14 《magician side》
今日は夕時に雨が降るという予報だった。時間の許す限り、といつものように公園で練習していると、変な音が聞こえた。
(シャッター音……?)
辺りを見回す。誰かが、あたしの写真を撮ったの……?でも、夜の公園の風景を撮ってるのかもしれないし。とにかく、どこにいるんだろう。
大きく穴の空いた遊具の影から、一人の男の人が現れた。カメラを手にし、撮った写真を食い入るように見つめて――あたしが近くまで寄って、撮影画像を覗き込んで、やっぱりあたしが撮られてたんだと悟ったことにも気づかないで――確認していた。
「あの。勝手に写真撮らないでもらえます?」
その人はあたしの声に飛び上がるほど驚いていた。
「うわあ!……ああ、ごめん。つい、指が押しちゃってね」
「はあ、そんなんの、どこがいいんです?お兄さん誰?」
「俺、アマチュアのカメラマンやってる。真木って言うんだ。……これ、名刺ね」
確かに、名刺には真木と印刷されている。雑誌の記者とかじゃないらしい。
「夏休みだから、色んなところ旅してんのね。君の表情、良かったよ。部活?サークル?」
「あたしは……文化祭準備です」
夜に誰かと話すことは今までになかったから、休憩がてらに色々と話してしまった。その代わりに、真木さんが撮った写真やカメラ雑誌を見せてもらったりしたけれど。
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