Dream | ナノ

Dream

ColdStar

Burn&Cold

「ソーマ!気合入れて行けよ!」
「……騒がしいな、全く」

大声を張り上げた伐の言葉に、ソーマは大きくため息をつく。
色んな世界から色んな人間が集まってきているのだ、どんな人間がいても不思議はないが……少なくともアナグラには伐のようなタイプはいなかった、ように思う。

「まぁ、なんかお前らの世界の話聞いてると……人類滅亡の危機とか俺にはスケールでかすぎて想像つかねえけどやっぱ内に籠もっちまうのかな、とは思った……けどさ、どんな世界だって気合があれば何とかなるもんだぜ?」
「それは流石に楽観的すぎますよ」
「けど、お前らには仲間がいるんだろ?俺、仲間に助けられることがすげー多くてさ」

アリサの呟きに対してにぃ、と屈託のない笑みを浮かべる伐。声は相変わらず大きく、言葉を選ばずに言うのなら相当にうるさいのだがそれを突っ込んだところで改めるような性格ではないだろう。

「俺、さ……今通ってる学校に転校したの、行方不明になった母さんを探す為だったんだ。誰にも言わずに探すつもりだったんだけど、興味本位だかなんだか知らねえけどそれに首突っ込んできやがった奴らがいてさ。……最初は迷惑だと思ってたけど、気がついたらそいつらのこと、仲間として物凄く信頼してた」

伐の言葉に、ソーマがはっと目を見開く。
そんなソーマの表情の変化には気付いていないのだろう伐は相変わらず、大きな声で……それでもどこか落ち着いた、穏やかなトーンで話を続けていた。

「今じゃ俺にとってはかけがえのない友達、かけがえのない仲間だ。最初は無神経なことばっか言いやがってって腹立ててたりもしたけど……俺は、どんなことがあってもあいつらと一緒なら何も怖くねえって思ってる」
「確かに無神経に人の心に踏み込んでくる奴ほど一旦心の中に入り込んだらなかなか出ていきやがらねえし、気がついたら何より大事になってたりするんだ……俺にも覚えがある」

伐が語った「仲間」の姿が、ソーマの心の中で不意に藍音の姿に重なる。
ソーマの呟いた言葉に、伐はそちらに顔を向けて不意に嬉しそうに満面の笑みを見せた。

「いい仲間を持ったんだな、ソーマ」
「仲間……か。まあ、そういうことでいい」

モリガンになにやらからかわれて顔を真っ赤にし、春麗に助けを求めていた伐に……ソーマにとって「無神経に心の中に踏み込んでくる奴」が恋人だなんて事をいちいち説明していたら多分話があらぬ方向に逸れていきかねない。
一瞬走りかけた静寂を破ったのは、しみじみと呟かれたアリサの言葉。

「私たちと同じで……いい仲間を持ったんですね、伐さんも」
「ああ。そこに至るまでには色々あったんだけどな……敵の黒幕だと思ってた奴が俺の親父だって聞かされて、それでも一緒にいようとしてくれたあいつらにはほんと感謝してる」
「黒幕が……お父さん?」

問い返したアリサに伐は大きく頷き、ソーマは眉根を寄せる。
なんだろう、どこかでそんな身の上を聞いたことがあるような、ないような。

「ガキの頃に生き別れた親父と再会したと思ったら自分たちを取り巻いてる事件の黒幕だった、ってのがな……流石に俺も色々考えたけど、あいつらにはほんとに支えられた。まあ本当の黒幕は親父じゃなくて別にいたんだけどさ」
「……たとえ親だと思ってなくても敵が自分と血が繋がってるってだけで余計憎く思えちまうもんなんだよな……俺にも覚えがある」
「え?これにも覚えがあるのか?」

驚いたように目を見開いた伐から、ソーマは黙って視線を反らす。

「ええと、その……私たちの世界に生きる人の大多数を犠牲にして選ばれた一部を救済するって言う、そういう計画を立ててた人が……ソーマのお父さんで」
「……そりゃ、なんていうか……すげえ偶然だな」

ぽつり呟いた後、伐はそういえば、と思い当たったようにひとつ手を叩く。

「もしかして、ソーマが苗字を名乗りたがらないのってそれで……」
「……話は終わりだ、行くぞ」

伐に背を向け、神機を握りなおして歩き出したソーマの背中に向けて……再び、伐の言葉が耳に届く。

「ついでに言っとくと、俺の『一文字』って苗字も親父の苗字じゃないから。なんとなく、親父と和解しても親父の苗字名乗るのに違和感があってな」
「……随分変な共通点が多いんですね、ソーマと伐さん」
「うるせえ」

しみじみと呟かれたアリサの言葉に、ソーマは短くそれだけを返す。
全く、どう見たって正反対な性格をしているのにどうしてこうも、いらない共通点が多いというのだろうか。
……だが、相性はきっと悪いだろうと心の中で考えていた伐に対しての印象がほんの少し変わったような気がした……のは、きっとソーマの気のせいなどではないのだろう。

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