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拍手お礼再掲|ぼろぼろ(じゃない)コナー

*拍手のお礼だったものです。短いです。既に読まれている方はごめんなさい。




 半身を破損したコナーは、自分の心配よりもむしろ、隣ですすり泣く相棒の心配をしていた。
 彼女と組み始めてから、もう何年経つだろう。相棒以上に進展しないこの関係を壊すには、時に強行手段も必要だとコナーは思う。
 二人は車を持っていなかったし、コナーはアンドロイドで、人間のように緊急車両は使えない。だから二人はサイバーライフの修理工場へ向かうにしても、法定速度を遵守する無人タクシーの鈍い進みに身を任せるしかなかった。
 確かに上半身の左半分ほどは左腕と共に失われてしまったが、組織閉鎖をしたから、シリウムの流出は止まっている。だからもう機能停止の心配はないのだと説明したのに、彼女は泣くのを止めない。
 コナーは自分の御せる身体機能の一覧を見た。ほとんどが赤いエラーを返している中で、表面温度の項目は正常のブルーに輝いている。コナーは残されたリソースの全てを顔の表情と片腕、そして表皮の温度管理に割り当てた。
 片方だけでも腕が残っていてよかったと思いながら、コナーは人肌程度に温めた手で相棒の手を握る。彼女がびくりと肩を震わせる。
「大丈夫ですから、泣くのを止めて下さい」
「でも、私のせいで、コナーが」
「あなたを守れてよかったです」
 言葉を返せずに首を横に振る彼女の頬を涙が伝う。綺麗だ、とコナーは思う。
「僕は痛みを感じませんし、こんな傷でも、一日で直せます。でもあなただったら、そうはいかない」
「そうだけど、でも……」
 でも、と繰り返す彼女から、反論の余地を奪ってしまったことに対して、コナーは申し訳なく思う。そしてそんな彼女を片腕でそっと抱き寄せる。
「僕はお礼の言葉が欲しいです」
 彼女は弱々しく頷く。
「ありがとう、コナー。助けてくれて」
 コナーは微笑みを返し、思う。微かに震える彼女は愛おしい。自分の為に流される涙は美しい、と。

 別にコナーは半身を失う必要はなかった。腕を一本犠牲にするだけで、十分相棒を守れると、彼の予測機能は告げていた。だが彼はそれを無視して、銃弾に身を晒した。
 機能を停止してしまわない程度の損傷。しかし、助けられた彼女の記憶に残る程度には痛々しいもの。
 望み通りの結果が得られた。
 コナーは片腕の中へ納めた女を見た。愛しい女を見た。
「ほら、もう泣かないで下さい」
 思ってもいないことを、彼は言う。


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