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11(R18)

*R18




 浴槽の中のナマエは水底に沈んでいて、少し憂鬱そうだった。それは、嫌な記憶を掘り返されたためか、新たな友達が帰ってしまったためか、あるいは、その両方か。それに責任を感じたコナーは、浴槽へ身を乗り出し水中のナマエへ声を掛ける。
「ナマエ。ノースと……友達と何を話してたんだい?」
 ナマエがゆっくりと浮上してきて、困ったように口角を持ち上げて見せた。
「なにか僕に伝えたいことがあるんだろう」
 コナーは先ほどのナマエとノースの言葉を使わぬ楽しげなやり取りを思い出し、胸が苦しくなるのを感じた。彼女があんなにも懸命に伝えようとしていることの一片も、言葉に換えてもらえなければ僕は受け取ることができない、と。彼は俯いた。
「僕がアンドロイドだったら、君が何を考えているのかも分かったのに」
 ぼそりと呟かれたその言葉に、ナマエは身体を起こしてコナーの顔を覗き込んだ。そしてそれが悲しげに曇っているのを知った。

 ナマエはコナーの手を取って、その甲に大きな水滴をふたつ落とした。そしてそれの下を器用に繋ぎ合わせる。コナーにはそれが歪ながらもハートマークのように見えた。そしてナマエの恥ずかしげな様子を見るに、彼女もそのつもりでやったらしい。ナマエは順に指をさした。私、ハート、あなた、と。「I love you」と。
 コナーがそんな奥ゆかしいやり方で愛を告げられたのは初めてだった。彼にとって愛は望んでいない時に唐突に押しつけられるものか、目の前に垂らされた餌だった。どんなに足掻いても手の届かない……。
 だが今それが目の前にあった。目の前で、彼が触れるのを待っていた。ナマエは少し不安そうな顔をしていた。これで伝わったか不安だ、とでも言うかのように。彼の手の甲に乗せられた水滴へ、ナマエがその愛の全てを賭けたのだと思うと、コナーは愛おしさで気が狂いそうになった。それはまるで熱い鉄の杭を胸に打ち込まれたかのようだった。彼は手の甲のその深い愛に口付けると、そのままナマエの唇を求めた。コナーの唇は燃えるように熱く、意外なことにナマエの唇も熱かった。二人の間に挟まれた水分はすぐにぬるくなっていった。
 コナーはあまりにも激しくナマエを求めすぎて、水へ半身を浸してしまった。たちまち水を吸ったシャツが彼の身体に纏わり付く。だが彼はそれを脱ぐ余裕すらもなく、ナマエが身体へ腕を回してきたのもあって、もつれ合うかのようにして、服を着たまま浴槽の中へ飛び込んだ。
 腕を解いたナマエがおずおずと、コナーの身体へ触れた。まるで、どこまでなら触れても拒絶されないかを推し量るかのようなそのいじらしい手付きに、コナーは身体の中で炎が燃え上がるような激しい欲を感じた。それは今まで彼が感じたことのない熱さをもって、彼女からの愛を求めさせた。コナーは繰り返しナマエに口付けながらその身体をまさぐり、その胸を覆い隠す邪魔な水着を外した。そしてナマエが拙い指先で彼のシャツのボタンを外している間中、手のひらでその胸の柔らかさを味わった。
 ナマエの温かな指先が、コナーの肌を撫でる。それはくすぐったくもあり、快感でもあった。ナマエの方から相手を求めるのは初めてのことなのか、彼女の動きはぎこちなかったが、それすらもコナーには興奮の材料になり得た。コナーはナマエの胸から腹を優しく撫で、その下の尾びれへと手を伸ばした。鱗で覆われたそれの手触りは人間では味わうことのできないもので、これを愛撫とよんでいいのか分からなかったが、コナーはナマエが喜びそうなところを模索した。そして丁度、人間でいう脚の間辺りに、短いスリットが入っているのを見つけた。それの発見に、コナーは電撃に撃たれたような感覚に襲われた。
 彼がゆっくりと深いそこへ指を押し込むと、ナマエはびく、と身体を震わせた。それで少しばかり理性を取り戻したコナーは、ナマエに確認を取る。このまま最後までしてもいいかと。ナマエは潤んだ瞳で肯定を返し、コナーの硬くなったものへ手を伸ばした。ナマエの手がコナーのズボンからベルトを抜き取り、ボタンを外し、チャックを下ろす。その一連の動作にコナーは言いようのない背徳感を覚え、それがますます彼の興奮を煽り、高ぶらせた。
 二人はお互いの快感のことだけを想ってその行為に没頭した。コナーがナマエの中で指を動かせば、奥から潤滑液が溢れてきた。それは熱く彼の指に絡みついて、ナマエが中に彼を受け入れたいと思っていることを伝えてくる。コナーのものも、腹に付きそうなぐらい上を向いており、ナマエがそれを握って優しく擦ると、びくびくと震えた。
 コナーは自分のものへ与えられる快感に時折堪えきれなかった喘ぎをもらしながら、再びナマエに啄むようなキスをした。
「ナマエ、ナマエ……」
 彼女が腕の中にいることがたまらなく幸福だった。もっと深く彼女と繋がりたかった。もっと彼女のことを知りたかった。コナーはナマエの下腹部にものを押し当てると、耐えきれずに何度か腰を動かした。その動きで彼の欲求を知ったナマエは、自らそれを中へ招き入れた。

 ナマエのなかは、男性に強い快感を与えられるよう作られていた。それは決して彼女がそう望んだ訳ではなかったが、コナーに抱かれる今だけは、それでよかったと彼女はつい思ってしまうのだった。
 腕の中にナマエを納めたコナーが、その頭上で長く熱い吐息をこぼす。それが何を表わしているのかナマエはよく知っていた。彼は達しそうなのを堪えているのだ。自分がちゃんと彼を気持ちよくできているのだということにナマエは喜びを覚えた。そしてコナーがゆっくりと腰を動かし始め、ナマエは今まで得たことのなかった感覚に身を震わせた。それはコナーがナマエの身体へ触れる度、彼女の背中をぞくぞくと這い上がってきて、回路の一部を騒がせていたものだった。彼が彼女のなかを解していた時に身体の奥が求め始めたものだった。ナマエは戸惑いつつも、その甘くしびれるような感覚を深く味わった。

 コナーはこみ上げる吐精感を押し殺しながら、ナマエの尾びれを両太腿で挟み込み、水の中でがむしゃらに腰を振った。この時間を永遠に味わっていたかった。縋るように抱きついてくるナマエの奥を突き上げると、彼女が声を上げずに喘いでいるのが喉の震えで分かった。その白く無防備な喉に唇を押し当てて短い振動を味わいながら、声が聞けたらいいのに、とコナーは思った。彼女に声があればきっと可愛くて甘い声で彼の脳を溶かしてしまっただろう。浴室に響いているのはコナーの荒い息づかいと激しい水音だけだった。
 熱く柔らかなナマエのなかを、固い自分のものでかき乱しながら、コナーは愛してるという言葉が唇から溢れるのを止められなかった。ナマエは返事の代わりにコナーを抱きしめる腕に力を込め、目前の胸板に何度もキスをした。
 そんな、自分にできる方法で精一杯愛を伝えてくるナマエへの愛おしさに、コナーは一瞬目の前が真っ白になるような感覚に襲われ、食いしばった歯の間から声を漏らしながら、彼女の中に射精した。

 こんなに充実した気持ちで行為を終えたのは二人とも初めてだった。抱きしめ合ったまま水中に漂いながら、二人は自分が本当に必要としていた存在と出会えたことを確信していた。ナマエが腕を伸ばして蛇口を捻り、温かな湯が祝福するかのように、長く激しい行為で疲れた二人の身体を包み込んだ。
「愛してる、ナマエ、君を心から愛してる」
 コナーの告白に、ナマエは顔を上げてその唇へ優しく温かな口付けを贈った。彼女の柔らかな唇が触れる度に、コナーは彼女が耳元で「私も愛してる」と囁いているように感じられた。彼はそれを心で聞き取ることができた。なにもかもが通じ合っていた。二人は幸せだった。


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