そ、そんなの出る訳ないだろ!」
「でも本当に出たら面白そうだよね!」
キラキラと目を輝かせるシェアスを見て春樹はため息を吐いた。お化けものが苦手なのだろうなあ、と悟ったヒロはある意味で春樹への助け舟を出す。
「どうせお化けなんていないだろ」
「あ、はは……そうだね。居たらビックリだよ」
呆れ気味に翼も頷く。それに便乗するように春樹が何度も頷いた。
シェアスが「むー」と頬を膨らませていると、仮令と綾部が教室に入ってきた。
「よ! 結城!!」
「お、仮令。どうした?」
「ナチュラルにスルーされた!!」
綾部なんて居なかったことにしてヒロは仮令に尋ねた。仮令はニコニコと笑って白紙の原稿用紙を取り出す。そして、ヒロの机に置いた。
「手伝ってくれん? これ」
「え、まさか」
シェアスが突然話題を出した理由を悟ったヒロが、引きつった顔で仮令を見る。仮令と綾部、シェアスは声を揃えて言った。
「『櫻木学園七不思議を暴け!』」
……次回の新聞のタイトルらしい。
「要するに、研修の時のメンバーで七不思議の秘密を探ろうってこと?」
「off course!」
「何だその発音は……」
仮令とシェアスが説明してくれたことを、翼が単純にまとめた。何とか七不思議という恐怖の概念から解放された春樹が口を開いた。
「無理じゃないか? 研修のメンバーは」
「え、何で!?」
反論したのは綾部だ。彼なりに、研修のメンバーに思い残しでもあったのだろうか。春樹はしばらく考えて、言った。
「分かってんのか? 俺達の班には厳しい生徒会長が居るんだぞ」
「あ」
春樹の言葉で、皆一人の少年を連想した。仮令がため息を吐いて、
「仕方がない。ティーアは参加させんっていう形で」
「うん、俺も参加しない」
「お前は強制だよ!! 結城と翼もな!!」
春樹と共にいつの間にか強制参加という形を取らされていた。お化けなんてくだらない、と思いながらヒロは「はいはい」と適当に返事をした。