異能学園デゼスポワール


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『状況の整理、異能力に関して・ダイアローグ』



「ちょっと、気になる事ば言ってもよか?」

 六堂が去ってからの微妙な雰囲気の中おずおずと口を開いたのは、仮令だった。取りあえず、今はこの雰囲気を変えられるなら何でもいい。ヒロは仮令に先を促す。

「何だ、気になる事って?」
「ああ、あの化け物ん事ばい」
「そういえば、何で最初は攻撃が通らなかったのかなあ」

 頭の中で前回の戦闘を思い出す。まず丁が化け物へと飛び掛かり、その後シェアスが魔法で封じようとした。翼が殴りかかるが、彼女の腕で大きなダメージが返ってきた。

「俺が思うに、あいつには異能とか魔法ば反射する能力があったんじゃなかと? 化け物に能力……ってのも変な話ばってん」
「反射? 無効化じゃなくてか?」

 春樹が思わず訊き返す。

「うん。琴浦の怪力は異能からきとるんだったったい? だったら、無効化されたら普通の女子並の力になる筈……」
「それが、ダメージが返ってきたから、反射と……。成程な、じゃああれは別に攻撃全部が効かないわけじゃあなかったんだな」
「多分な」

 一つ納得がいったところで、また別の疑問が浮かんでくるものである。シェアスがはいはーい、と手を挙げて言う。

「じゃあさじゃあさ、何でヒロの攻撃は通ったの?」
「それは……」

 まだ分からない事が多いのは仮令も同じこと。仮令は言葉に詰まってしまった。
 やおら丁が立ち上がり、ヒロの方へ近い付いて来て、何かを渡せと言うように、手を出す。ヒロが彼の意図を汲みあぐねて、目を瞬かせていると、丁が口を開いた。

「武器、出してみなよ」
「……は?」
「いいから」

 ヒロが先程したように武器を召喚しようとすると、疲れているからやめた方がいいよ、とシェアスが止めに入った。だがヒロとしても気になる事はあるので、彼女を説得して武器を召喚する。

「これでいいですか」

 適当に召喚して出てきた剣を丁へと渡すと、彼は短く返事のようなものをした後、黙りこくってしまった。

「あ、あのー、先輩……?」
「ホンモノだよ、こいつ」
「へえ、本物……って、えっ?」

 その場にいた全員が不思議そうに眉を寄せる。

「だから、ホンモノなの、こいつは。ボクの異能は武器……正確には武器と成り得る物と会話をして、その力を最大限まで引き出すの。こいつには意識があるし、正真正銘のホンモノだよ」
「つまり、ええと、それで斬りつけることは異能での攻撃にはならない、と?」
「そーいうコト。中々理解力あんじゃん」
「……ってことは、本物の武器なら俺やイリスの武器も使えたんですかね?」

 気になったのかティーアがそう聞く。丁は知っていたかのように言う。

「うん、それもホンモノだよ、ロミアも言ってる」

 誰の名前を言ってるのか丁はティーアのジャマダハルとイリスの弓を指差した。ロミア、というこの場にはいないものの名前を出されてはヒロや周りの皆は不思議そうな顔をする。

「ろ、ロミアって……?」
「こいつだよ、許可なく呼び出されて大層ご立腹」

 春樹はキョロキョロしながら恐る恐る聞いたが、丁はヒロが先程出した剣とまるで通じ合っている、いや、友達として接しているように剣を指先で撫でた。

「あ、そうそう、アンタのその刀は凄い静かだよね」
「え、こ、これか?」

慌てて春樹は刀を出す。よく見たらお札が鞘など、色んなところに沢山貼られていた。

「静かっていうか、寝てるね」
「え? 使ってる間もか?」
「多分そうじゃない? ……でも迂闊に起こさない方がいいと思うよ」

 丁は目を細めながら春樹の札まみれの刀を見つめる。そこからバァン、と何かが開いた、というか医務室のドアが強く開けられたのだ。
 皆が驚いて医務室のドアの方へと目を向ける。するとそこには。

「よぉ、結城とその他の皆! 元気か!」

 脚を閉じたり開いたり、股間についた校章を見せつけるようにして現れたそいつは綾部助平。

「結城〜!! 心配だったんだぞ俺は〜〜!!」

 カサカサとゴキブリのように開脚でヒロの方へと寄ってくる。それと同時にヒロの周りにいた皆が素早く後ずさる。

「大丈夫か? 生きてるか? 息してるか〜〜!」
「生きてる! 生きてるから! 気持ち悪いから寄るな!」

 股間につける校章を見せつけるようにヒロの周りをカサカサと開脚で動き回る綾部。それを皆はまるで何こいつ気持ち悪いと言わんばかりの目で見ている。千秋に至っては「汚らわしい」と言ってる始末だ。

「ていうかお前、服装を前に直されたのにもう股間に校章つけてるんだな」

 ヒロは呆れたようにため息をついた。

「はは、俺の開脚道は止まらないぜー!」

 綾部は元気そうに脚を広げる。その後ろには怖い顔をしたティーアがいた。
 綾部は別室へと運び込まれた。


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