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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.39 雨が降った日のお話(5/5)
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西と東の視線に挟まれる志摩

そうして翌日。
昨日出来なかった話の続きを伝えるため、今日も事務所に招集がかかり、いつものソファー席で待機していた。

「あれ?エーチ、エヴァは?」

「今日、日直。だからちょっと遅いだけ。」

「きぃちゃんも遅いって不思議だね。」

しかし今この場にいるメンバーは、エーチとアズのみ。キィとエヴァの姿はまだないが、こっちに向かってる最中のようだ。
そして志摩もいて徹夜の姿もデスクにあるせいか。

(しまちゃん。あっちにてっちゃんいるよ。)

と、訴える西からの視線と。

(志摩ちゃん。アズの話はまだ待って。)

と、訴える東からの視線。

「・・・・・・。」

間に挟まれた天秤の志摩は、ちょっと居心地悪く呼吸をするのも苦しく感じた。

(せめてキィちゃんがいてくれれば、ちょっとは違ってくるんだろうな。)



エーチの勉強会 3rd

するとそのとき、

「志摩ちゃん!今ちょっと時間ある?ちょっとだけなら時間あるよね!?」

「うん?」

「学期末テスト対策で、また数学中心に教えて!今度のも赤点とるわけにはいかないからさ。」

この妙な雰囲気をぶち壊すかのように、バンッと前に出てきたエーチ。
持ってきていた教科書やら問題集のテキストやノート、勉強用具を机の上にばらばら広げ始めた。

「そういえばアリカのバースデーライブって、ちょうどテスト時期と被ってるもんな。」

「そうなの!今回だけテスト期間中でもやっていいって許しが出たけど、赤点が1個でもあれば次からなくなっちゃうから。」

「そ、それは大変だ。」

そしてキィとエヴァの2人が来るまで、急遽エーチの勉強会が開かれる。



年下に教わる年上の気持ち

こうして突然開かれたエーチの勉強会。
前回同様、志摩がエーチの先生となって丁寧にひとつひとつ教えていた。

「この式はこうやってああやってそうなってくるから、ここをこうして。」

「ふむふむふむ。」

けど今回はそこに初参加のアズ。
2人の話を聞きながら教科書に書かれた問題文を目で追って読んで、自分の手の平で計算していた。
そうしてエーチよりも早く答えを導き出せたのか。

「えいちゃんえいちゃん。この問題、ボクも分かったよ。あとこことここも同じ公式で解けられるよ。」

「え!?」

「これはね、こうやってああやってそうなってくるの。だからここをこうすると・・・。」

アズもアズ先生として、観戦から参戦に。
志摩と一緒になってエーチの勉強を教えることとなった。
しかし1つ差とは言え、エーチのが年上の男の子。

(なんだろう。アズには凄く申し訳ないんだけど、アズ(年下)に教わるのは自分が凄く情けなく感じる・・・。)

そのせいでプライドが素直に喜ばせてくれなくて、心境はとても複雑だった。



志摩の昔話

そんな勉強会の最中、エーチがふとあることに気づく。

「志摩ちゃんって勉強教えるの上手だよね。」

「そ、そうかな?」

「うんうん。しまちゃん、先生みたいだった。」

「そうかな?そう言われると凄く嬉しいよ。」

志摩は大学生時代、家庭教師のバイトをしていた。
それに教師を目指していた時期もあって、頼られどころの見せどころは、しっかり期待通りに応えられていたようだ。
それを改めてエーチとアズから好評に誉められて照れる志摩。

「家庭教師のバイトしてたときもあったけど。俺、ちょっと前まで先生目指してたんだ。学校の先生。」

「え。」

「ドラマで憧れてなりたかったんだけど、色々あって今は辞めちゃってー・・・。」

そのまま自分の過去の話を。
教師を目指していた頃をやんわりと話した。



聞いていたのは2人だけじゃなかった

けど、どうしたことか。
何かマズイことでも言ったのか。

「「・・・・・・。」」

気まずいような。
重苦しいような。
エーチもアズも返す言葉が出ないようで、ついさっきとは違った空気が漂い始める。

(あ、あれ?何この空気?)

志摩もこんな雰囲気になるとは思ってなくて戸惑っていると、

「何してんの?エヴァ。ドアの前で突っ立ってて。」

ドアの向こうからキィの声が聞こえた。
そしてそこにはエヴァもいる模様。そこで彼もドアの向こうで志摩の話を聞いていたようだ。

「・・・・・・。」



いつも通りのキィが唯一の幸い

ドアが開くと、やっぱりそこにはキィとエヴァの2人の姿があった。

「・・・・・・。」

エーチはこんな空気を和ます為に、エヴァではなくキィに話掛ける。

「ふ、2人ともやっときた。キィちゃんがオレらより遅いなんて珍しいよ。」

「乗馬の授業が終わるの遅かったからね。」

「乗馬!?え?え?え?それって学校外の話?」

「学校内の話だって。エッチの学校に乗馬授業ないの?」

「ないよ!キィちゃんの学校、相変わらず特殊だね。あとエッチって呼ばないで。」

キィだけがこの空気が読めてないのか、通常通り。
いつもと変わらないおかげで賑やかに騒がしくなっていき、気まずい雰囲気をどうにかすることは出来た。

「・・・・・・。」

けれどエヴァは顔を上げず暗い表情のまま。彼の様子まで変えることは出来なかった。



帰ってしまったエヴァ

そして、

「キィ。そこ退いて。」

「え、なに?トイレ?」

「・・・気分が優れないから、帰る。」

「え?なんで!?てっちゃんの話がこれからあるのに!?」

くるっと後ろに向いたエヴァがキィを退かして、この場から去るように帰ってしまう。

「待ってエヴァ!!」

一体何が?訳が分からないままだけど、そんな彼を黙って見送るわけにはいかない。
だから慌てて後を追いかけるエーチの後に、志摩も追ったが、

「・・・・・・ぁ。」

エヴァの姿はあんなに遠く、追い付くどころかこれ以上追いかけることも出来なかった。



追い付けなかった2人

そんな彼の背を見ていたエーチ。
肩を落とし、エヴァを追うのを断念。

「戻ろう、志摩ちゃん。」

とぼとぼとした足並みで志摩と一緒に事務所へと再び戻っていく。

「エヴァって、あんなに足速かったんだな。」

「うん。中学じゃバスケ部だったから。本気で走られたら・・・、無理だよ。」

けれど何が、どうして、こうなった?
それが分からなかった志摩は、訳を求めたが、

「オレがエヴァを巻き込んじゃったから・・・。」

「巻き込んだって、何を?」

「・・・・・・・・・。」

エーチはそれ以上、何も語らず。
しわくちゃになりそうな顔を必死に堪えているようだった。



3人だけの違和感

「ごめん。やっぱりエヴァに追い付けなかった。」

「えいちゃん・・・。」

そうしてエーチと戻ると、アズもキィもエヴァがいなくなったこの状況に気を重たくさせていた。

「それじゃあ来月のライブに関する話するから。エーチもこっち来て座って。」

なのにこの男だけが。徹夜だけが涼しい顔していて平常通り。

「え!?」

「エヴァいないけどいいの?」

「エヴァにはオレから伝えておくから。だから今はオレらだけで・・・、大丈夫。」

徹夜は来月のアリカバースデーライブ、クロスカルテットのデビューに関しての話を、エーチ、アズ、キィの3人に聞かす。
ただ1人。たった1人いないだけで、凄い違和感があるというのに・・・。



『CRO×QUAR』第39話を
読んでいただきありがとうございました!

気が付けばCRO×QUARも次回で40話
のんびり書いていたせいで実感はなく・・・
物語も全然進んでないのでビックリします



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