Dream | ナノ

Dream

ColdStar

First Impression

自分が身を投じた世界は戦いの続く場所で、アラガミによって命を奪われる者もいるのだと言うことは頭では分かっていた。
でも、目の前でアラガミによって命を奪われたひとの存在を見て――何も思うな、って方が無理がある。
まだ神機使いとしては未熟で、彼を助けることができなかった自分が悔しい。その気持ちだけが、私を支配していた。
それだと言うのに目の前を歩く先輩神機使いは何も言葉を発することなく。
彼は一体何を思うのだろう。受け入れられないのは私が未熟だからなんだろうか。

「あの……ソーマさん」
「何だ」
「……その」

言葉にならなかった。
私は元々、自分の考えていることを言葉にするのはあまり得意な方ではなかった。母は私を産んでからすぐに病に臥せって物心ついて間もない頃に帰らぬ人になったし、父も兄も無口な人だったから。
だから何を言えばいいのか分からなくて、振り返ることのない彼の背中を見つめていることしか出来なくて。

「こんなことを気に病んでいたら神機使いは勤まらない」
「……でも」
「目の前でひとが死ぬのを見るのが辛いって言うんなら神機使いなんてやめちまえ。やめないって言うんなら――俺には、近づくな。俺の近くにいたらいずれまた、人が死ぬ姿を目の当たりにすることになる」

言葉は続くことなく、再び歩き出した彼の背中をまた見つめているだけだった。
漠然と感じた違和感……最後に付け加えられた言葉は、彼が私を遠ざけようとして投げかけられたものだということが分からないほど私は馬鹿なつもりはない。
じゃあ、どうして彼は私を遠ざけようとするんだろう。
初対面だと言うのに随分と嫌われたのだと考えればとてもすんなり落ち着きはするけれど、なんだかそれだけじゃないような気がして……

「……ソーマさん」
「話は終わりだ、行くぞルーキー」

聞こえるものはもはや、彼の足音だけだった。
その足音についていくかのように、足を進める。ただ聞こえる彼の足音が私から遠ざからないように。

近づくなと言われた言葉が私の胸に残したものは……
彼がどうして私を遠ざけようとしているのかが知りたい、そんな感情だった。

でも、それよりも何よりも。

「ソーマさん」
「話は終わりだと言ったはずだ」
「名前で呼んで、『ルーキー』じゃなくて。私には櫻庭藍音って名前がある」
「……言いたいことはそれだけか」

どこか遠かったような声に、僅かに呆れの色が混ざった気がした。
ああ、彼も人間だったんだ。そんなことを、何故か思った――

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