Dream | ナノ

Dream

ColdStar

今はまだ

新人二人だけで任されることになったミッションを無事に終え、私とコウタはアナグラへと帰投した。
その間もコウタは延々と、いかに自分が頑張ったか、そしていかに自分と私がコンビとしてうまくやれていたかを力説し続けていた。それに私は適当に相槌を打ちながら――適当にと言っても勿論、銃撃があまり得意でない私はコウタに助けられたと思った部分も多々ありそれに対しては素直に礼を述べはしたが。

「この調子なら、俺たちだけでもっとミッション受注しても大丈夫そうじゃね?」
「気持ちは分かるがあまり調子に乗るな……それが命取りになるかもしれないんだから」

そう告げたとほぼ同時にエレベーターの扉が開く。そのままエントランスに足を踏み入れると、そこには既に見慣れた顔ぶれの神機使いたちが顔を揃えていた。
それを確かめて、なんとなく安堵の息を吐いた。

「藍音は割と慎重なんだな」
「目の前でアラガミに喰われた奴を見てるからな。もうあんなのは見たくないし自分がああなるのもまっぴらごめんだ」
「ああ……エリック、だっけ。俺は会ったことないからどんな奴か知らないけど」

そんな話をしながらカウンターに連なる階段を下りる。階段を降りきったところで……まさに今話題にしていた、「目の前でアラガミに喰われた」のを共に目撃した男がいるのが目に留まった。

「……ソーマ、さん」

呼びかけたところで返事はない。自分だってそんなに愛想のいいほうだとは思ってはいないが、それに輪をかけてこの男には愛想がない。……それがなんだか悔しいと思っている自分に気がついた。
同じ部隊に所属することになるというのにこうもつれなくあしらわれては腹のひとつも立とうというもので。

「生憎なことに神機使いもやめてないしまだ生きてる。ソーマさんに関わったからってそれで死んだりするはずないって私が証明してやる」

どうせ返事はしないだろうと思いながらそれだけを告げ、予定通りカウンターに向かった。背後で聞こえた足音、やはり返事はなかったが……彼は私の言葉に何を考えたのだろうか。
いや、気にも留めていないかもしれない。そう考えるとなんだか悔しさも一入だった。

「……無愛想な奴だな」
「無愛想で悪かったな」
「いや、藍音の話じゃないって!」

慌てたように手をぶんぶんと振って弁解するコウタを見て小さく笑った。
誰も彼もがこんな風に人懐こいわけではないのは分かっている、だがせめてあの男にコウタの半分も愛想のよさがあれば……なんてことを考えかけて、その考えはすぐに頭から追い出した。

このときの私には、まだ……彼が笑っているところを想像することなんて、出来そうになかったから。

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