30 《prince side》
グッと腹筋に力を入れ、声を張り上げる。今の俺なら、長いセリフでも何でも言える。
「この劇で私たちは、沢山のことを感じました。劇の制作にあたり、クラス全員が団結して望むことができました。それぞれの役割を自分たちが高い水準で全うし、時に悩み、時にぶつかりあい、そうしてできたのがこの劇です」
言い切って、隣にいた[シンデレラ]……いや、小田原さんを前に出す。透き通るような声で、彼女が続ける。
「この劇の脚本・演出を手掛けてくれた北島君に、感謝の気持ちを込めてこの曲を送ります」
客席の一番前で、北島がすうっと立ち上がった。観客が皆一斉にそちらに注目した。
今までに、このスピーカーで流したことのない曲が中庭いっぱいに広がった。俺たちは、今までに練習したどの曲よりも拙い振り付けでその曲に合わせて躍り出す。
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