べったーに上げてたものを再掲。
フォロワーさんのお誕生日に贈ったものです。
「誕生日ィ?」
私が何の気なしに言った一言に、彼は勢い良く振り向いた。
「え、あ…うん、そう…」
「俺を誰だと思ってる?」
「…誰って、…スピードワゴン…」
「そう、俺ぁおせっかい焼きのスピードワゴン!…誕生日なんて言われた日にゃあ祝わねぇワケにはいかねえってもんよ!」
スピードワゴンさんはそう言うと私の手を勢い良く引いた。よろけながらも彼に続くと、明るい表通りに連れ出される。
私達には場違いな、明るいショーウィンドウの前で彼は「どれにする?」と問うた。
「どれ、って…」
「ケーキがなきゃあ始まらねーだろ!誕生日なんだから」
目の前に並んだ色とりどりの可愛らしいケーキの一つをおそるおそる指差すと、スピードワゴンさんは大きく息を吸って店に入って行く。子供の頃、石を投げられ追い返されたことはないのだろうか。どうしても、昔がチラついてしまって私は彼の背を追えなかった。
「ほら、買えたぜ!」
満足気な笑顔で戻ってくるスピードワゴンさんは、お使いの成功した子供みたいで思わず頬が緩む。ありがとう、と言えば彼はまた私の手を引いて、「パーティと洒落込みましょうぜ、マドモアゼル?」とウインクなんかしてみせた。私はフランス人じゃあないし、お嬢さん、って見た目でもないのに。
「…スピードワゴンさん、ありがとう」
「何言ってんだよ、今日はお前がおめでとうって言われる方だろ!」
大人しく祝われとけ、とケーキを差し出されて、小さな箱を胸に抱く。
「もうひとつ、欲しいものがあるんですけど」
「おう、言ってみな!」
任せとけと言わんばかりの様子に、意を決して唇を開いた。
「一緒に、ケーキ…分けっこしましょ?」
たったひとつ、彼がくれたから。一緒に食べたいなんて、ワガママすぎだろうか。
スピードワゴンさんは私の言葉が予想外だったのか、顔を真っ赤にしながら「それはプレゼントだから、」なんて困り顔だ。
「…だめ?」
「…ダメじゃあねえが…、その、慣れないコトは…」
真っ赤になってしばらく言い淀んだ彼は、ぶんぶんとかぶりを振って、それから大きく息を吸い、「誕生日だから、特別な」と言った。なんだかとても大切にされている気がして、嬉しい。
「スピードワゴンさん、」
「なんだよ」
「大好きです」
「バッ…バカ言ってんじゃあねえ!!!」
それじゃあお前を祝うことにならないじゃあねえか、なんて慌てる彼は本当に可愛いと思う。
20170205 お誕生日おめでとうございます!!!!
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bkm