「オレは断然!巨乳がいいと思うね。」
「…あんまりおっきくてもよぉ、困んねー?」
「ハァ!?胸の大きさなんかカンケーねーだろー。」
侃々諤々。女の子の胸の大きさについて、巨乳派メローネを筆頭に議論が巻き起こっているらしい。
「わかってねぇな、マンモーニ共め。貧乳の方が感度がいいんだよ。」
「さっすが兄貴ィ!」
プロシュートは貧乳派か。ちっぱいに希望をくれるなんて流石は兄貴。
いやでも私にはこの論争は辛すぎる。
そっと逃げよう…そう思った矢先に、メローネに見つかる。
「ななこももうちょっと大きかったら良かったのにねぇ。おっぱい。」
何言い出すのメローネ。人のコンプレックス抉らないで。胸ならもう抉れてるから…ってなにその自虐ネタ。
「んだよフザケんなメローネ。胸なんかなくたってななこは充分カワイイだろ!」
ギアッチョナイスフォロー。
ありがとうギアッチョ。いつも天然パーマ馬鹿にしてごめんね。でも今しっかり「胸がない」って言ったね!
「え、だってリーダーって巨乳派だろ?ななこリーダーのこと好きじゃん。…でもまぁ、まだ育つ余地はありそうだよねー。」
「オイなんだそれ、聞き捨てならねえな。」
兄貴が食いついた。どこにだ。巨乳派にか、育つ余地にか。いや私も聞き捨てならないよ。なんで知ってんだよメローネ。
「…っていうか、リゾット巨乳が好きなの?」
思わず口に出してしまい、みんなの視線が私に集まる。あ、これダメなやつだ。完全に墓穴だ。
そう思った時には遅かった。
「…お前、本当にリーダーが好きなのか?」
「マジかよ…」
みんなに囲まれて、顔が熱くなる。これじゃあ答えなくても一目瞭然じゃないか。
「やだなぁ、カマかけただけなのにななこってばディ・モールトたーんじゅーん。」
当のメローネは呑気に笑っている。くそ、メローネ後で見てろ。
「そういうことなら協力するぜ。」
「オレもするする!」
兄貴の一言は、普通に頼もしい。だがメローネ、お前はダメだ。
かくして、私のリゾットへのアプローチは始まった。
*****
「…リーダー、お疲れ様。」
「あぁ、ななこか。…すまないな、ありがとう。」
まずは二人っきりになるところからだな、とプロシュートに言われて、コーヒーを持ってリゾットの部屋に。
メローネが「パンツ脱いでったら?」って言うから殴った。そうしたら彼は笑って「ウソウソ。ななこはうなじが綺麗だから、髪を上げるといいよ。」と、可愛らしくポニーテールを結ってくれた。メローネは変態だけど、いや変態だからと言うべきか、美しいものを見つける能力に長けていると思う。
いつもと雰囲気が変わるな、とみんなに太鼓判を貰って、意気揚々と来たのだけれど。
「あの、リゾット…」
コーヒーを置くときにちらりと一瞥されたきり、リゾットの視線は書類に落とされたままで。
「見ても貰えなかったよ…」
「ななこはこんなに可愛いのになぁ…」
「ありがとホルマジオ…」
慰められて、リベンジを誓う。
これだけの人数がいたら一つくらいは成功する案が出るだろうと、みんなで考えることにした。
「もう押し倒しちゃえ!」
「却下。」
即答。ノーコメント。
「一緒にゲームとかよォ。」
「うーん、ギアッチョ…リーダーがゲームしてるの見たことある?」
「ねえな。」
普段からゲームばっかりするなって怒ってるし、リゾットはゲームとか嫌いそう。
「膝に乗ったらどうだ?」
「ホルマジオ猫好きだもんね。」
でも私、猫じゃないしなー。机に向かうリゾットの膝に乗るとか難易度高いよ。
「許可してやろうか。」
「イルーゾォいたら二人っきりじゃないじゃん。」
「肩揉みとか、どうですかねぇ?」
「あぁ、ペッシは上手いからな。」
それくらいなら、出来そうかも!リゾットが長身だと言っても、座っていれば私にも届く。
「ベネ!こう後ろから抱き着いてさ、腕とか背中に柔らかいのがぽよん、ってなったら抱き締めたくなっちゃう!」
「あぁ、否定はしねぇな。…でもななこじゃあなぁ…」
メローネのセリフに、ホルマジオが私の胸をしげしげと眺める。
ひどい。ホルマジオひどい。悪気がない所がさらにひどい。
「どーせ貧乳ですよー!」
ぷん、と頬を膨らませると、「しょーがねえなぁー」と頭を撫でられた。
「あ、イルーゾォがさぁ、ななこが帰った後の様子見てきたらいいんじゃない?」
メローネがそう提案する。私が帰った後に、本音をぽつりと呟いたりしないかなって。
「…おれがか?」
「それいいかも!お願いイルーゾォ!」
「わかった。任せろ。」
確かにそれはあるかも。と、私はイルーゾォに頭を下げると、心強い返事。なんだかんだでみんな私に甘い。
「ねえねえオレも入りたい!見に行きたい!」
「許可しない!」
メローネがオレもオレもと騒ぐけど、彼じゃあ絶対ただの出歯亀にしかならないだろうと全員が止めた。
「よし、じゃあリベンジだ。行ってくるー!」
みんなに見送られて、リゾットの部屋に向かった。
*****
「リゾットー、入るね。」
「あぁ、ななこか…」
さっき来た時と変わらず机に向かっている。私が淹れたコーヒーはすっかり空になっていて、お代わりを持って来れば良かったかなと後悔する。
「あのね、肩、揉みに来たの。」
「…どうして…?」
怪訝そうな視線を向けられるけど、めげちゃダメだ。
「ペッシが、リーダー疲れてるだろうからって。…お疲れ様、リゾット。」
後ろからぎゅっと抱きつくと、リゾットは少しだけ驚いて、でもすぐに私の身体を離した。
「大丈夫だから、お前は部屋で休んでいろ。」
「…迷惑だった…?」
「そういうわけではないが…もう遅いから、ゆっくり休め…」
そっと頭を撫でてくれる。大きな手が気持ちいい。
そんなことされたら、帰るしかないじゃない。
「…おやすみなさい、リゾット。」
せめてもの腹いせにリゾットの頬にキスをして、私は部屋を後にした。
*****
「どうだった?」
「相手にして貰えなかったよ…」
みんな心配してリビングで待っていてくれたらしい。私の落胆した顔を見ると、口々に慰めてくれる。
「イルーゾォが様子を見に行ったから、落ち込むのは少し待て。」
プロシュートの言葉に、ハッとする。そうだ、落ち込むのはイルーゾォの話を聞いてからにしよう。
「あ、帰ってきたみたい。ねぇどうだった?」
しかしイルーゾォは出てこない。なにやら困ったようにして、言葉を探している。
「…もしかして、嫌がってたとか。」
「いや、それはない。ないんだが…むしろその逆で…」
言いづらそうにごにょごにょと言葉を濁している。
「…え、それってさぁ、ななこが押し倒しちゃえば確実ってこと?」
「あぁ、確実だろうな。」
メローネがめちゃくちゃニヤニヤしている。
行ってきちゃえばー?なんて、呑気に笑って。
「…大丈夫そうだし、俺たちは寝るか。」
ホルマジオが解散を促すとメローネ以外は気を遣ってくれたようで、みんな私に激励の言葉を掛けて自室に帰って行った。
「…明日、詳しく聞かせてよね。」
「上手く行ったら、ちゃんと報告する。」
「…頑張って。」
メローネは私のほっぺにキスをして、「いい夢を」なんて笑って去っていく。
私は高鳴る胸を押さえて、リゾットの部屋のドアを叩いた。
「リゾット、何回もごめん…」
「…どうした?」
「…あ、えと…あの、私…ッ!」
もうどうにでもなれ、と、私はリゾットに飛びついた。突然にも関わらず、軽々と受け止める大きな手と分厚い胸板。
「急にどうした、危ないだろう…」
困ったように引き離そうとする手を押さえて、ぎゅっと抱き着く。
「…好きです!」
「…ななこ…?」
「…リゾットが、好きなの。」
そう告げても、返事はない。
フラれてしまうのかと落胆して離れようとした瞬間、視界が大きく揺れた。
「きゃあっ!」
「…お前は、人が折角我慢したと言うのに…」
ベッドに転がされて、噛み付くように口付けられる。驚きの声を上げようとした唇の隙間から、リゾットの舌が入り込んできて。
「…っんむ…ぅ、…」
「…好きだ、ななこ…」
散々蹂躙され酸素不足で霞む頭に、愛の言葉が降ってくる。
嬉しくてぎゅっと抱き着けば、強い力で抱き返された。
「…っ…え、?ちょ、リゾット…!」
幸せ!なんて思っていたのも束の間、服の隙間から入ってきたリゾットの手に驚きを隠せない。
「…どうした?」
「どうしたじゃな…い、ッあ…」
服を捲り上げられて、胸に舌を這わされる。
ガッカリさせたんじゃあないかって、不安になって、慌てて両手で胸を隠した。
「…隠すなよ…綺麗なんだから…」
「やぁっ、だってぇ、リゾットはおっぱいおっきーのがいいって、メローネが…」
「…俺は、小さい方がいいと思うんだが。」
隠した手はあっさりと退かされて、ちゅ、と音を立てて、敏感な部分に吸いつかれる。
普段のリゾットからは想像もつかない熱い舌が、音を立てて私の身体を這い回る。
「…あっ、…リゾッ…トぉ…」
「ななこの身体は、細くて折れそうだな…」
案にまだ子供だと言われているようで、恥ずかしい。リゾットの隣に並んでも引けを取らないステキなシニョリーナに、早くなれたらいいのに。
「っん、…こどもで、ごめんね…」
「…俺は、好きだがな…」
黒い髪も、小さい胸も、薄い身体も、細い脚も。全部が可愛らしいのだと、リゾットは私を愛しむように撫でながら教えてくれた。
撫でられたところが、じわりと熱を持っていく。内に籠る熱をどう扱えばいいのかわからなくて、リゾットにしがみついた。
「…リゾット…好き…」
「…随分と情熱的だな…」
下着をするりと下ろされ、内腿に指が這う。
擽ったくて身を捩るけど、無意味な抵抗でしかない。
「…っんあ…」
割れ目をなぞるように擦られて、思わず声が漏れる。頬や首筋に口付けられる度に、リゾットの髪が肌を擽る。
「…ななこ、」
「…ひゃ、あんっ、ぅ…あ、」
長い指が挿入ってきて、容赦なく中を擦り上げる。指使いに翻弄されて、ただ声を上げるしかできない。
「…可愛い声だな。…ずっと聞いてみたかった…」
「あっ、リゾットぉ…それ、って…」
「もう、我慢しないからな…」
指を抜かれて、比べ物にならないほどの質量と熱で貫かれる。
嬌声を上げる以外に何も出来ず、ただ必死にリゾットにしがみついた。
「やぁっ、…ぅんっ、りぞっとぉ…」
「…ななこ、…」
挿入したまま、リゾットは私を抱き起こした。リゾットの膝の上に私が乗って、向かい合わせに抱き合う。
「っあ…え、な…んっで…」
戸惑いを伝えれば、リゾットは私の髪をそっと撫でて、恐ろしい言葉を口にした。
「…自分で、してみろよ。」
「…っやだやだ、できないよぉ…っあぁ!」
ふるふると首を振ると、下からずくりと突き上げられる。
促すようにゆっくり揺すられて、思わず腰が浮く。
「…ほら、どこがイイんだ?」
「…っん、ぅ、…やぁっ、はッ…」
奥を擦って欲しくて、腰をぐりぐりと押し付ける。私が動く度に、リゾットの唇から荒い息が吐き出されるのが、すごく色っぽい。
「…ななこっ…」
「ぅあ、リゾットぉ…おくっ…きもちぃー…のっ…もっと…」
ねだるようにぎゅうっと抱き着くと、腰を掴まれてがつがつと揺すられる。
「あっ、い、ッきもち、いッ…」
「…ななこッ、好き、だ…」
「やぁっ、リゾット、リゾットぉっ!」
「…く、…ななこ…ッ!」
あられもなく声を上げながら達せば、熱い飛沫が奥に注ぎ込まれた。
*****
「…あれ、なにこれ。朝から豪華…」
テーブルにはお祝い料理。
今日は誰かの誕生日だったかしらと首を傾げるけど、思い当たる節はない。
「…あ、これはななこにって、兄貴達が。」
エプロンを付けたペッシが笑う。
「…オレたちからのお祝い!」
「ありがとメローネ!って、なんで知ってるの?」
そりゃあ上手く行くだろうって言われてたけど、それにしたって万が一ダメだってことも考えられたんじゃないか。
「そりゃあ、ドアの前通ったらイイ声が聞こえてきたからさ、思わずその場でヌいちゃった。」
「は?…メローネのバカあぁっ!!!!」
勢いよく拳を叩き込むと、メローネはぐふっと声を上げながら後ろに吹っ飛んだ。
「…しかし、良かったじゃあねえか。」
「…プロシュート…えへへ、ありがと…。そういえば、リゾットは?」
いつもなら食卓に着いているはずのリゾットがいない。キョロキョロと見渡せば、メローネが言う。
「…ん、あぁ、もう俺たちが起きる前に出掛けたみたい。恥ずかしかったんじゃないの?」
「…なんで…?」
「え、だって俺がいるの気付いてるみたいだったし。流石だよねー。」
その流石は気付いたことになのか行為を続けたことになのかわからないけど、今後アジトでイチャつくのはよくないってことだけはしっかりわかった。
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