15.悪夢

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「お邪魔します」
 黒艶をたたえた髪は、今日は白いカチューシャで飾ってあった。我が物顔で生徒会室に入ってくるその余裕そうな顔に、毎度のことながらいい気分がしない。
「ハセ先輩とすれ違いました。忙しそうですね。ケン先輩は暇そうですね」
 須崎奈津子だ。物言いも、敬語を使いはするものの大概失礼なものだ。マナがいないからそれは尚更である。
「君が来るときはどうしてか、残念なことに暇なんだよ」
 そして決まってあの事を聞いてくる。
「ケン先輩って、本当に好きな人いないんですか?」
「さあね」
「あ、いるんですね」
「不確定な要素を想像で補うのは、賢いとは言えない」
 毎度交わされる同じやりとりに、なぜ飽きないのかと不思議に思うくらいだ。
「ふふ、ひどいです」
「どうもひどい人です。恋愛するならよそでどうぞ。ハセでも可」
 いつまでもコロコロと笑い続けるその様子が、少し奇妙でもあり恐ろしくもあった。
「君は……よく笑うんだね」
「だって、先輩が面白いんですもん」
「僕が面白いなら、君はニュースを見ても笑うんじゃないの」
「そういうとこ!」
 僕は手元に広がった資料を片づけ始めた。わざと時間をかけて、心ではハセの早々の帰還を祈りながら。


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