≪ top ≪ main

CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
はじめから読むページから読むしおりから読む


Act.63 素直で一途で臆病な想い(1/3)
]  [目次へ]  [

いつもと違う朝

ちょっとずつ涼しい風の中に冷たさを感じるようになった秋空の朝。

「行ってきますー。」

いつもどおりの時間に家を出た志摩は、眠たそうな顔でアパートの駐車場に止めてる車へと向かう。
そしてピッと車のキーリモコンでロックを外して、乗り込もうとしたその時、

「ちょっと待って下さい、志摩さん!」

聞き覚えありまくる声が志摩を呼び止める。

「ん???」

おかげで寝惚けも覚め、ハッと呼ばれた方向を振り向くと、そこにはエヴァがいて、駆け足で志摩の元に追いついて来た。

「おはよう?エヴァ。え、どうしたの?こんな朝っぱらから。」

「おはようございます、志摩さん。・・・良かった、間に合って。」



エヴァから志摩へ

今日は普通に、何の変哲もない平日だ。
エヴァも栗ノ木高の学ラン(制服)姿でいるから、きっとこれから学校へと向かうのだろう。
けれどその前に、なぜ朝からここへ?
この疑問に何も見当が付かなくて、ちんぷんかんぷんな志摩。
でもエヴァはそれに構わず持っていた鞄から、ある物を取り出す。

「志摩さん、よければコレを。」

なんとそれは1つのお弁当箱。
ハイとニッコリした顔でエヴァから手渡され、思わぬ出来事が重なりに重なって志摩は驚きが隠せない。

「え!?これって、ひょっとしてお弁当!?もしかしてエヴァ、作ってきてくれたの!?」

「はい。今日の昼休憩の時にでも食べて下さい。なるべく志摩さんが嫌いなモノは入れないようにしましたから。」

「わぁ〜、ありがとう!今日も行く途中にコンビニ寄って、昼メシ買おうとしてたから凄く助かるよ。」

「駄目ですよ、志摩さん。確かにコンビニは便利ですけど、そればかりでは。体が資本なんですから気を付けて下さいね・・・って。以前、自分のこと見れてなかった俺が言うのもアレですが、志摩さんの体調が崩れたら俺らも困りますから。」

エヴァは何気ない会話の中から志摩の最近の食生活を知り、心配に思っていた模様。
だからお弁当を作ってくれたのは嬉しいが、年下の男の子に世話を焼かせてしまい、なんだか面目なくなる志摩だった。



待ち遠しい昼休憩

そんな朝だったが、エヴァのおかげで今日は一段と、昼休憩の時間になるのが凄く凄く待ち遠しかった。
誰かが作ってくれたお弁当を食べるのって久しぶりだし、何よりエヴァが作るご飯は超が付くほど美味いから。

(まだかな〜、昼休憩。どんなお弁当作ってくれたんだろう。)

わくわくソワソワしながら、午前中の業務を平常通りに。
いつも通りに徹夜からパシられ、いつも通りにムカついたが、いつもより上機嫌でいられたのは、きっと彼のおかげだろう。
そんなこんなでようやく昼休憩の時間を迎え、いつものように志摩は自分のデスクで昼食をとることに。

「志摩くん、今日はコンビニ弁当ではないんですね。」

「う。お、おはようございます、真昼さん。」

するとそこへ今日は昼から出勤の真昼が居合せ、いつもどおりだけど少し違う志摩の様子に気付く。
そして真昼の一言に(そんなに俺、コンビニ弁当多かったかな〜・・・)っと反省を覚え、反論することが出来ず愛想笑いを苦くさせる。
それはさておき、やっと昼ご飯が。やっとエヴァの弁当が食べられるのだ。
そろそろご対面させてもらおうと、わくわくソワソワしながらパカッと弁当箱の蓋を開けた。

「こ、これは・・・!?」



オトメン満載エヴァ弁当

エヴァが作ってくれたお弁当は、三色のそぼろご飯に野菜中心の彩り豊かなおかずが可愛らしく盛り付けされていた。
まさに彼らしいオトメン力が満載なエヴァのお弁当。
けどそれを見た第三者目線からは、

「え、・・・志摩くん。彼女さんいたんですか?」

「恋人からの愛妻弁当?いいね〜。」

「え!?いや、違・・・ッ!?」

真昼や他の同僚も、『彼女』が作った弁当と大いに勘違い。
いや、されてもおかしくないほどエヴァが作ってくれたお弁当は可愛いのだ。パッと見で、これは『男』が作ったモノだと思わなかったようだ。
なので志摩も、

「いやぁ〜、これはその〜。」

ついテレテレと照れてしまったが、彼も今日は昼からスケジュールが入ってたのだろう。

「それ。エヴァが作った弁当。」

「・・・・・・・・・。」

事務所にやってきたばかりのアリカに、パッと見でこの弁当の作者が誰なのかバレて、とても強い殺気が向けられる。

「だよな?志摩さん。」

(ひィッ!?殺気!?)



やっと合わせてくれた視線

夏の慰安旅行の件で、しばらく目を合わせてくれなかったアリカ。
それぶりにやっと合わせてくれたかと思えば、殺気を向けられる目に合うとは・・・。

「志摩さん。それ、エヴァが作った弁当だろ。」

「はい・・・。」

「彼女や恋人が作った弁当じゃないだろ。」

「はい・・・。」

「じゃあちゃんと否定しろよ。」

「・・・ごめんなさい。」

思わずしゅん・・・と落ち込む志摩だったが、エヴァのお弁当を一口パクッと食べて、アリカに一言。

「アリカ・・・。」

「ん?」

「エヴァが作ってくれた弁当、めっちゃ美味い♪」

「〜〜〜ッ!!!」

向けられたその殺気の正体は嫉妬。
アリカの態度を見てとっても分かりやすかったため、お返しとして悔しがらせてみたのだった。



殺気の正体→羨ま嫉妬

「え・・・。それエヴァが作ったお弁当・・・?」

アリカのおかげで志摩の弁当はエヴァが作ったモノだと知った真昼。
その件で何かを言いたそうにしていたが、

「まひる〜ん。ちょっとこっち来て〜。」

「あ、はい。」

他の同僚に呼ばれてしまったため、結局何も言えないまま、この場から去って行く。
そんな真昼の様子に気づいてなかった志摩。

「最近、食生活を疎かにしてたせいでエヴァに心配されちゃってて。それで今朝、学校向かう前に俺んちへわざわざ届けに来てくれてさ。」

「・・・よかったね。」

「エヴァってホント料理上手だよな。この玉子焼きとか俺好みの味付けだし、煮物も優しい味づけだけどちゃんとしみててすっごく美味しいし。俺が嫌いな食べ物入れないようにしたって言われたけど、栄養たっぷりでエヴァからの思いやりを凄く感じるし。」

「・・・よかったね。」

「アリカもちょっと食べてみる?俺のために作ってくれたエヴァのお弁当。」

「要らねえよ!!!」

キーッと悔しがってるアリカの羨ま嫉妬の反応が面白くて、殺気の仕返しにおちょくりまくっていた。



自分より好かれてるいるから

事務所にやってきたアリカだったが、まだ少し時間があるのか。
今日は公休でいない朝陽の椅子を勝手に借りて、志摩の隣に座りお喋りを続ける。

「いいよな〜、志摩さん。エヴァに好かれてて。」

「あ、えっと・・・。アリカも俺とそんなに変わらないと思うよ。少なくても嫌われてはないだろうし。」

「いや。確実に、俺より志摩さんの方が好かれてるから。」

でもアリカをおちょくって遊びすぎてしまったのか。
ぶすーっと不機嫌になったアリカは、少し拗ねていじけていた。

(ホント、アリカはエヴァが好きだよな〜。)

そんな彼を見て、ふと気になったアリカとエヴァの2人の出会い。

「あのさ。アリカも栗ノ木高の生徒だって前に教えてくれたけど、エヴァとはどうやって知り合ったの?エーチからの紹介?」

「いや、当時はエヴァとエーチが同じクラスだってことも知らなかったから。・・・俺も栗ノ木に通ってた頃は、あんま素行良くなかったし。」

拗ねさせてしまったから教えてくれないと思ったが、アリカは話題の種として答えてくれた。



]  [目次へ]  [
しおりを挟む



BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -