▼ 09
一旦身を起こし、膝の裏に両手を差し入れてから胸につくくくらいぐっと前に力を入れる。
「え……っ、ちょお、な、なにす……」
下半身が持ち上がり、結合部がもろに視界に入ってしまう姿勢をとらされることとなった九条が慌てて俺の手を掴もうとした。
「はぁぁぁ……ッ!!」
それを無視して上から突き落とすように中を掻き混ぜてやると、掴んだ脚がびくんと宙を蹴った。
「あ゛ッ、あ゛、やだぁっ、やだっ、だめだ、それやめて、いくぅ、いく、いくうぅ……!!」
「いけば、いい、だろ」
じゅぶ、じゅぶ、と粘液と空気の混ざる音が激しくなる。奥をつつく度に真空のように内側が吸いついてきて、引き抜くのも一苦労だった。
「あはぁっ、うッ、あ、あ゛、ひ、あ゛……〜〜〜〜ッ!!!」
そうして激しく責め立てていると、何度目かの突き入れで九条はまた絶頂を迎えた。
「っバカお前、締めすぎだ」
うねる襞に刺激され、ものすごい勢いで尿道に精液が駆けあがってくるのを感じた。
「……っ」
「あ……っ、ぁっ、あ……」
ぴったりと隙間なく腰を尻に押し付け、最奥に先端を擦りつけるようにしながらゴムの中に吐精する感覚を味わう。
「ふ……っ、ッ、……っ、う、……」
射精をしている間、俺の下で九条は息も絶え絶えになってひくひくと痙攣していた。
「……おい」
絶頂の余韻に浸っているのか、あまりの悶えように少し心配になって顔を覗き込む。
「大丈夫か」
「……った」
「は?」
快感による涙で瞳を潤ませた九条が、うっとりとした口調で呟いた。
「きもち、かった……」
「……」
心配して損をした。
*
朝になって、未だ寝息を立てて眠る九条をそのままに、着替えたり顔を洗ったりと最低限の身支度を整える。そうして寝室に戻ると、九条は眠い目を擦りながら身を起こしていた。
「起きたのか」
「んー……」
「まだ寝てていいぞ」
「いや、起きる……」
そうだ。そういえば、渡さなければならないものがあった。
「やる」
ぽんと軽く投げるようにしてベッドの上にそれを転がす。
「なにこれ」
「誕生日」
「もしかしてプレゼント!?」
答えたくなかったので、無視してベッドの脇に腰掛けた。
「今開けていい?」
「好きにしろ」
九条はその箱を慌てて拾い上げ、破らないように慎重な手付きで包みを解いた。
「これ……腕時計?」
「お前、つけてなかったから」
それほど値段が張るような代物でないことを付け加えようとして、やめた。この坊ちゃんの前でお金のことをとやかく口にしたくない。
それに、こいつにとっては値段なんてどうでもいいはず。俺からもらったものなら、何でも嬉しいと言うだろう。自惚れではなく事実だ。
九条は箱から取り出した時計を早速腕につけ、それをしげしげと眺める。
「先生が選んだやつ?」
「ああ。男っぽいゴツめのやつかそういうシルバーのやつか迷ったけど、シルバーの方が何かとつけやすいかと思って。場と服装を選ばないだろ」
「うん」
「あとお前華奢だしな。細身のデザインの方が似合……」
「うん」
「……うん、じゃなくて、何か他に気の利いたことは言えないのか」
俺がそう言うと、九条はこちらに向かって屈託のない笑みを向けた。
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