Main|DBH | ナノ

MAIN


短編|人間的かつ暴力的行為 ※微エロ?

※R16ぐらい。最後まではしていないので。


 喉の下、鎖骨の間の窪んでいる柔らかいところ。そこがいつものスタート地点。コナーからそこへ口付けを受けると、ナマエは“そういう気分”になる。そしてコナーもそれを知っている。ナマエをそんな風にしたのは彼だから。
 コナーはそこへのキスを熱心に繰り返して、ナマエへ自分が“そういう気分”であることを伝える。ナマエはそれを承諾して、手探りでコナーのネクタイを解く。床へネクタイが落ちると、コナーは顔を上げて、ナマエの唇へ自身の唇を重ねる。二人は啄むようなキスを交わしながら、お互いのシャツを脱がせる。そしてナマエがコナーの滑らかな脇腹に手を這わせると、コナーはナマエのブラジャーの下へ手を差し込む。そしてその双球を軽く弄んでからそのまま背へ手を回し、器用にフックを外す。ナマエが肩を落とせば、それらは床へ落ちていく。寝室まで続く服の道。
 ナマエはベッドへ押しつけられて少し苦しげに息を吐くが、行為に熱中しているコナーは気が付かないし、ナマエ自身も熱気に飲まれていてそれを気にしない。コナーは慌ただしくナマエのズボンを脱がせるが、まだ下着には手をかけない。それはもっと楽しんでからだ。コナーはナマエに背中を撫でられながら、彼女の耳たぶを甘噛みして、そのまま首筋に舌を這わせる。一方ナマエはコナーのベルトを外しにかかり……しかし突然首に走った痛みに声を上げた。それにコナーも驚いて身体を起こす。
 ナマエは首を撫で、廊下から差し込む明かりでその手を確認した。うっすらとだが、血が付いている。そしてコナーは寝室の電気を付け、自分のしでかしたことに激しいショックを受けた。

「うわ……」
 ベッドへ腰掛けたナマエは手鏡で自身の首筋に残るくっきりとした歯形を眺めた。その横ではコナーがしょんぼりと背を丸めて床へ視線を落としている。
「すみません、ナマエ……」
「別にいいよ」
「よくないです。僕がつい、我を忘れてしまったせいで……」
 そう言いながら、コナーがますます辛そうな顔になっていくのに対し、ナマエは少し胸を弾ませていた。彼が我を忘れてまで自分を求めてくれているのだということに。
「ほんとに、気にしないでって」
 ナマエはコナーの背を優しく撫でて慰めるが、コナーの表情は依然として暗いままで、彼はしばらく黙った後、重々しく口を開いた。
「実は、あなたに言っていないことがあるんです」
「……聞かせて」
 何やら重大な告白が始まるようだとその口調と雰囲気で察したナマエは、コナーの腕をとって励ますかのように抱き締めた。そんな彼女の優しさにコナーは一つ息を吐き、話を始めた。
「あなたを初めてベッドへ押し倒した時、警告文が現れたんです。『人間に危害を加えようとしている』と。僕はそれを無視しました」
 ナマエは頷き、コナーは話を続ける。
「そしてあなたを抱いて……その、直接的な表現ですが、突き上げている時に……『人間へ暴力行為を働いている』という警告文が出たんです。僕はそれにどうにも我慢できなくて、それを表示してくるプログラムごと削除してしまいました」
 ナマエにはコナーの気持ちが分かるような気がした。自分にとっての愛の行為を行っている時に、それは暴力だと水を差されれば、誰だって嫌になる。もちろん、それが本当に一方的な暴力だった場合は問題だが。
 そして今回、ナマエの肌に傷を付けてしまったせいでコナーはそのプログラムの不在に恐怖を覚えたようだった。自身の暴力を止めてくれる存在の不在を。だから、と彼は言葉を続ける。
「本当にあなたへ暴力を振るっていても、僕はそれが判別できない。だってよく考えてみて下さい。僕はいつもあなたの柔らかい内臓の一部をプラスチックでできた物で滅茶苦茶にしているんですよ?例え与えているのが痛みでなくとも、一歩間違えればこれは立派な暴力です。しかも主導権は僕の方にあって、僕は自分の快感のためにあなたを好きにできる」
「私はあなたに好きにされたいけど」
「ナマエ……」
 コナーは嬉しそうな雰囲気を一瞬滲ませたものの、すぐに真面目な表情に戻ってしまった。そのことに、どうやら愛やらなんやらで有耶無耶にできる話題ではなさそうだと、ナマエはアプローチする方向を変えることにした。ナマエはコナーと視線を合わせ、自身も誠実な顔付きを作る。
「じゃあ、あなたは人間に致死的な暴力を振るえると?」
 コナーはまた表情を曇らせ、頷く。
「ええ」
「でもやらないでしょう」
「ええ。もちろん」
 今度は力強い頷きだった。
「慈悲があるから」
「あるいは自制心が」
「じゃあ問題ないんじゃないの?」
 ナマエの問いかけに、コナーは悲しげに首を振った。
「問題あります。あなたとの行為の最中は自制心が効かなくなる瞬間があるんです。そんな時、暴力と行為の間が分からなくなる。こんなに奥を何度も突いたらあなたには負担にしかならないのではと思いながらも身体を制御できない時や、あなたが達した後だというのに求め続けてしまう時もあります」
「でも、私がやめてって言ったらやめてくれるでしょ?」
「本当に言ってくれますか?あなたは僕を愛しているから、ぎりぎりまで我慢してしまうのではと思ってしまうんです。気が付いたら、腕の中であなたが冷たくなっていた……なんて嫌です。そうなる前に、僕は自分で気付きたい」
 服上死か、とナマエは思わず笑ってしまいそうになったが、こんな状況で笑うわけにもいかないので無理矢理それを隠す。
 しかし、彼はなんと素晴らしい恋人だろう。
「あなたの悩みを私の言葉に翻訳したんだけど」
 ナマエのその若干不可解で突然な言葉に、コナーは未だ悲しげに眉尻を下げたまま、首を傾げた。
「つまりね、あなたはセックスが自分本位なものになってないか、独りよがりなものじゃないか、それを心配してるの」
「僕は……」
 反射的に言葉を返すべく口を開いたコナーだったが、具体的な反論内容が思いつかず、再び口を閉じた。そんな彼の首に腕を回して膝に横乗りになり、ナマエは微笑む。
「私ってすごく素敵な恋人を持ったなあ。普通ここまで悩んで考えてくれる人なんていないよ」
 そしてコナーの頬と唇に軽く口付け、その胸に少し体重をかけて、後ろへ寝転ぶように促す。コナーは大人しくそれに従い、腕の中にナマエを抱えたままベッドへ仰向けに倒れた。
「話を逸らしていますか?」
 裸の胸の上へ腹ばいになって見下ろしてくるナマエに、コナーはそう尋ねる。ナマエは笑みを深めた。
「いいえ。あなたは悩みを話して、私はそれを自分なりに解釈した」
「では答えは?」
「あなたの悩みは誰もが抱えるものだってこと。あなたは元々それを制御するプログラムがあったからそんなに深く考え込んじゃうんだろうけど、私から言わせてもらえれば、人間はそういうプログラムを持ってないし、だからこそ、それについて悩んでくれる人も少ない……だから、今日あなたが話してくれて嬉しかった。あなたのこと、もっと好きになった」
「僕があなたを傷つける、という問題についてはどうです」
 コナーはナマエの首の噛み痕を優しくなぞり、ナマエはその快感と痛みの混ざった新たな感覚に少し身を震わせた。それが分かったコナーも、つい、再びナマエを求め始めたくなってしまう気持ちをどうにか抑え込まなければならなかった。
「私があなたの背中に付けるひっかき傷と同じようなものじゃない?もっとも、私は残せないけど」
 後半の言葉には少し拗ねたような響きがあった。コナーの肌は些細な傷ならば数時間で塞いでしまう。それを彼女は言っているのだ。
「しばらく残るかもね、これ」
「すみません」
 またしょんぼりとしてしまったコナーに、ナマエは笑いかける。
「私はどちらかというと、喜んでほしいんだけど」
「どうしてですか」
「どうしてだと思う」
 からかうように言えば、答えが分かったらしいコナーは困ったような微笑を浮かべてナマエを抱き寄せ、その噛み痕の近くにいくつかのキスマークを残した。
「あなたは僕のものです」
 コナーはそう呟き、しかしすぐに先程の真面目さを取り戻してしまう。
「僕がもっとあなたを傷付けたらどうするんですか?」
「あなたを寝室から放り出して、裁判所に接触禁止命令を出してもらう。私がいくらあなたを愛してるって言ったってそれぐらいの理性はあるんだからね」
 そう大真面目に言うナマエへ今度はコナーも笑みを返し、二人はしばらく口付けを交わした。
「私も、嫌な時は嫌って言うようにする。でもね」
「でも?」
「気を遣って手加減するのは無し。私はコナーに滅茶苦茶にされたい。コナーが我を忘れて求めてくれることに愛を感じるから」
「……あなたにそういうことを言われると」
 コナーはナマエを胸に抱えたまま寝返りをうち、彼女を身体の下、腕の中に閉じ込めてしまった。
「本当に滅茶苦茶にしたくなります」
 して、とナマエが声に出す前に、コナーは自分の付けた痕を舐め上げ、ナマエの声は言葉ではなく熱い吐息となって唇を通り抜けた。
 そして再びコナーはナマエの首の下、一番無防備なところにキスをして、同意の上での暴力的行為に耽ることにした。


[ 46/123 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -