Dream | ナノ

Dream

ColdStar

3cm

別に、私もソーマもそんなことを気にしてはいなかったが――私とソーマが並んでいると、どうにもバランスが悪いと最初に指摘してきたのはコウタだった。

「ほら、だってさ。リンドウさんとサクヤさんは頭ひとつ分とは言わないけど結構身長差があるから並んでてもいい感じだなーって思ったりするけど、藍音とソーマってそんな身長違わないじゃん。なんとなく、普通のカップルって女の子の方が小さいイメージがあるからなんか変な感じだよな」
「……そう言えばそうですね、ソーマは軽く猫背だし藍音さんはヒールのある靴を履くことも多いですし」

なんて、アリサが付け加えるようにそう呟く。
……正直に言えば、自分ではそんなことを考えたこともなかった。勿論、自分がアナグラの女性陣の中では身長が高い部類に入ることは自覚しているが――正直な所を言えば、だからどうしたとしか答えようがない。
だが、言われてしまえば気になるのが世の常と言うもので。

翌日のミッションは私とソーマが主軸になって出撃することが決まっている為作戦会議を兼ねて一緒に夕食を取ってから自室へと戻る為に並んで歩いていることで……ふと、その日の昼間にコウタとアリサに言われた事が頭を過ぎる。
少し首を動かせばすぐ隣にあるソーマの顔。
別に世間の評価がどうあれ気にすることはないと思いはするが、傍から見ていてバランスが悪いと言われるほどのものなのかと考えるとほんの少し引っかかりを覚えるのはまあ……仕方がないのかもしれない。

「……何を考えてる?」

私の視線に何かを感じ取ったのだろう、ソーマがぽつりと問いかけてくる。
――あまり口にしたくもないようなみっともない考えに捕らわれている時ほどそれを敏感に察知して問いかけてくるのはわざとなのか、それとも気がついていないのか。
そんなことをぼんやりと考えながら、私はぽつりと言葉を返す。

「背が高すぎるのも考え物だな、と」

大体私がこんなつまらない発言をした後のソーマは眉根を寄せて呆れたように私を見ていることが多い。
そしてこのときもまた、一体何を言い出すのかと言うような顔をして私を見ていた……そのたびに私は心の中だけで考える。だから言いたくなかったのに、と。

「藍音の背が高いのなんか今に始まった話じゃねえだろ」
「それはそうなんだがな。世間的に見ると、あまり身長差がないのもバランスがよくないらしいと言われてちょっと気になっていた」
「他所は他所、俺たちは俺たちだ。背が高いとか低いとかそんなもん関係なく俺が惚れたのは今のままの藍音なんだから気にする必要はねえ」

なんともソーマらしい発想に私は僅かに笑みを零す。確かに、私たちにとって身長なんて些細なことで今更気にするようなものでもないのかもしれない。
……私の笑みが向いたのは、ソーマに言われるまでそれを忘れていた自分に対して。全く、人の言葉を気にしてあれこれ考えるなんて私らしくもない――そんなことを考えていた私の耳に、続いてソーマの言葉が届けられる。

「それに……こんな時に」

そこで言葉を切ったソーマはぐいと私の腕を引き、バランスを崩した私はそのままソーマに抱きとめられ……あっさりと、唇を奪われる。
目を閉じる暇さえ与えられないまま重ねられた唇はすぐに離れ、ソーマの手が軽く私の頬に触れた。

「俺が屈むのも面倒だし藍音に背伸びさせるのも面倒。そう考えたらこれでいいだろ」
「どんな理由だ、全く」

浮かんだ笑みは先ほどまでとは全く違う理由……言葉にするのなら、「苦笑い」。
優しいんだか勝手なんだか、それなりに長い時間を一緒に過ごしているはずなのに時々分からなくなる。だが。

「確かに、人に言われたからと言って気にするようなことじゃなかったな」
「だろ」

すぐ近くにあるソーマの瞳を真っ直ぐに見つめ、私は確かめるように大きく頷いていた。
別に恥ずかしいことでもなんでもなく。このままの私をソーマが愛してくれているのだからそれでいいのだと――それを誇りに思っていいのだと自分に言い聞かせながら、再び歩き出したソーマの後に続いて私も歩き出していた。

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