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ColdStar


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お返事は「Res」にてさせていただきます。



「依存でもかまわない」

下記フォームにて主人公の名前を変換してからお読みください。




ソファに座ったまま、黙って隣にいるソーマの肩に凭れかかってみた。
ちらりと私に向けられたソーマの視線はいつも通り……何も知らなければきっと冷たいと感じるであろうそれはしかし、今の私にとっては当たり前になった優しさを孕んで私に向けられていた。

「……どうしたんだよ」
「疲れた」
「……当たり前だろ、この馬鹿」

ソーマが苦笑い交じりにそう言うのも無理はない。
危険任務がいくつも重なって、人手を割けないからと私独りでいくつかミッションを片付けて回った。複数の接触禁忌種をひとりで相手にしたり、凶悪な力を持ったアラガミと一対一で対峙したり。一日でそれだけ戦っていれば疲れるのも当たり前……それは、私にだって分かっている。
私が反論しないのはそれを理解しているからだと分かっているからなのだろう、ソーマはそれ以上何も言わないままどこか遠くに視線を送っていた。
だがやがて……胸の前で組まれていたソーマの腕が解かれ、その掌が私の髪に触れた。
……この年になって頭を撫でられるのがこんなに心地いいと気付かされるなんて思ってもみなかった――掌から感じるソーマの優しさを、ぬくもりを確かめるように一度目を閉じ、すぐに瞼を開けた。
すぐ近くに見えるソーマの褐色の肌。どこか遠くを見ているような視線――

「ソーマ」
「今度はどうした」
「なんでもない。呼んでみただけだ」
「……なんだよそれ」

呆れたような言葉と共に、ソーマの表情にはかすかな笑みが浮かぶ。
……その笑顔が見たかった、なんて言ったらソーマは今度はなんて言うんだろうか。
言葉にはしないまま、少しだけソーマとの距離を詰める。強くなった気がしたぬくもりが、私の中で蟠っていた「疲れ」をゆっくりと熔かして消し去っていく――

――このぬくもりがあれば、どんな逆境でも私は戦える。

私がそんなことを考えていることにソーマは気付いているのだろうか。
いや、気付いていなくたって構わない。ソーマがそれをどう感じていようともきっとソーマがここにいてくれることそのものが、私にとっての力――私の、戦う糧となっているのだから。

ソーマに依存しているだけだなんて言われても、私は否定するつもりはない――ソーマがそれで構わないと言ってくれるのなら。

 * * *

眠いのか、何なのか。
急に俺の肩に凭れかかって来た藍音に視線を送る――俺の予想に反して、藍音の表情は別に眠そうでもなんでもない。だが、こうやって無意識に甘えるような行動を取る時のこいつは大体……何か、無理をしている。
そのくらいのことは分かるようになっちまってる自分に心の中だけで自嘲の笑みを浮かべながら……今出せる言葉をたった一つ、口にしてみた。

「……どうしたんだよ」
「疲れた」
「……当たり前だろ、この馬鹿」

ハガンコンゴウをひとりで4体だの、スサノオを2体だの、ディアウス・ピターを2体だの。そんなややこしいミッションをひとりでいくつもこなしてて疲れねえわけがねえだろうが。
……それを言葉にしたってどうせ、藍音はそれが自分の仕事だからと意に介することもないんだろう。
だがこうやってこいつが俺に縋ろうとしている以上、それを突き放すことなんて俺に出来るわけがなく――自然と、俺の手は藍音の髪に触れていた。
その瞬間に、僅かに藍音の表情が綻んだのを見て俺もなんとなく嬉しくなりはしたけど――なんだかそれが妙に照れくさくて、藍音からただ視線を外すことしか出来なかった。

「ソーマ」

視線を外した俺を呼び戻すように俺の名を呼ぶ声。ちらりとそちらに視線を向けてやると、俺の肩にもたれたまま藍音も同じように視線だけを俺の方へと向けてきていた。

「今度はどうした」
「なんでもない。呼んでみただけだ」
「……なんだよそれ」

こいつがこんな風に、俺には子供みたいなことを言い出すことが時々あって。
でもそれがなんだか妙に嬉しいと思ってしまう俺は随分と変わっちまった、なんてことを考えながら寄り添うように俺との距離を詰めた藍音を黙って見つめていた。

……藍音がこうして、俺にしか見せない表情を浮かべるたびに俺はこいつからは離れられねえと感じる――
疎まれてきた俺を必要としてくれた、それだけで俺には十分な気がしていた。

それが依存だと言われても別に構いやしねえ。どうせ俺が藍音に依存してるのと同じくらい藍音だって俺を必要としてんだから――お互い様、ってやつだ。

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