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きみのとなり

仗助の幼馴染夢主と億泰




ななこは、可愛い。
俺ん家の近所に、俺たちが越してくるずっとずっと昔から住んでいる彼女は、仗助の幼馴染とかいうやつだ。

「仗助くん!」

懐っこい笑顔で駆け寄ってくるななこが仗助の隣にちょこんと立つと、まるでそこが定位置みたいにぴったりな感じがするし、後ろに花でも咲くんじゃあねーかって思うくらい少女漫画みてーな美男美女。「お似合い」っつーやつだ。それは俺だけじゃあなくて、みんな思ってるって、噂を聞けばわかる。

「…お、ななこ。どーした?」

「億泰くんも!一緒に帰ろう!」

ホントお似合いだよなァ…、と溜息を吐くと、ななこは「どうしたの?」と心配そうに俺を覗き込んだ。

「…もしかして、私、お邪魔?」

「ちげーよォー、それを言うなら俺のが邪魔じゃあねーか!」

瞬きするたびぱち、と音がしそうなくらい大きくて黒目がちな瞳に見つめられると、なんだか見透かされそうで恥ずかしくなってしまう。ぷいと顔を背ければ、ななこは不思議そうに「なんで億泰くんが邪魔なの?」と小首を傾げた。

「だっておめーら付き合ってんだろ?」

「はァ!?何言ってんだよ億泰、んなことあるわけねーだろー」

「そ、そうだよ億泰くんッ」

仗助は相変わらずのノリで否定するけど、彼女の慌て方を見ると仗助が好きなんじゃあねーのかなって、思う。こんな可愛いななこに想われてんのに気付かねーなんて、勿体無い。

「…でもよォー、いーよなぁ幼馴染。マンガみてーでよー」

俺も欲しいぜー、ななこみてーな幼馴染、なんて溜息を吐いてみれば、仗助はからかうように「幼馴染でいいのかよ。カノジョが欲しいんじゃあねーの」と笑った。

「ちょ、なにいってんのよ仗助くんッ!!!」

俺が否定するよりも先に、ななこが真っ赤になりながら大慌てで割って入った。なんでコイツがこんなに慌てるのかわかんねーけど、仗助のことが好きだから勘違いされたくねェのかな、と思ったらなんだか落ち込んだ。

「そーだぜェ仗助、ななこなんて選り取りみどりだもんよォー、俺なんか選ぶわけねェだろー」

あー、なんか言ってて悲しくなってきた。仗助はすげーニヤニヤしながら俺を見てるし、ななこは真っ赤んなってるし、なんだよこの状況どーすんだよ。

「…だってよ、ななこ」

「…うう…うるさいよ仗助くん!私もう帰るッ!」

仗助がからかうようにななこを突っつくと、彼女は怒ったように走り去っていった。
あまりの剣幕に呆然とする俺は、仗助に「いーのかよ、行っちまったぞ?」と声を掛けるのが精一杯だった。当の仗助は呑気な声で「あー…まぁいーんじゃね?」なんて追い掛けるそぶりもなくゆっくりと歩いている。

「いや、良くはねーだろ…」

俺が困り果ててそう言えば、「だったらオメーが追いかけりゃあいーだろ」なんて言うもんだから、俺はななこが走って行った方向に向かって駆け出した。

*****

俺のあんま速くない足で追いつけんのかなって思ったけど、ななこは割とすぐ見つかった。遠くから見ても可愛いなと思う。ホント、仗助といるとお似合いなんだよな、なんて居もしないリーゼントを勝手に彼女の隣に並べた。

「おい、ななこ…」

「…ッ、億泰くん!」

俺が後ろから声を掛けるとななこは目をまんまるにして振り向いた。声を掛けたは良いけれど何を言っていいのかわからなくて、「どうしたんだよ…」とやけに尻窄みな言葉が唇を割いた。

「…う…ごめん…」

ななこは気まずそうに視線を下げた。なんでコイツが謝るのか俺にはわかんねー。

「なんでななこが謝るんだよ。…むしろそこは俺じゃねーの。」

…好きなんだろ、仗助のこと。と告げた言葉は自分が思ってたよりずっと震えていた。カッコ悪ィ。
ななこは弾かれたように顔を上げて「違ッ、」と否定の言葉を吐いた。違、う?…違うのかよ。思わず頬が緩みそうなほど安堵の気持ちが広がっていく。仗助だったらお似合いだ、と思っていたはずなのに、ゲンキンな話だ。

「…違うのかよ…」

「…ん、うん…」

じゃあ誰が、と聞きたかったけど、ヤブヘビにしかならなそうで唇を噛む。仗助だったらまだ、折り合いがつけられそうな気がしていたのに。誰とも知らない奴が好きだったりしたら、俺はどーしたらいーんだよ。

「…俺ァてっきり仗助のことが好きなんだとばっかり思ってたぜェー!」

わざとらしく見えるほど大袈裟にリアクションを返せば、ななこは困ったように「違うよ」と言ってそれきり黙り込んじまった。
会話が続かなくて二人黙ったままとぼとぼと歩く。すげー気まずいけどどうしていいのかわかんねーし、ななこは追いかけてきてなんて欲しくなかったんじゃあねーかなと思うと、このまま一緒に歩いていいのかもわからない。

「…あの、億泰くん…」

沈黙を破ったのはななこの方で、俺はびっくりして言葉にならない声を上げた。

「…お、おぅ。…なんだよ。」

「…好きな子、いる?」

「……いるぜ。」

目の前に、とでも言っちまえればいいんだろう。けれどそんな勇気は俺にはなく、再びの沈黙。
今度も、破ったのはななこ。

「じゃあ、私が好きって言ったら迷惑だよね…」

「はァ!?」

え、それってよォ、ななこは俺が好きってコトかァ!?と驚きのままに言葉を零せば、ななこは小さく肯定の意を示した。マジかよ。

「…好きなヤツに好きって言われて迷惑なんてことあるわけねーだろ!」

「…え、」

なんだよ両思いだったのかよ、って安堵の気持ちと、あのななこが俺なんかのことを好きだって言うのが未だ信じられないって気持ちと、なんだかごちゃごちゃのまま、ななこの顔を見つめた。やっぱり可愛いよな、なんて思う。

「…俺も、ななこのことが好きだ…っつーワケだからよォー、よろしくな?」

俺じゃあななこの隣には似合わねーかもしんねーけど、いつか仗助とななこみたいに、お似合いだって言ってもらえるように頑張らねーとな、と、拳をぎゅうっと握りしめた。


20170108


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm