16 《magician side》
バタバタと遊具に当たる雨滴の音が心に突き刺さって痛む。夏の夜を雨が包み込むように降り注ぐ。公園の一つ灯りがかすみ、柔らかな薄い光があたしたちの辺りを優しく照らした。
「あたし、どうすればいいの?こうやって人生中途半端に生きるの?あたしの……」
「『あたしの人生はもう、取り返しがつかなくなった』なんて言わないだろうね?」
「……え?」
あたしは真木さんの顔を見上げる。真木さんは優しく、微笑んでいた。
「君の人生はこれからだ。俺よりずっと若いくせに、そんな顔するなよ。……撮っちゃうぞ?」
腫れぼったい目にぐじゃぐじゃの髪。今のあたしの顔は見るに耐えない。真木さんはハンカチを探しながら言った。
「君の顔は、そんな風には見えなかった。君が人の真似をしてダンスに打ち込んでるようには、見えなかったってことなんだけど。君は本当にダンスに一生懸命だったよ。……はい、これで拭きな」
渡されたハンカチで顔を拭いた。そして、次から次へとしたたり落ちる雨滴を辿って前髪も少し拭いた。その間真木さんは、ゆったりと傘を差しかけてくれた。
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