Dream | ナノ

Dream

ColdStar

Photograph

「フランクさんにお願いがあるんです」
「どうしたアリサ、記念撮影でもして欲しいってか?」
「……多分違うと思うよ」

ジャーナリストだというこの男、フランクはいつもカメラを手にしている。
彼のカメラには、この戦いの最中でも撮影された写真が多数納まっているはず。その事に思い至ったアリサは戦いの合間に彼に声をかける……
ジャーナリストと、キョンシーと言う不死生物であるレイレイとが一緒に行動している理由は良く分からないが、仲間としては気のいい人物――レイレイは人物と呼んでいいか甚だ疑問ではあるが――だとアリサは思っていた。

「撮った写真を何枚かいただけませんか?」
「へー、奇遇だね。さっきソーマも同じ事頼みに来たよ」

にこりと笑ったレイレイの言葉にアリサは眉を寄せる。
そうだ、アリサが考え付きそうな事などソーマが全く同じように考え付かないわけがないのだ……先を越された、と僅かに唇を噛んだが、すぐに顔を上げて何事もなかったかのように笑顔を作ってみせた。

「それで、ソーマは何の写真を欲しがったんですか?」
「ああ……2010年代、お前さんたちの時代からすれば60年前か?その時代の写真。それと、さくら達の世界の写真もあれば、って言ってたな」

なるほど彼女はそんな風景の写真を見たら喜ぶ事だろう。というよりも、アリサだってそう考えたから態々フランクに頼みに来たのだが完全にソーマに先を越された形になってしまった、わけで。
一度腕を組んでどうしたものかと考えたアリサだったが、そこでひとつのひらめきが彼女の頭に浮かぶ。
そうだ、この案ならば……彼女だけでなく、サクヤのことも喜ばせる事が出来るかもしれない。

「じゃあ、私はソーマと、あとリンドウさんの写真をいただけたら嬉しいんですけど」
「んん?もしかしてアリサはどっちかにホの字とかそういうことか?」

からかうようなフランクの言葉に、アリサははぁ、と息を吐いて首を横に振る。
まあ、確かにこの頼み方ではそういう邪推をする人間がいても仕方がないのだろうけれど……軽く頭を抑えながら、アリサは冷静に言葉を繋いでいた。

「違いますよ。その写真を見せたいのは、リンドウさんの奥さんと、私たちの隊長です」
「ああ、リンドウは新婚さんだって言ってたもんね」
「それに、お前さんたちの隊長って……ソーマが写真くれって言いに来た時、お前さんたちから見た過去の時代の写真を上官が見たがるだろうからって言ってたんだがもしかして」
「そう、それが私たちの隊長で……ソーマの、恋人なんです」

アリサの言葉に納得したように、フランクとレイレイは同時に「ああ……」と呟いていた。

「なるほどね。アリサは上官のためにその恋人の写真を、ソーマは恋人のために恋人が見たがるような写真をってことか」
「そうなりますね」

こんな状況に陥ってまで、自分もソーマも藍音のために物事を考えて行動している、なんてことに気がついてなんだかそれがおかしくなった。
ただ、やはり一歩自分が及ばないのはやはりソーマと藍音の間にある絆は自分とのそれより強いからなのだろうか、なんて事を考えるとほんの少しだけ悔しいとも思ってしまう……
アリサがそんな事を考えているのはきっと知らないのだろうフランクは大きく頷きながらもアリサのほうを真っ直ぐに見つめていた。

「……ただ、ソーマやリンドウの写真はそんなに撮ってないぞ?アリサの写真ならそこそこあるんだがなあ」
「なんで私の写真はあるんですか……まあ、少ないなら少ないで構いません。ただ、離れている間……知らない世界でも、ソーマやリンドウさんが元気でやってたってことが分かるなら、それで」
「OK、一緒に準備しておく。しかしその隊長ってのは果報者だな、こんなに慕ってくれる部下がいて。まあ恋人がソーマじゃ苦労も多いだろうが」

どこかからかうような響きを持って呟かれたフランクの言葉に、どうですかねなんて短く返しながらアリサはその場を後にした。
さて、ソーマに先を越された事についてなんと文句を付けてやろうか。そんな事を心の中だけで考えながら。

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