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猫の首に鈴を付ける

「吉影ぇ、なにやってんのー?」

勝手知ったるなんとやら。私は鍵の掛かっていない玄関から勝手に日本家屋に入っていく。鍵が開いているしどうやら吉影は部屋にいるようだ。

「君は手以外は全くもって美しくないな。」

「それはひどくない?多少は可愛いと思うんだけどぉ。」

ノックもせずに襖を引くと、吉影は振り向かず言った。ノックをしてもしなくても、私が来たことなんてお見通しのくせに。

「…君を手だけにしたらさぞや美しいだろうね。」

「…あー、それは宣戦布告と取っても?」

スタンドを出して吉影の背中に照準を合わせる。どちらが強いかはわからないけれど、吉影相手なら勝っても負けてもいい。むしろ殺されたっていい。

「いや、遠慮しておくよ。わたしは争いは好まないからね。」

私の殺気に気づいたのか、吉影は振り向いて両手を上げた。ひらひらと手を振って、白旗宣言のつもりだろうか。

「つーまんないのー。」

「それに、君の相手をしたら無傷じゃあ済まないだろう?」

くすりと意味深に笑うから、こちらも負けずに唇の端を持ち上げる。

「…それは、吉影が?」

「いいや、君の手が、だ。」

一瞬のうちにキラークイーンが私の手を掴む。流石は吉影、敵に回したら恐ろしい男。まぁ別に味方でもないのだけど。
私も彼もシリアルキラーで、彼は手が目的だけど、私はただ壊すのが楽しい。どちらが悪いかなんて、知らない。

「相変わらず可愛いネコちゃんね。」

くるりと手首を回して、キラークイーンから離れる。彼も冗談のつもりだから、すぐに腕を解放してくれた。

「君は相変わらずじゃじゃ馬だな。」

「お褒め頂き光栄です。『吉良さん』」

そう言ってスカートの裾を持ち上げて、プリンセスよろしく小首を傾げる。

「キラークイーンくらい大人しいならうちで飼ってやるのに。」

「…それは少しだけ魅力的ね。マイフェアレディ?…大人しくしようかしら。」

くすくすと笑うと、吉影は立ち上がって私の前まで歩み寄り、どこから出したのか猫耳を頭にくっつけた。

「…猫?」

「可愛らしく鳴くのなら、飼ってやってもいいさ。」

手で触って感触を確かめる。ふわふわとしたこれは、一体何でできているのか。
吉影なら、本物の猫から作ることすらやりかねないな…と思う。そんなリアリティも素敵だと思える私は、やっぱりどこかおかしいに違いない。

「…意外と悪趣味ね。」

まぁ、鳴いてあげてもいいけど、と続けて彼の大好きな手で、頬を撫でた。
吉影が私のことを好きかは知らないけれど、私の手はひどく彼に愛されている。たとえどれだけ血に塗れようとも、他人の血であれば吉影は何も言わない。だから私のワガママも、大目に見られているわけで。

「あぁ、言い忘れたが。」

私の手を掴んで頬擦りしながら吉影は楽しそうに笑った。

「…それも『爆弾』なのでね。おイタが過ぎるとどうなるかわかるね?子猫ちゃん。」

知らぬ間に私は鈴を付けられたらしい。





っていうかこれ、取れないんですけど。






萌えたらぜひ拍手を!


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bkm