Dream | ナノ

Dream

ColdStar

eyewear

「俺さー、前から気になってたんだけど」

ミッションを終えてアナグラへと帰投する最中、コウタが私に向かって不思議そうな顔をしている。
一体なんだと言うのだろう、そんなことを考えながらコウタの方を見遣ると、コウタはじっと私の顔を覗き込んできた。

「藍音ってさ、眼鏡かけなきゃいけないほど目が悪いの?」
「……眼鏡を外したら多分、ソーマ以外誰も区別がつかない」
「あ、それでもソーマは分かるんだ……って、そうじゃなくて」

ぶんぶんと首を横に振るコウタはやっぱり不思議そうな顔をしたまま。

「眼鏡ってさ、邪魔じゃないか?戦ってるとき」
「ああ……ずれないように特注の眼鏡を用意してもらってからは邪魔だと思うことはなくなったけど入隊当時は凄く邪魔だった」

当時のことを思い出しながら、無意識に眼鏡の弦に触れる。
隊長に就任して間もない頃、ひとつの部隊を束ねるのだからこのままではいけないとリッカに頼んで用意してもらったこの眼鏡は今では私の顔の一部と言っても過言じゃない。でも。

「コウタ、覚えてないか?私が入隊当初射撃が凄く苦手だったのを」
「覚えてるよ、いっつも俺が後ろからフォローしてさ。苦手って言うか全く当たらなかったよな……カノンみたいに誤射するわけじゃないけど何やってるんだろうなって思ってた。けど隊長になったくらいから急に射撃がうまくなって、すげーなーってこっそり思ってたんだけど」
「今だから言うが……あれもそうだ、照準を合わせようとすると眼鏡がずれてうまくいかなかった」

まだ互いに新兵だった頃のそんな裏話を今になって聞かされたコウタの方は呆然としている。
なんとなく恰好悪いことのように思えて敢えては言わなかったが、当時のことを知っているコウタにくらいなら話してもいいだろう。

「でも、今はそんなこともないんだよな。それだけフィットしてる眼鏡だったら」
「お陰で寝るときと風呂に入るとき以外は外さなくて済んでいるな」
「じゃああれだなー、眼鏡を外したところなんて見たことある奴いないんだな、きっと」
「……ソーマは見てる」

それだけ言ったところで軍用車はアナグラの前に到着する――そんなたいした話でもないし、話をそこで打ち切りコウタを残して先に車を降りた。
それにしてもコウタは時々妙な事を気にするな……なんて、考えながら。

***

「なあ、アリサ……俺思ったことがあるんだけど」
「なんですか?また下らないこと考えてるんでしょうどうせ」
「あっさり言うなよ、確かにくだらないけど……藍音がさ、寝るときと風呂に入るとき以外は眼鏡を外さないって言ってたんだけど」
「そういえばそうですね、私も藍音さんが眼鏡を外したところ見たことないです」
「だろ?でも、ソーマは眼鏡を外したところを見たことがあるらしいんだ。それってつまり、ソーマと藍音ってつまり……一緒に寝るか、風呂入ってるかはしてる……ってこと……だよな」
「……どんびきです」
「何が!?俺何も間違ったこと言ってないよ!?」
「人様の事情に勝手に妄想膨らませてるところに引いてるんです、私は」

……なんて会話をコウタとアリサがしていたのを、数日経ってその話を近くで聞いていたジーナに報告されるまで私は知らなかったわけだけれど。

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