15.悪夢

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 こんな僕にも特技らしい特技を自覚し始めた。技、というほどのものでもないけれど。
「ケン、どうだった?」
 期末試験の結果が個票によって個人に知らされた。僕は答える代りにその紙切れをハセに渡す。
「うわ……堂々の学年一位じゃないっすか」
「まあ今回は何となく手ごたえが良かったからこんなもんかな」
「言ってみてえーそんなセリフ」
 ハセだってさして成績が悪いわけじゃない。むしろ、以前まではハセには手も足も出なかった。
「ハセは忙しいか?」
「いや別に。ただ、前よりは勉強に熱を入れなくなったかなあ。なんでだろう」
「生徒会か?」
「かもね」
 爽やかに笑ってそう返されると、僕は複雑な気持ちになる。勉学をおろそかにしてまでのめりこむほどのことじゃないだろう。自分を犠牲にしてまで学校を良くして、お前に何が残るんだ、と。
「……っと、もうこんな時間か。ちょっと囲碁愛好会が部活に格上げしてほしいって言うもんだから活動状況視察しなきゃいけないんだ。頼むけど留守番よろしく」
「頼まれた」
 颯爽と生徒会室を出ていくハセの背中を見送る。入れ違いに小さな人影が見えた。


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