DOG | ナノ


▼ 07

もっとって、なんだそれ。

俺はお前を喜ばせるためにこんなことしてるんじゃねぇよ。

「じゃあ、言えよ」

どうして欲しいか自分で言え。与えられるのを待ってるだけの駄犬なんて、俺はいらない。

「ひ…っ、う…」

白い首筋に歯を立てる。薄い皮膚だ。強く噛んだら、簡単に破れてしまいそうな。身体を覆うにしてはあまりに心許無い感触に、胸の奥底が湧き立つの感じる。

「言えって」
「あ…先生の、手で」
「俺の手で?」

手のひらで腿の裏を撫でると、九条は全身を強張らせて息を吐いた。ぞくぞくと背筋が伸びていくのが見て取れる。面白いくらいに従順だ。

「さ、さわって、ほし…」
「もう触ってる」
「ちがくて、そこじゃなくて…っ」
「どこだ」

中途半端な真似は許さないとばかりに強い声で再度問うた。勿論、九条の求める「俺の手で触って欲しい場所」なんて分かりきっている。

密着した下半身に感じる淡い熱。ほんの少しキスをしただけでこんな風に反応を見せるのだから、本当に単純だ。笑いながら膝で軽く押してやる。

「あっ、あ、そこ、そこぉ…っ」
「そこって何?わかんねぇ」
「く…っそ、クソが…」
「クソ?誰のこと言ってんの?」

ぐりぐりと力任せに刺激すると、悲鳴のような嬌声があがった。

「ひぐっう!やめ…あぁぁっ、あ、いう、言うから」

最初から素直に聞いていればいいのに、どうして学習しないのか。

「ち、ちんこ、さわってほしい」
「へぇ」

まるで猫のようなつり目が、じわりじわりと潤みを増していく。羞恥で染まったのは頬だけでなく、濃い赤は首元の肌まで広がっていた。

「はい」
「え」
「貸してやるから、好きに使えば。見ててやるよ」

片方の手を差し出してそう言えば、九条は困ったように眉を下げた。まさか先程の「見ていてやるから勝手にしたいようにすればいい」がまだ続いているとは思わなかったのだろう。

「いらねぇの?」
「い、いる!」
「なら早くしろ」
「う…」
「早く。あと五秒以内にしないならもう終わりな」

慌てて制服の前を寛げる九条。少し躊躇いながら俺の手首を掴んだかと思うと、下着の中の勃ちあがった性器に触れさせられた。

「ん…」
「…」

おずおずとした手付きでの行為が始まる。無言のままその様子を眺める俺の顔を、時折九条が確かめるようにちらりと見やった。怒られないか冷や冷やしているのかもしれない。

「ん…っ、ん、んん、ふ…」

徐々に湿り気を帯びてくる昂り。水とは違う粘り気のある液体が触れる感覚に、喉の奥から笑いが零れた。

「人の手使ってオナニーして気持ちいいか」
「あ、アンタが、やれって、言ったんだろぉ…っあ」
「気持ちいいかよくないかを聞いてる」

力を抜いていた指先をついと動かして鈴口を塞ぎ、その反抗的な態度を咎める。指の下でどぷりと先走りが溢れだし、あちこちを濡らした。

「いい、いぃ、きもちい…っ」
「変態」
「うぁっ、あ、も、もぉ俺、変態でいいから、ん、ぅ…」
「いいから、何?」

泣きそうな顔をした九条が、俺の首を引き寄せる。

「先生、せんせぇ、ちゅーして」
「俺は何もしねぇって言ったろ」
「お願いします…っ!」

普段敬語なんて使わないくせに、こういうときは絶対に逆らわない。これも今までの躾のおかげか。目先の快楽に溺れ忠実な姿勢を見せる奴の耳元で、再度変態と詰るように囁いた。

「したきゃ勝手にすれば」
「ちがう、先生のが、いい」

先生がさっきしてくれたみたいなやつがいい。九条ははぁはぁと呼吸を荒げながら駄々を捏ねた。生暖かい吐息が首に当たって不愉快な気分になるが、どうせ言っても無駄なのでそのままにしておく。

「嫌だね」
「や…っ、なんで、あぁ…ッ、あ、あっ」

ぐちゅ、ぐちゅ、と扱く手が激しさを増す。自慰なんてただの作業だ。ただ擦って吐き出すだけの行為にどうしてここまで感じ入ることができるのだろう。甘く声を漏らす九条の顔を眺め、そんな疑問を抱いた。

「俺はもう十分お前の我侭に付き合ってやってる。その上さらに何かしてもらおうだなんて、傲慢が過ぎるんだよ」
「ご、ごうまん…っ?」
「やらしいキスがしたいなら、てめぇで覚えろ」
「え…っ、あ、ん、んんぅっ」

唇を塞ぐ。だがそれ以上のことはしない。さっきこいつがしたみたいな、口と口を触れさせるだけの拙い口付けに留めた。

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