15 《magician side》
「……お母さんは勉強しろ勉強しろってうるさいし、彼氏と別れたばっかりでクサクサしてたからついきつく言い返ちゃって……。文化祭だって高校生最後だからみんな頑張ってて、あたしだけ手を抜いたり足引っ張ったりしたくないからこうして練習してるけど……」
話していると、つくづく自分の中途半端さが嫌になってくる。
「あたし、いつもそうなんだよね」
言葉が、気持ちに先立って出てきた。あたしはいつもそう。
「あ、雨」
真木さんが言うと同時に、雨粒が鼻に一つ当たった。
「君、雨に当たっちゃうよ」
言ってるうちに雨脚は強くなっていく。真木さんはカメラが濡れてしまうことを気にしている。
「あったあった、ほらこれ」
真木さんが小さな折りたたみ傘を差し出してくれた。その傘も受け取れずに、髪の毛が雨水の重みで沈むように垂れてくる。
「あたし、いつもそうなんだ。自分でも何がしたいのかわかんなくて、目の前のことばかり考えてきた。恋も、文化祭も、受験勉強だって……。目標とか夢を持っている人が羨ましくて、何かに打ち込んでいる人に憧れて、とりあえず目先のことに取りかかってただけだったんだ。
それだけであたし彼のことを、大好きな彼も傷つけた……。あたし、サイテーだ」
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