29 《playwriter side》
二日目がやってきた。僕たちの文化祭というスクリーンにエンドロールが流れる日だ。ついに僕の作品は過去になる。それは悲しいことだけれど、だからこそ最高の作品だったと胸を張って終わらせたい。
客足も増える昼下がり。僕たちに、最後の公演の時が訪れた。
「これから、演劇『シンデレラ』を開演します。最後までお楽しみ下さい」
僕はこの二日間、客席の一番前の席で全公演を見てきた。これが僕の夏休みの成果であり、僕らのクラスの成果だからだ。それを一番の特等席で、全員の顔がよく見える席で見届けないで、どうすると言うのだ。
[王子]や[シンデレラ]をはじめ、クラス全員の劇に対する、文化祭に対する、そして高校生活に対する「思い」が集結する。それは僕が今までに書いてきたどんな作品よりも、濃厚で美しい作品のように思えた。
エンディングダンスで、この劇はついに幕を閉じる。
僕の『シンデレラ』は、終わった。
「本日はお忙しい中、私たちの劇にを見に来て下さり、ありがとうございました!」
堂々とした[王子]……いや、宇藤の声。出演者が手をつないでのカーテンコールは、どの公演よりも華々しく見え、僕はどの公演よりも大きな拍手を彼らに送った。
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