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オトナじゃなきゃダメですか?【番外編・2】

オトナじゃなきゃダメですか?の続き。
億泰がとうとう夢主押し倒す(押し倒される?)日が来た話、と言われたので番外編の続き。




据え膳食わぬは男の恥、って言葉は、俺も知ってる。キンチョーで震えながらななこさんに唇をくっつけると、ぎゅうっと抱き着かれた。これは「据え膳」っつーヤツになんのかなァ、と考えようとしたけど、心臓がバクバクうるさくって全然考えらんねー。

「…ななこさん、ッ、」

切羽詰まった声を出せば、彼女は苦しげに眉を寄せて、何か懇願するみたいに俺を見つめた。そうして柔らかな唇を開いて、言った。

「…ごめん、きもちわるい…」

「はァ!?マジかよ!ちょ、まッ、まだ吐くなよ!?」

慌ててななこさんを抱え上げ、トイレに連れて行く。ドアの向こうに放り込んですぐ、苦しそうな嗚咽が聞こえた。水を汲んできてやろうと慌てて台所へと向かう。それにしても、ここが一人暮らしのワンルームで良かった。俺んちだったら絶対間に合わない。

「…大丈夫かァ?」

「ぅ、…ごめん…」

震える背をそっと撫でる。苦しげに歪む顔は、涙と吐瀉物でトイレの淡いオレンジの光をきらりと反射した。

「気にしねーから、心配すんなよ…。吐いたらスッキリしたか?」

「…ん、もう大丈夫…」

「ホラ、これで口濯いで。そんで寝ちまえ。な?」

ありがと、と小さな謝辞を述べたななこさんは、口を濯ぐと申し訳なさそうに俺にコップを寄越した。

「…ごめんね、億泰くん…」

「謝るこたァねーだろ。」

コップどころか身体まで預けてくる始末だ。こりゃあ本当に具合が悪そうだな、と思いつつ、肩を貸してやる。流すのは後でいいかと後手にトイレの蓋を閉めて、ベッドまで彼女を支えた。

「…横になれるか?」

「…うん…」

「…もう気持ち悪ィの大丈夫か?」

「……ん…」

半分眠ったように俺にしなだれかかるななこさんをベッドに横たえ、さてどーしたもんかと彼女を見た。このまま置いていくのは心配だけど、なんつーか、泊まるのもマズイ気がする。

「なぁ、俺…帰ってもいいか?」

遠慮がちに声をかけても返事はない。帰るか、と身を引こうとしたのだけれど、それは叶わなかった。見ればななこさんの細い腕がいつの間にか俺の服の裾を捕まえている。慌てて離そうとすると、「…やだ」と小さな声が布団から聞こえた。

「…んなこと言ってもよォー、」

「おくやすくん、一緒にねよ…?」

そう言うとななこさんは布団の端っこを持ち上げた。入れってことなんだろうけれど、これは流石にマズイ。
普段言わないワガママは叶えてやりてーけど、こんなななこさんと一晩一緒にいるとかフツーに考えて無理だ。

「…寝れねーよ…俺、ななこさんのこと襲っちまいそうだもん…」

俺のなんとも情けない告白を聞いたななこさんは、恥ずかしそうに頬を染め「それでもいいよって言ったら、お泊まりしてくれる?」なんて可愛らしい台詞を吐いた。
普段なら俺がどんなに言っても絶対「帰らなきゃダメ」って言われてたから、これはもう本当にななこさんなんだろうか、新手のスタンド攻撃じゃあねーのかな、なんて。

「オメーがいつもダメだっつーんだろーが。」

「…だって…離れたくなくなっちゃうもん…」

きゅう、と服の裾を握り込みながら、ななこさんは縋るような瞳を向ける。そんなこと思ってくれてんのかよ。てっきり俺は、自分の方が好きなんだとばっかり。

「…ッ、後悔しても知らねーから」

ななこさんが少しばかりめくった布団をさらに持ち上げ、彼女にのしかかるみたいに布団に潜り込む。シングルベッドに大人二人はどう考えても狭い。

「…でもよォ…ななこさん明日これ覚えてんの?」

「…わかんない…」

俺の身体に身を寄せながら、ななこさんは幸せそうに目を閉じた。ふんわりと柔らかい匂いはななこさんのシャンプーだろうか。

「もし覚えてなかったらよォ〜、俺…寂しーから…」

だからってこのまま寝れねーよなとか、誘われてるとは言え酔ってるのにまずくねーかとか、初めてはやっぱり覚えてて欲しいよな、とかいろんなことがグルグルと浮かんでは消える。結局俺はいろんなものを諦めて、ななこさんの背をそっと撫でた。

「…明日、酔い冷めて覚えてたらしよーぜ。」

気持ちよさそうに瞳を閉じるななこさんの耳元に囁きかける。上擦った声じゃあなんともサマにならねー。

*****

すやすやと規則的な寝息を聞きながら、まんじりともせず一夜を過ごした明け方、ななこさんがゆっくりと瞼を持ち上げた。

「…ん、…あれ、おくやすくん、」

酒のせいか少し掠れた声で俺を呼ぶと、彼女はそのまましばらく俺を見つめた。寝ぼけてんのかな、なんて思いながら寝不足の働かない頭でぼーっとななこさんを見つめ返していると、突然彼女は勢いよく身体を起こした。

「ッッごめ、ごめんッ!!ホントごめん!」

ベットから転げ落ちるように逃げ出したななこさんは、顔を真っ赤にしながらあーとかうーとか声にならない声を上げ、「ホントごめん!ちょっと待ってて、頭冷やしてくる!」と言い残してドタバタと部屋を出て行った。あまりの出来事に何にも言えないまま、俺は一人ベッドに取り残された。
急に家主を失ったベッドは妙に寒くて、俺は布団を被り直す。慌てていたところを見ると酔いは覚めたんだろうか。つーか昨夜のこと覚えてんのかな。
緊張の糸が解けた俺は盛大に溜息をつく。安堵と後悔の入り混じった呼吸を吐き出しても心はぐちゃぐちゃのまんまだ。水音が聞こえてきて、あぁ、ななこさんはシャワー浴びてんのか、なんてぼけっと考えた。彼女にしたら、一緒のベッドで寝るのなんてなんでもないことなんだろうか。一晩中悶々としていたのは自分が子供なだけかな、なんて己の劣情を思うとなんだか情けなくすらある。

しばらくして、ななこさんが戻ってきた。まっすぐにベッドまで歩み寄ると、布団を捲りあげて俺にのしかかる。

「…んッ、…!?」

唇を塞がれるなんて思ってもみなかった俺は、突然のことにどうすればいいのか分からず、あぁ石鹸の匂いがするな、なんて間抜けなことを思った。

「…億泰くん」

「…なっ、…まだ酔ってんのかァ!?」

酔ってないよ、と答えると、ななこさんは俺の頬を手のひらで包み込んで、もう一度ゆっくりと唇を寄せた。昨日から煽られ続けた俺はそんなことされて我慢できるはずもなく、彼女を抱き寄せて身体を反転させた。

「…ぅわっ!」

「煽ってんじゃあねーよ…」

シャワー浴びてキスなんて、どう考えても誘われてるとしか思えない。俺に見下ろされたななこさんは、恥ずかしそうに瞳を伏せた。

「…だって、昨日億泰くんが…」

「…おれ、が…?」

昨日のことを、覚えているんだろうか。そもそも俺は、彼女になんて言った…?
心臓がバクバク鳴って、元々鈍い頭が余計に上手く回らない。ななこさんは蚊の鳴くような声で真っ赤になりながら告げる。

「覚えてたら、…しようって…」

迷惑かけてごめんね…覚えてる、から…と真っ赤な顔で続けて、彼女は俺の首筋を抱き寄せた。
知らないふりだって出来ただろうに、まさかななこさんがこんなことするなんて。これは、彼女も先に進んでもいいって思ってくれてたってことなんだろうか。そう思ったらもう止められなかった。

「っん、…おく、やすく…ッ、」

苦しげに零れる言葉にも構っちゃあいられない。噛み付くみたいに何度も口付けて、昨日ななこさんがしたみたいに舌を絡める。服の裾から手を差し込むと、ななこさんはびくりと身体を震わせた。

「…上手く出来るかわかんねーけど」

俺のガサついた指先なんかとはまるで別物みたいなキメの細かい肌を撫でながら、服を下着ごと捲り上げた。ななこさんの胸は柔らかくって、どれくらいの力を込めたらいいか全然わからない。触れた時はこのまま指先が沈んじまうんじゃあないかと思ったけれど、そっと力を込めるとハリのある肌が指先を押し返す。初めての感触に、思わずその動作を何度も繰り返す。

「…っぅあ、…ッは…」

ななこさんの吐息が零れる度に何かが重苦しくのし掛かるみてーな気持ちになって、俺は彼女の肌に噛み付いた。痛いのか驚いたのかななこさんは短く悲鳴を上げ、それを聞いてまた息苦しくなる。

「…なぁ、俺…すげー苦しい…」

優しくしたいのに、食っちまいたいくらい可愛い。もどかしくて苦しくて、そのまま気持ちを吐露すると、ななこさんは恥ずかしそうに身体を起こし、俺のズボンに手を掛けた。

「…こんなになってたら、そりゃあ苦しいよ」

「ッ、ちょ…ななこさんッ…」

ななこさんの細い指先が、ベルトを外していく。マジかよ、ななこさんが、なんて、思わずその指先を見詰めた。時折指先が掠める度に呼吸が浅くなっていく。ななこさんの手で外気に晒された時は息が止まるかと思った。

「…ちょっと待ってね」

ちゃんとしないと、と彼女はどこからかコンドームを取り出して手際良く俺にくっつけた。これはななこさんが俺とセックスするって思って買ったんだろうか、考えるだけで頭が沸騰しそうだ。

「…なぁ、ななこさんが買ったのか?…俺と、その、するために…」

「…恥ずかしいから言わないで…」

ぐい、と身体を引かれて、口付けられた。
もうなんかこのまま突っ込んじまいたいけど、俺の少ない知識だってそんなのはダメだってわかる。ななこさんは経験豊富みたいだし、下手くそだって思われたらどうしよう、と不安に思いながら、彼女の下肢にそっと手を伸ばした。

「…ななこさん…好きだぜ…」

潤んだ内壁に指先を沈める。どう触っていいかなんて全然わからない、文字通り手探りだ。すげえ熱いんだな、と思った声はそのまま唇から溢れていたようで、ななこさんが恥ずかしそうに吐息を零した。

「…大丈夫か?」

誤魔化すように問い掛ければ、大丈夫、と吐息混じりの声が返される。それならば、とさらに深く指を沈めれば、ななこさんは可愛らしい嬌声を上げながら俺にしがみついた。

「っあ、…おく…ッ、」

「奥?…こうか?」

「やっ、あ、あっ…!」

ふるふると首を振って身悶えるななこさんはすげえ可愛い。おくやすくん、と喘ぎ混じりに呼ばれて、あぁ俺の名前を呼びたかったのか、と思ったけど、ななこさんの反応があんまり可愛くって俺はしつこく彼女の奥を探った。

「ぅあ、やぁッ、も…だいじょーぶ、だからぁっ…」

ねだるように身を捩られて、思わず吐息が零れた。指先で探るのを止めると、早く、とでも言いたげな瞳が俺を見る。促されるみたいにななこさんの入り口に自身を当てがい、そのまま腰を進めた。彼女は俺の首筋に腕を回し、浅い呼吸を繰り返している。

「…っあ…、ッは…、」

「…ぅあ、…だいじょーぶ、か…?」

なんだこれ、めちゃくちゃ気持ちいい。今すぐにでも突き上げたい気持ちを無理矢理に抑え込んで問い掛ければ、ななこさんは焦点の定まらない瞳をこちらに向けながらこくこくと頷いた。

「おくやすくんッ、すき…」

「…おれもッ、」

ああもう、身も心も全部、俺のものにしちまいたい。ぎゅうと抱き締めて何度も穿てば、その度に可愛らしい声が上がって、五感の全部がななこさんで埋め尽くされてすげー幸せで、何度も何度も名前を呼びながら彼女を貫いた。

*****

「…大丈夫か…?」

ぐったりと身体を投げ出すななこさんを心配して声を掛けると、「大丈夫だよ」と小さな答えが背けたまんまの顔から返ってきた。
もしかして、嫌われたかな。なんて急に不安になって、ななこさんの顔を覗き込む。彼女は俺の視線から逃げ出して、胸に顔を押し付けた。

「…なんで逃げんだよォ…おれ、上手く出来なかったか?」

「…違うよ、…恥ずかしいから…」

くぐもった声が帰ってきて、ほっと溜息を吐く。胸にひっついたななこさんの髪を撫でると、可愛らしく擦り寄ってきた。

「…恥ずかしがることなんてねーだろ…」

そんなこと言われたら俺だって恥ずかしい。いや、でもよく考えたらななこさんはすっげー積極的っつーか、エロかった気がする。

「…いや、でも確かにななこさんすげーエロかったなァ…」

思い出したらまた勃っちまいそうだ。なんたって若いんだから仕方ない。

「億泰くんの意地悪…」

「…だぁってよォ、ななこさんがエロかったのは事実だろー。俺、…俺の方ばっかななこさんのこと好きだと思ってたから、すげー嬉しい…」

ぎゅうっと抱き締めると、ななこさんもおんなじように俺を抱き返してくれた。
なんつーか、少しオトナになったような気がして嬉しくって、胸に埋もれる可愛らしい旋毛に口付けた。

20170306


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm