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紳士orチキン

帰ったら、ベッドに下着姿のななこがいた。
壁を向いて、すやすやと寝息を立てている。

「あー…もう何やってんだよ…」

溜息をついて、そっと布団を掛けた。
俺に「お腹冷やすと風邪引くよ!」なんて言ってた張本人がこんな格好で寝るなっつの。
白くて細い腰と、重力に従って布団に流れる柔らかな膨らみ。まあるいお尻もそこから伸びるしなやかな脚も、魅力的だと思う。
だけどそういうのはもっと大切にするもんで、こんな惜しげも無く晒すんもんじゃねーよ。

なんでまた下着姿なんかで寝てるんだコイツは。

いつの間にかななこ用になってしまった、引き出しの下から2段目を開けると、そこにはいつも着ている可愛らしい模様が見えて、別にパジャマがないわけじゃあないよな、と首を傾げる。

起きたら聞いてみようとあっさり思考を放棄して、再度ベッドを見る。
疲れた身体にただでさえ魅力的なベッドが、ななこの姿で何割増になっているだろうか。
もはや魅力ではなく破壊力か、いや何壊すんだよ。
馬鹿な思考と誘惑を振り払うように頭を振って、シャワーを浴びに浴室へと向かった。

*****

「…まだ寝てんのか…って、そりゃそうだよなぁ…」

タオルで頭をがしがしと拭きながら、ベッドの前で溜息を吐く。
これは果たして、夜食にしてもいいんだろうか。相変わらず寝息が聞こえるが、先程掛けた布団は蹴飛ばしたのか足元に丸まっており、彼女は相変わらずその柔らかそうな肌を晒している。

「…おーい、襲っちまうぞー。」

下着姿の若い男女が同じベッドにいてなんにも起こらない方が問題じゃねーの、と伸し掛かって耳元で声を出してみるけれど、ななこは起きる気配もなさそうで。
気持ち良さそうに寝ている顔を見るのも好きだし、わざわざ起こして寝不足にするのも可哀想だ。
仕方なく柔らかな頬に一つ口付けて、隣に潜り込んだ。改めて二人の体に布団を掛ける。
「お腹冷やさないでよ?」なんていつも言われている台詞の後ろの感情を、ここに来て思い知る。なるほどこれは心配だ、なんて。

「…おやすみななこ。」

柔らかな温もりの隣で規則的な寝息を聞いていたら、あっという間に幸せな眠りに落ちた。

*****

「…ミスタ、起きてください。」

ぺちぺち、と頬を叩かれて目を開けると、目の前には不機嫌なジョルノ。事情が飲み込めず逸らした視線の先の窓を見れば、まだ外は暗い。

「ね、ミスタは紳士でしょ?…賭けは私の勝ちね!」

「なんで襲わないんですか。貴方のせいで僕は賭けに負けたんですよ!?」

ぎゃあぎゃあと煩い二人に、段々と眠気が消えていく。賭け?ってことは、下着姿のななこは…

「ジョルノと賭けになって…寝たふりしてたの。ごめんねミスタ。」

可愛らしく小首を傾げる彼女は、未だ可愛らしい下着姿のままで、その隣にはジョルノ。

「また二人で飲んだのか?」

この二人、何故か気が合うらしく、よく二人で飲んではイタズラを考えている。その相手は主に俺で、大半は笑えないほど酷い。今回のはまだ可愛らしいと思えるあたり俺は相当ダメだと思う。

「だぁって、ミスタがいなくて寂しかったんだもん。」

甘えるように抱き着くななこは可愛くて、思わず許してしまいそうになる。

「…お前はそんな格好ジョルノに見せてんじゃねーよ。」

覆い隠すようにぎゅうと抱き締めると、ななこは嬉しそうに俺に擦り寄った。

「…やきもち?ミスタぁ、ジョルノが私なんか相手にするわけないじゃん!」

ギャングスターだよ?イケメン紳士だよ?モテモテだよ?
そう言って笑っているが、俺は2番目を強く否定したい。背中に刺さる視線がそうさせてはくれないのが残念で仕方ない。思わず唇をぎりりと噛み締める。

「そうですよミスタ。部下の大切な人に手を出すなんて…ねぇ?」

いや俺への嫌がらせの為だけにでもやりかねないだろ、と口に出せない不満を視線に込めるも、強い瞳の光にあっさり射殺される。

「…じゃあジョルノ、約束ね!」

「仕方ありませんね。ミスタ、明日は休みです。…ななこが優しくて良かったですね。」

最後に「このチキンが!」と笑顔で小さく囁いて、ジョルノは部屋を出て行った。
ななこには聞こえていなかったようで、彼女は幸せそうに、ありがとうジョルノ!なんて手を振っている。

「…ん、そういや今…休みって…」

「掛けに勝ったら、お休みちょうだいって言ったの。…ミスタ、最近忙しいみたいだったから。」

そう言ってにっこり笑う姿を見てしまったら、ジョルノと二人で飲んだことも、下着姿を晒したことも、それで俺を騙したことも、怒れなくなるじゃあねーか。

複雑な感情を溜息と共に吐き出して、お礼と共に口付けた。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm