14.ナッちゃん

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 相談があるのだとマナが僕に声をかけてきたのは、初めて須崎に会ってから数ヶ月が経っていた頃だった。僕たちは無事選挙を乗り越え生徒会のトップを任せられる立場に立ち、仲の良さが前面に出た連携を生かしてあらゆる活動に積極的に取り組んだ。「フットワークが軽くて、政府も見習うべき生徒会」などと教員から評されることもあった。チームワークを褒められることは、個人的に褒められることよりも嬉しい。
「ごめんね、本当はハセにも相談したかったんだけど、あんまりいろんな人に話せる内容じゃなくて……」
 ハセは今日校舎の設備に対する生徒からの要望に応じるべく事務室に駆け込んでいる。実現可能な限りの対処を施し、その結果を全校に対して曇りなく公表する。それがたとえトイレの芳香剤の香りの種類一つでも僕たちは手を抜いたりしない。
「僕が聞いて、それでも解決が苦しくなったらハセを頼ればいい。それでいい?」
「……うん、ありがとう」
 それにしてもここまでしおらしいマナの表情は初めて見るかもしれない。どんなことでこんなにも参っているのだろう。
「あのね、この前紹介したナッちゃんのことなんだけど……」
 ナッちゃん、と聞いて思い出すのはあの不気味なまでに隙のない笑顔だった。
「須崎? 部活で何かあったの?」
「部活関係って言えばそうなんだけど、限りなくあたしとナッちゃんの個人的な問題ね」
 申し訳程度に笑みを浮かべて、マナは話し始めた。その最初の一言が僕にとって一番衝撃的だったのだ。
「あたし、どんなに写真が好きでも、服は脱げないよ」


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