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拍手お礼再掲|コナーとコーヒーの話

*拍手のお礼だったものです。短いです。既に読まれている方はごめんなさい。




 コナーは相棒のためにコーヒーを淹れた。彼女の好みを思い出しながら、砂糖とクリームを入れる。今日、ハンクは非番で、彼女はベテランのアドバイスを受けられないまま、難しい事件と格闘していた。
 出勤してきてからずっと険しい顔をして自分の端末へ視線を注いでいる彼女だが、これを渡せばいつもの笑みを見せてくれるだろう。そんな光景を思い描いて、コナーは自身の頬が緩むのを感じた。湯気を上げる紙コップを片手に、足取りも軽く、コナーは彼女のデスクへ戻ろうとした。
 しかし、ある人物にその行く手を阻まれ、上がっていたコナーの口角は、溶けるように水平へと戻っていった。
「おい、そのコーヒー寄こせよ」
 まるで喝上げしてくる不良のように、にやにやと嫌な笑みを浮かべながらギャビンはそう言う。
 以前のコナーならば、何も言わずにその命令に従っていただろう。だが、今の彼は違う。彼には自由意思があり、拒否権があった。そして何よりこのコーヒーは彼女のためだけに淹れたものだった。
「お断りします。ご自分で淹れられては?」
 そうそっけなく返して、コナーは仁王立ちするギャビンの脇をすり抜けようとするも、ギャビンは巧みに体を動かしてそれを遮った。コナーは苛々した。
「僕はあなたの小間使いではないんですよ」
「でも、あいつの小間使いにはなるんだろ?あいつには顎で使われてもいいってか?」
 ギャビンの言葉にも一理あった。彼女のためにわざわざ、自分の飲めないコーヒーを淹れたのは確かだ。だが、その動機はギャビンの言う物とは少し違うように思われた。
「これは」
 コナーは口ごもり、自分の行動と、今の感情に合う言葉を探した。一秒もかからずにぴったりな単語が見つかった。
「これは僕の趣味です!」
 威嚇するかのような大声に、ギャビンはびくりとした。
「しゅみ……?」
 小声で確かめるように呟き、固まってしまったギャビンを今度こそ無視して、コナーはその横をすたすたと歩いて行った。

 隣に立ったコナーに気が付き、彼女は端末から顔を上げた。コナーが微笑と共にコーヒーを差し出せば、その眉間へ寄っていたしわが和らいだ。
「ありがと、コナー」
 朝からずっと彼女の顔に浮かんでいた疲れの表情は消え、かわりに柔らかな微笑みが現れた。それはまるで花の蕾がほころぶかのようで、コナーはそれを引き出したのが自分だということに喜びを覚えた。
「ところで、なにが趣味なの?」
 先ほどの大声は、ここまで届いてしまったらしい。コーヒーを口に運びながら、彼女はそう尋ねてきた。
「あなたのそういう顔を見ることですよ」
 そう答えれば、彼女はきょとんとし、少し頬を赤らめ、また微笑んだ。コナーは満足した。


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