「ななこ、今日はぼくの誕生日です」
「え、そうなのおめでとう!」
開口一番、ジョルノが言うもんだから、私は目をぱちくりさせながらもどうにかおめでとうの一言を返す。
「…と言うワケなんで、食事に行きましょう?」
「いやまってジョルノ。どういうわけなのかわからない」
ちゃっかり繋がれた手を振り払いながら言えば、ジョルノは不思議そうな顔で私を見た。
「わからない?…どうして。」
「え、だってジョルノの誕生日なんでしょう?みんなが祝ってくれるんじゃあないの?」
私の言葉に今度はジョルノが不思議そうな顔をする。なんだか噛み合ってない。どういうことなのこれは。
「…わかりましたななこ。まず日本での誕生日の過ごし方を教えてください。」
いつも突飛だけれど誕生日でも例外じゃあないのかこの人は。誕生日の過ごし方なんてどこも変わらないだろうに。そんなことを思いながら私は問いの答えを返す。
「え、普通にしてたら友達とか家族がプレゼントくれたりケーキで祝ってくれたり…?」
「それですななこ。」
合点がいったと言わんばかりに頷くジョルノに首を傾げれば、彼は「イタリアでは誕生日の人が周りをもてなすんですよ」と教えてくれた。え、なにそれ私騙されてない?
「自分で祝うってこと…?」
訝しげな視線を向ける私に、「まぁそういうことです」と返事をするジョルノは、再び私の手を取った。
「ここはイタリアなんで、従ってもらいますよ」
笑顔が怖い。これは逆らったらマズイやつだ、と本能的に察した私は、手を繋ぐのはごめんだとアピールしつつ(軽く無視されたけど)、肯定の言葉を返す。
「わかったよジョルノ…。でもプレゼント、用意してないの」
用意したいから、後日祝わせてもらえないかな?と精一杯の上目遣いで見つめれば、ジョルノは花が咲くみたいな綺麗な笑顔をくれた。
「何言ってるんですかななこ。プレゼントならぼくの目の前にありますよ。」
そう言われても、ジョルノの目の前には私しかいない。…それは、もしや。
「ほんの一晩、付き合ってくれればいいんです」
「いやよくない!」
ここはイタリアです。今日はぼくの誕生日です。そしてぼくは君の上司です。畳み掛けるようにそう言われてしまっては、もう逃げ道なんて存在しなかった。
「…わかったジョルノ。」
「ありがとうございます!」
「でも、今日の間だけだからね。」
せめて貞操だけは守りたいと思うのだけれど、まだ昼だというのに獣のように瞳をギラつかせるジョルノを見ていると望みは薄そうだ。
「ねぇジョルノ?」
「なんですななこ」
「お誕生日おめでとう。」
ひどくされることだけは避けたい一心で、私は不意打ちで彼の頬に口付けた。
「…ななこ…そんなに待ちきれないなら食事の前にホテルに行きましょうか!」
「ちがっ、私からのプレゼントは!今のキスってこと!」
「…ふざけないでくださいななこ。」
足りるわけないじゃあないですか。と凄まれて、私はもうどうにでもなれと、盛大な溜息を吐いた。
20170416 Happybirthday!!
イタリアの誕生日は本人が祝うらしいです…知らなかった…
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bkm