23 《prince side》


 明日は完全なる体力勝負で早く寝ないと体がもたない、と頭ではちゃんと理解していてベッドにも潜っていたけれどこれがなかなか眠れなかった。台本を取り出して何度も何度も読み返していた。全登場人物のセリフは全て頭に入っている。一人でこの劇を演じることも、不可能ではないだろう(そんな状況誰にも見られたくはないが)。

 ただ、言葉にならない緊張感が俺の脳をやけに覚醒させていた。どうしてこんなに緊張しているのか。……なんとなく、わかっている気がする。それは俺が。

 不意に携帯が机の上で震えた。クラスの連絡係からだ。件名が“Fw:”で始まっている。誰の転送だろう。やけに長いようだが……。


『[脚本家]こと北島です。ついに明日が本番ですね。』


 北島か。あいつ、携帯持ってないんじゃなかったっけ。


『お陰で僕はあまり眠れそうにありません。柄にもなく、緊張しているようです。
 僕は[脚本家]として、この劇にどれ程のことができたのか、正直分かりません。慣れない作業とはいえ話を創ることは僕にとっては趣味であり、好きなことです。僕は好きなことをやっていただけでした。』


 俺は、北島の真意に触れてしまうような、そんな気がした。


『でももちろん、この劇はもう僕だけのものではありません。みんなの努力のお陰でこの台本は、稚拙ながらも生きたものに仕上がりました。それを思うと、僕は感動のあまり涙が出そうです。』


 この言葉が決して比喩などではなく、むしろ文字通りの意味で伝わってくる。





『この劇が「劇」としてあるのは、他でもない、皆さんのお陰です。ありがとう。』




back TOP next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -