と、いう展開が期待できそうな絶滅危惧種ダケ茸の胞子を手に入れたんだが、適当に散布して良いだろうか。
それとも、単純な散布よりも効果的な利用方法があるだろうか。
二人の一番身近に居る君の意見を是非とも窺いたい。

なお、毎回のことだが、くれぐれもこの手紙は二人には見付からないように扱ってくれ』



やや癖のある文字でそう締め括られた紙束を順番通りに揃え直して、レビィは半笑いを浮かべた。

「とうとう細菌テロまで企て始めたね……」
「あい」

ハッピー宛に届く、親展の手紙。
ミラジェーンとの間でこっそり受け渡されるそれを発見してしまってから、レビィは二人の――差出人を含めれば三人の――共犯者となった。
手紙の送り主は、以前ルーシィをぬいぐるみにした犯人でもある、自称魔法研究家。彼女から聞いていた話以上に、変わった人物のようだった。ルーシィは知らないことだが、ミラジェーンとは旧知の仲であるらしい。
内容は初めこそ開発中の魔法についてだったらしいが、レビィの知る限りは罠――もとい魔法にかかったときのナツとルーシィの反応を予測するものだった。妙に具体的なそれは、回を重ねるごとに段々と長くなり、今では小説風に形態を変えている。今回にいたってはすでに魔法ですらないが。
初めはとんでもないものに巻き込まれたと思ったものだったが、持ち前の活字中毒と好奇心を発揮して、レビィは概ね楽しんでいた。進展しそうでしないリアルの二人を投影した展開に、待ち遠しくも感じている。

しかし想像の中でさえも幸せになりきれないというのはいかがなものか。

「この人さ、本当にナツとルーちゃんを応援してるのかな」

ナツがルーシィに好意を寄せていることは、ギルドでは周知の事実だった。逆ははっきりとはしていないが、レビィは脈有りだと踏んでいる。
みっちりと膨らんだ封筒を返すと、ハッピーは両手で抱えて首を傾げた。

「うーん…オイラ、応援はしてないと思うな」
「え?」
「あくまで被検体、だね。くっついちゃ困るんだよ、きっと」
「なるほど」

レビィは渇いた笑顔を貼り付かせた。

「だからいっつも、良い所で邪魔が入るんだ」

レビィはそっと後ろを振り向いて、氷の造形魔導士を確認した。研究家にとって、ぬいぐるみ事件時のグレイの存在はよほど印象深かったらしい。邪魔をしたりヤキモチの原因になったりと、手紙の中で大活躍だった。
ハッピーは持て余したように封筒をくるくると回した。

「でも、大体この通りだよ」
「やっぱり?凄いね」

研究家は、二人のことを、その周りの人間にまで興味を持って調査しているようだ。どこで誰がどう動くか――綿密に予測されていては、ナツとルーシィの関係がスムーズに進展するはずもない。
レビィは肺から息を搾り出した。

「もうほとんど呪いだよね」
「あい、この手紙も含めてね」

疲れたように分厚い封筒を仕舞うハッピーだったが、口元にはその本心が透けて見える。
やっちゃえ、と返事するであろう青い子猫に、レビィは半眼を向けた。






3時のデートうさぎうさぎトレロカモミロに続く研究家第4段。
そろそろこの人に名前付けてあげた方が良いかもしれない。
お付き合いありがとうございます!



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