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おあついうちに

「…ねえミスタ」

「んだよ」

私を背後から抱き締める男に声を掛ければ、不機嫌そうな声が返ってきた。私の次のセリフを予想してか、離さないとでも言わんばかりに回された腕に力が篭る。

「暑苦しいから離れて」

「嫌だね」

ぎゅう、とさらに力が込められて、いささか呼吸がくるしい。なんか日本にはこんなオバケがいたような気がするよな、と思ったけど、ミスタはイタリアーノだから伝わらないのか。冗談にもならないんじゃあ仕方ないなと溜息をつく。

「…もー、どうしたっていうの」

呆れ声とともに振り返れば、ミスタは「おっ、やっとこっち向いた」なんて嬉しそうに笑った。それから私の頬に口付けて、首筋に擦り寄る。まるで猫みたいな仕草が何故だかよく似合ってしまうのは、さすがと言えばいいんだろうか。

「涼しくなってきたからよォー、くっついてもいいかと思って」

「…そりゃあミスタみたいにお臍出してたら、そろそろ寒いんじゃあないの」

お腹冷えちゃわない? と問いかければ、じゃあななこがあっためてくれよ、なんて呑気な笑顔が帰ってきた。それを見たら頬に熱が集まってしまって、私はつっけんどんに「暑苦しいからやめてよね」と彼の胸を押す。

「暑くねーだろーが。もう夏は終わったんだぜ? これから寒くなる一方だっての」

それは暗にこの先ミスタがこうやってひっついてくるってことなんだろうか。それはちょっぴり嬉しいけれど、私の心臓が持ちそうにない。いまだって、背中に引っ付いたミスタに胸の鼓動が聞こえやしないかと思うと気が気じゃあない。

「だからってくっつかれても困るし」

「…何も困るこたねーだろ。」

恋人なんだから、と、耳元で囁かれて間抜けな声が出た。ミスタは私の反応を面白がるみたいに笑って、身体に回した腕に力を込める。

「なんだよ、変な声出して」

「ミスタのせいっ、でしょ!」

もがいたところで抜け出せるはずもなく、間抜けに手をばたつかせるだけで終わった。ミスタは気を良くしたのか肩口に唇を寄せ、可愛いやつめ、なんて笑っている。どっちがよ。

「…なぁ、部屋に行こうぜェ」

甘えるような声にちょっぴり心が揺らいだけど、まだ日も高いしそんな時間じゃあない。
くすくすと笑いを零しながら「嫌だよ」なんて首を振れば、耳元にミスタの帽子がざらりと擦れた。

「…行っていいですよ、部屋」

「「ジョルノ!?」」

私たちの背後から冷たい声が聞こえて、弾かれたようにミスタが離れる。冷たい視線の主は呆れたように肩を竦め、「行ったらいいんじゃないですか」と繰り返した。

「…というか、夏も終わったっていうのに暑苦しいんで、さっさと出て行ってくれるとありがたいのですが」

「…ッ、」

怖い。背筋が冷えるのは、さっきまでひっついていたミスタが離れたせいだけではないはずだ。「うん、ありがとうジョルノ」なんて乾いた笑いとともに零してそそくさと移動する。ミスタは無言で私の後ろを付いてきた。元はと言えばミスタのせいなんだから、と恨めしげに振り返れば、思いの外満足そうな顔があってびっくりする。

「…なんでそんな顔してんのよ」

「え? だってよォ、ジョルノの許可も出たし、大手を振ってくっつけるだろ」

そう言うとミスタは私を正面から抱き締めた。ジョルノはそう言う意味で言ったわけじゃあないと思うんだけど、まさかミスタが気付かないなんてことはないはずで。

「…ジョルノ、怒ってたんじゃないの?」

「怒ってねーよアレは。…それよりよォ、」

早く行こうぜ、と額に口付けられて、まぁどうでもいいか、なんて頬を緩めた。

20171001


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bkm