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君の唇は蜜の味。

未成年の喫煙はダメ絶対。
成人でもできればダメだと思っている。




「ななこさんとキスすると、口ん中苦え…」

目の前の少年は、頬を赤く染めながらも不満そうな面持ちでそう零した。そういえば彼の唇はどんな味だったかしらと思いつつ、答えを返す。

「あぁ、さっき煙草吸ったから。」

この家に来る前、コンビニで一服したせいだろう。この不良はこんな格好の割に堅実で(バカだけど)、金銭感覚もしっかりしているし家事もそこそこできる、私には勿体無いくらいの恋人なのだ。もちろん、彼はタバコなんて吸わない。むしろ甘党で、よくアイスクリームなんか食べている。

「おめーよォ、未成年だろー?」

未成年はタバコだめなんだぜ?なんておおよそその見た目にはそぐわない台詞を吐くもんだから、なんだか揶揄いたくなってしまう。

「18歳は大人なの。」

「え!?マジ?」

私が真面目な顔で言えば、あっさりと騙されてしまうのだから可愛いったらない。けらけらと笑いながら、億泰のおでこを小突く。

「うそだよばーか。」

からかわれていたと分かって「なんだよ」なんて不機嫌そうに言った後、彼は急に真面目な顔で私を見て、ぽつりと言葉を零した。

「あのよォ…タバコ、やめねぇ?」

「…ん?」

吸っている所を見られて苦言を呈されたことはあったけれど、こんなに真面目に言われたのは初めてで、まじまじと億泰の顔を見る。彼は困ったように視線を泳がせながら言葉を探していた。私を気遣って言葉を選んでくれているのか、それとも自分の思考を表す言葉が見つからないのか。もしかしたら両方かもしれない。

「女の子が吸うと、その…子どもに影響するって聞いてよォ…俺…」

「億泰の子ならいずれにしてもバカだから大丈夫じゃない?」

笑いながらそう返すと、彼はキッと私を睨みつけた。そうして勢い良く私に掴みかかる。

「っそーいう問題じゃねーよ!…、って、え、俺の…?」

みるみる真っ赤になっていくのが見て取れる。さっきまでの勢いはどこに行ったのか。くるくると変わる表情が可愛くて仕方ないと言ったら、きっともっと赤くなるのだろうか。

「…おぉ、真っ赤だすごい。」

「からかうなよ。…心配してんだよ俺は。」

それはそれは心配そうな顔で言うもんだから、心がチクリと痛んだのは秘密にしておこうなどと考えつつ、あまりに真っ赤な彼の頬を覗き込むように顔を近付けた。

「タバコの代わりに、億泰がキスしてくれるならいいよ?」

真っ赤になりながらも私の胸倉を引っ掴んでぶつかるように口付けた億泰を見たら、これは禁煙せざるを得ないな、なんて。

「…禁煙しろよ。」

「善処します。」

タバコの味がしない口付けは、きっともっとずっと甘いに違いない。


20161015


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm