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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.63 素直で一途で臆病な想い(2/3)
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アリカとエヴァの2人の出会い

アリカとエヴァの2人の出会い。
遡る月日は1年前の春。入学式が終わって4月が終わる頃のこと。
当時のアリカは3年生、エヴァは1年生。どちらも栗ノ木高校に通う男子生徒。
この頃からアリカは自身の音楽活動に熱を入れており、学業よりもそっちを大優先にしていた。
だから成績はボロボロ。定期テストなんて赤点の常習犯。
授業どころか学校すら登校せずサボってばっかだったから、生徒指導の教員には追いかけ回され、教頭先生には怒られる始末。卒業の頃には出席日数がかなりギリギリだったとか。
そんな学校生活だったが友達関係は良かった方?
男女共に友達と呼べる仲の良い奴がいたが、類は友を呼ぶという諺があるように。アリカの友人も男はチャラく、女はギャルく。模倣に出来る生徒は誰一人いなかった。
そしてある日の昼休み。

『キャハハハ!1学期からさっそく補習受けるなんて流石ありか!ばーか、ばーか。』

『うっせえ!俺をバカにする暇があんなら、担任が寄越してきた大量のプリント手伝えよ〜!』

『ヤでーす。』

『応援はしてあげるから、さっさと片せよ。』

友人と戯れながら学校の図書室で補習の課題をやっていたが、アリカも含めて全員大はしゃぎ。『図書室では静かに』というルールもガン無視。大きな声で喋ってばっかりで、机に座ってる者も多くいる。
普通に図書室を利用してる生徒から迷惑そうな視線を向けられたが、彼らが3年生というのもあって下級生は勿論、同級生も自身の受験や就職活動の大事な時期で、彼らと関わりたくないから誰も注意出来ずにいた。



アリカとエヴァの2人の出会い 2

そうしてアリカが席を立ち、ほぼ1人になった時のこと。

(コイツの辞書はどこにー・・・って、げ!?本棚の1番上ぇ!?)

課題で使う辞書を取りに向かったが、目的のモノは本棚の1番上。アリカの身長でギリギリ届かない段にあった。

『ありかー。その位置届く〜?』

『心配されなくても、これくらい余裕で届くわ!』

『脚立使えよ、脚立〜。オレらでもギリギリなんだからさ。』

自分の身長にコンプレックスを持つアリカは、それをちょっと突っつかれただけでもムッとお冠。
離れたところから言われた友人の助言がバカにされたように聞こえてムキになり、その本棚の下の段に片足を乗せて「よっと」跳んだ勢いで取ろうとする。

(どいつもコイツも俺をバカにしたがって・・・ッ!)

その時ー・・・。



アリカとエヴァの2人の出会い 3

そんなアリカを止めに1人の男子生徒が、後ろからそっと抱えにやってきた。

『っ!?』

その生徒は身長が高く、さわやかで大人っぽい印象な男の子。
いきなり真後ろから自分を抱えられたこともあってか、アリカは思わず驚いた声を上げる。
そしてその男子生徒は、

『危ないですから、ちゃんと脚立使って下さいね。それと図書室では、お静かにお願いします。」

と。アリカに向かって注意をし、脚立を近くに置いてから去って行った。

『ギャハハハハ!ありかのヤツ、注意されてやんの〜!ダッサ!』

『うるせー!お前らが騒がしかったから俺が注意受けたじゃねえか!・・・っつーか、今の誰?』

『北宮だよ。1年の北宮。今年の新入生の中で1番でっけぇから目立つよな〜。』

『ふーん・・・。』

そうその男子生徒がエヴァ。
この頃は図書委員をやっていて、この日はたまたま当番だった日。

(っていうか、俺にだけ注意して行くんじゃねえよ!あの野郎!)

そしてこれがアリカとエヴァの最初の出会いとなり、第一印象は(恐らく)どっちもあまり良くなかった・・・。



アリカとエヴァの2人の出会い 4

それから日は進み、5月のゴールデンウィークが明けた時のこと。
アリカは補習関連の課題で再び図書室へ。
1年生(エヴァ)から注意を受けたこともあってか、気にして今度は1人でやって来る。
けど今日はいつにも増して珍しく、図書室の受付けに人盛りがあった。

(ん???)

この集りを作っているのは同級生だと直ぐに分かったが、その中心にはエヴァの姿もあり、周りから何かを言われて困っている様子。

(3年が揃いも揃って1年囲って何やってんだか・・・。)

その同級生の中には話したことがある知り合いもいたから、アリカは気になって彼らの元に近付き、そいつから事情を伺う。

『お、ありか。いいとこに来たじゃん。ありかもちょっと協力してくれよ、北宮口説くの。』

『は?口説くって、お前・・・。そっちの趣味があったのか。』

『そっちのって、どっちの?・・・ーって違うわ!バカ!北宮を陸上部に勧誘したいから、ありかも説得に協力しろって言ってんの。』

『何言ってんだ!北宮は中学の時バスケ部だったんだから、栗ノ木でも当然バスケをやるべきだ!今からでも全然遅くないから、その高身長を高校でもバスケで活かしてくれ!』

『いやいや。それならバレーボールだっていいだろ!』

『サッカーだ!』

その知り合いも含めて周りにいた奴らをよく見ると、みんな運動部員の部長か副部長を務めている者ばかり。
まだどの部にも所属していないエヴァを、自分たちの部に勧誘しようと説得していたのだ。



アリカとエヴァの2人の出会い 5

『あの・・・。お言葉ですが図書室には利用してる他の生徒もいますので。お静かにお願いします。』

その一方でエヴァは、どの部の誘いにも頷くつもりはないようだ。

『だーかーらー。北宮がウチの部に入るっつって、入部届け書いてくれたら直ぐどっか行くって言ってんじゃん。』

『ほらほら。北宮のせいで図書室を利用してる生徒、みんな困ってんじゃん。』

『・・・・・・っ。』

断っても断っても運動部員の部長ズが諦めようとしないから、困りに困っているのが顔色の悪さから分かった。
アリカもこのまま集られたままでは騒がしくて自分の課題を片付けるのに邪魔だったから、彼らに口を出そうとする。

『おいおいおい。そいつを自分の部に誘いたいんじゃなかったのか?いくらなんでも3年が1年脅すのは可哀想っつーか、思いっきり逆効果だろ。』

その時、

『こらー!お前ら、そこで何しとるー!!』

『わー!ごめんなさーい!』

この騒ぎに気付いた教育指導の先生が駆け付けてきて、運動部員の部長ズを散らす。
結局、困っていたエヴァを救ったのは、アリカではなく、その先生だった。



アリカとエヴァの2人の出会い 6

そんな教育指導の先生の訪れに怯えたのは、運動部員の部長ズだけじゃない。
アリカも一緒。

『げ?!』

普段の行いが悪いせいで、見つかって捕まれば間違いなく説教行き。
けれど散って行く部長ズ連中に混ざっても、自分だけ逃げ足が遅れるのは確実。
だから、

『悪い!匿わせてくれ!』

アリカは咄嗟にエヴァがいる受付けカウンターを飛び越えて屈み、教育指導の先生に見つからないよう身を潜ませる。

『っかしいな。今、真中の姿もいたような気がしたがー・・・。キミ、見なかったか?』

『い、いえ。知らないです。』

そして案の定で自分も捜されたが、エヴァが上手く匿ってくれたおかげで、なんとかやり過ごせた。



アリカとエヴァの2人の出会い 7

それから教育指導の先生も去っていき、集ってた運動部員の部長ズもいなくなり、受付けに残っていた生徒はアリカとエヴァの2人だけ。
お互いに難が去ってホッとした息を吐く。

『匿ってくれてサンキュ。おかげで助かったわ。』

『いえ。今のが教育指導の先生なんですね、初めて知りました。』

しかしアリカは部長ズの脅し入りの勧誘に言い寄られてた時の彼の様子が気になり、身を隠すのを止めて、見ていた感想として苦言を呈する。

『ところでさっきの、さ。お前も、嫌なら嫌で。ちゃんと断らないからアイツらも調子に乗ったんじゃないのか。』

『・・・・・・・・・。』

困っていたのも。
嫌がっていたのも。
側から見てて分かったが、それを本人がちゃんと言わないとダメだと。

『委員会、入ってるから大丈夫だと思っていたんですが・・・。おとなしく諦めて、もうどこかの部に入った方が丸く収まるでしょうか。』

『おいおいおい。あれぐらいの押しで負けそうになんなよ。部活入る気ねえならそれでいいじゃん、必須じゃねえし。嫌なら嫌でちゃんと断ればいいんだから。』



アリカとエヴァの2人の出会い 8

2人の会話もそこで終わり、エヴァは図書委員としての当番の仕事に戻り、アリカは自分の課題をやりに図書室の机へ向かう。

(北宮って呼ばれてたっけ?アイツ・・・。確か前もここで会ったよな。)

その時、ふと友人や部長ズが言ってたエヴァの名を思い出して、チラッと彼を見る。

『・・・・・・・・・。』

するとエヴァは窓に顔を向けていて、ボーッと空を眺めていた。
図書委員会の当番の仕事と言っても貸出と返却のやりとりをするだけ。
でも利用する生徒は普段から少なく、ほぼ誰も来ないと分かっていても受付けにはいないといけないから、それで退屈を凌いでいるのだろう。

(暇そうにしてんな、アイツ。)

けどその時のエヴァが、妙に気になって強く印象に残った。
まだお互いに名を交わしてなければ、顔を少し知った程度だったけど。



高校時代のアリカはやんちゃっ子

そんなちょっと昔の話を志摩に語ってくれたアリカ。

「授業どころか学校もサボってばっかだったからさ、俺。教頭や生徒指導に見つかれば追われることが多くて。昼休みとか、よく図書室を避難所にしててさ。その時に限ってエヴァが当番の日だったりしてたから、よく受付けカウンターの下とかで匿ってもらってたんだ。」

「・・・高校生だった頃のアリカって、割とやんちゃだったんだな。」

エヴァは1年生の時に図書委員してたのは以前、燐之助から聞いたことがあったから想像がついた。
けどチェリーストーンの売上げの頂点に居座る男の高校時代が、かなりのやんちゃっ子と聞いて知ってビックリ。

「あれ?でも栗ノ木高校って、テストで赤点とったら学校からストップかけられるんじゃなかったっけ?」

「あー・・・、だからエーチとエヴァ以外にも。他にバイトしてる連中全員、厳し目に見られるようになった。俺が無視しまくってたせいで。」

「なるほど。栗ノ木の学校からそう言われるようになったのは、アリカのせいだと。」

栗ノ木高校にお勤めである当時の教頭先生や生徒指導の先生は、さぞ大変だっただろう。



語った色々は後日、またそのうちに

「色々あったからな。エヴァが1人暮らしだって知ったのは初めてアイツんちに行った時だったし。風邪引いて見舞いに行った時なんか全然家に入れてもらえなかったし。文化祭の時もー・・・ま、何やかんや。ほんと色々あったからな。」

そこから始まった2人の出会いと知り合ったきっかけ。
その当時を思い出しながら話すアリカは、明らかに表情を緩くさせている。
語るその色々が気になるところではあるが、そんな彼に志摩から一言。

「アリカってホント、エヴァのこと好きだよね。」

「なッ!?」

昼休憩中でいつの間にか自分の周囲には彼しかいなかったから、さきほど思ったことを、今度は直接口に出して言ってやった。

「その頃からエヴァのこと好きだったの?」

「そ、それは・・・ッ。前者は認めるけど、後者は違う。当時は好きでも何でもなかったし・・・。」

するとアリカは真っ赤に染まった顔で、前者は素直に認めて後者は大いに否定した。



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