22 《playwriter side》
そのまま僕らは文化祭前夜を迎えた。僕の心は相変わらず暗鬱としていて眠れず、鞄から台本を取り出した。何をしても眠れないのなら、少しくらい感傷に浸っても構わないだろう。
[脚本家]……それは慣れない作業この上なかった。登場人物の多い話は元々苦手だったこともあり、ようやくできた台本は僕の作品の中でも稚拙な部類に入ってしまう程だった。
でもなぜだか、僕はこの作品が好きだ。いやこの劇が、心から好きだ。確かに恥ずかしいほどこの台本は稚拙だ。でもそのつたなささえも、なぜだか好きなんだ。それが僕にはとても不思議だった。
僕の作品は、僕の力なんかでは生きたものになんてならなかった。
(私の仕事は、ドラマのほんのスタート地点でしかないんです。文字を生きたものにしてくれるのは、決して私なんかではなくて、役者さんたちなんです。)
そして。
「そうあるべきなんです……か」
僕は何に憤慨してるんだ。真夏のダンスが大変なことくらい、疲れたことを監督に伝えることくらい、踊らない監督を羨ましく思うことくらい。
僕は小さな人間だ……。
ふと思い立ち、パソコンを立ち上げた。夜も更けたというにはまだ早い時間帯だった。
『[脚本家]こと北島です。ついに明日が本番ですね。』
悩んだ末に、ありきたりなこの言葉から打ち始めた。
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