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ココロも、カラダも。

億泰くんと付き合い始めて半年。
女性慣れしていない彼はとんでもなく奥手で、唇を重ねるまでに3ヶ月を要し、そこからさらに3ヶ月経った先週、痺れを切らした私が半ば襲うようにして身体を繋いだ。

億泰くんはやっぱり初めてだったらしく、何をしていいかなんて全然わからなくて始終涙目で。正直あんなの情事とはとうてい言えないようなもので、私もなかなか痛かったんだけど、それはそれは可愛い億泰くんの姿を見ることができたのでけっこう満足だったりする。今なら世の中に処女神話があるのも頷ける。あれは確かに大切にするべきだ、うん。

「…なぁ、ななこー?」

「なぁにー?」

ソファに転がりながら回想に耽っていると、
頭の上から億泰くんの声が降ってきた。
ころりと仰向けになって、彼を見上げる。
なんだか妙に真剣な雰囲気。どうしたというのだろうか。

「…今日、泊まってもいいか?」

「ん、いいよー。」

それきり、会話が続かない。
普段ならニコニコと笑いながら学校の話とかテレビの話なんかをしているはずの億泰くんは、唇を引き結んで難しい顔をしている。

食事もお風呂もそんな調子のまま、今日が終わろうとしていた。

「…今日はどしたの?元気ないね。」

嫌なことがあったんなら、慰めてあげるよ。
そう言おうと億泰くんに近づくと、不意に抱き締められた。

「…なぁ…だ、抱いて、も…いいか…ッ?」

多分やっとの思いで言ったであろうその言葉は見事に震えていて。それでも力と熱がしっかりと篭ったそれを、頷くことで億泰くんに返す。

「…っわ…!」

足元が揺れて思わず声を上げる。気付いた時には軽々と抱き上げられていた。びっくりしてしがみつくと、私を抱く腕にぎゅっと力が篭る。
そのまま無言でのしのしと歩き、ベッドにそっと降ろされる。

「…ななこ…」

普段は表情豊かだからあまり感じないけれど、こうやって真剣に見つめられるとその目付きの悪さにびっくりする。視線で射抜かれて穴があいてしまいそうだ。ゆっくりと近づいてくる唇に視線を落として、それから瞼を閉じた。

無言のまま、ただ落ちてくる唇を受け止める。少しばかり荒い呼吸音と、水っぽいリップ音、それから布の擦れる音。

「…ん…っ、」

ぎこちなく差し込まれる舌に少々面食らっているうちに、パジャマのボタンが外されていく。
そう言えば意外に器用だったなと思う。バイクなんかも弄れるし、料理も得意だ。男の料理!みたいなものを想像していたのに、出された皿のりんごがウサギで思わず笑ってしまったことを思い出す。

「…っ、億泰くん…」

自由になった唇で名前を呼べば、不安そうな瞳が向けられる。

「…大丈夫、だから…」

それは彼自身に言い聞かせるような言葉。
意を決したように吐息を一つついて、露わになった肌に指を這わせていく。
眠る子猫を撫でるように、何度も、そっと。

「…っは…」

擽ったいような気持ちいいような、もどかしい刺激に吐息が零れる。
時折困ったように彷徨わせながらも、その手は私の胸に辿り着いた。

「…柔らけーなぁ…」

むにゅむにゅと揉みしだかれる。なるべく力を入れないようにそっと触っているのがわかって、こそばゆい。

「…あっ、ん…」

ちゅ、と音を立てて吸い付かれて、思わず声が漏れる。そのまま甘く噛まれて吸い上げられて、一度開いてしまった唇が閉じられない。

「…ななこ…痛くねーか?」

「…ん…きもちいーよ、億泰くん…」

「…痛かったら言えよ…?」

そのまま下腹部に指を這わされる。
力加減がわからないせいか、本当にそっと触れるだけの愛撫。指がつるりと滑るのは、私が濡れているせいなんだと思う。

「億泰っ...く、んっ..!」

ゆっくりと、無骨な指が挿入ってくる。
ぎゅっとしがみつけば、押し殺したような吐息。時折太ももを掠める硬いものは、億泰くんの必死さをありありと伝えてくれる。

「…っく…ななこ、しんどくない?」

途切れ途切れに吐息を混じらせて、しんどいのは億泰くんの方じゃないかと思うんだけれど、それでも愛撫はゆっくりで、どうしようもなく愛されてる気がして泣きそうになる。

「…だいじょーぶ…っあ、…ぅ…」

指先が当たるところが、心がどうしようもなく気持ちよくて、閉じた瞳の端から涙がぽろりと零れる。

億泰くんはびっくりして、慌てて瞳の端に唇を寄せた。

「…どした?痛い?ごめんな、俺ッ…」

「…ちが、うのッ…ちがうの…好き、好きすぎて…なみだでちゃう…」

ぎゅうっと抱きつけば、少ししてきつくきつく抱き締められた。耳元で聞こえる荒い呼吸音。

「…俺だって、ッ!…好きだ…」

「…ね、もう…ちょうだい…」

痛みでも快楽でも、億泰くんから与えられるならそれで幸せだと思う。

「…ッ、ちょっと…待ってな…?」

億泰くんの身体が少し離れて、ビニール音。どうやらちゃんと避妊具の用意もしてくれていたらしい。

「…億泰くん…」

「…ほんとはもっと、スマートに行きたかったんだけどよぉ〜、難しーなー。」

そう言って恥ずかしそうに笑うと、足を割り開かれる。慣れない異物感はあるけれど、前回のような痛みはない。

「ひあっ、…ぅあ…あっ…」

「…んッ、だいじょーぶ…か…?」

何度もキスをしながら、ゆっくりと腰を進めてくれる。身体の中で擦れる億泰くんの熱が、唯々愛おしい。

「…すき、ッ…億泰く…んっ…」

「…ッ…悪ィ、あんま…持たねーかも…」

奥まで挿入った状態で、ぎゅうっと抱き締め合う。心ごと抱き締められてるようで、胸が苦しい。

「…億泰くんっ、…」

我慢できずに擦り付けるように腰を押し付ければ、甘い吐息が漏れる。

「っ…ななこ、ななこッ、」

何度も名前を呼ばれながら穿たれる。
私の口は開きっぱなしで、ただもう全身で億泰くんのことを受け止めた。

「ッあ、あぁっ、すき、ッ、億泰…く、んっ…」

「ッ、く…っ…!」

最奥でびくびくと震える億泰くんを締め付けるように、勝手に腰がびくつく。縋るように抱きつけば、ぎゅうっと抱き返された。


*****


「…億泰くん…びっくりしたよ…」

へにゃりと力の抜けてしまった身体を預ける。恥ずかしいけれど、すごく心地いい。

「俺だってよぉ〜、好きな女くらい守りたいし…。そんな毎回俺だけ気持ちいいわけにもいかねーだろー。」

頬を染めて、視線を逸らしながら。ぽつりぽつりと話してくれた。
仗助くんや康一くんに恥を忍んで聞いてみたこと、わざわざ学ランを脱いで駅前のドラッグストアに行ったこと、普段は読まない本まで読んだこと。

「…か…っわいい…!」

胸がきゅうっとなって、思わず抱き着く。
なんて愛されてるんだ私。今、きっと世界で一番幸せかもしれない。

「バッ、そこはかっこいーっつーとこだろーがよォ!」

不満そうな顔で、首筋に口付けられる。

「…っあん、…ちょ…」

「…イッた後が大切だって…仗助に言われてよォ…」

恥じらいながらも、抱き締めてキスをして髪を撫でて。一つずつ慈しむような動作に、心が綻んでいく。

「はー…すっごい幸せ…このまま寝そう…」

「…疲れたろ。ゆっくり休めよ。」

「やだよ、勿体無いもん。」

微睡みに半分身を任せながら、そっと寄り添うと、大きな手で頭を撫でられた。

「…なぁ…俺、ちゃんと大人になっからさ。…少しだけ、待ってて。」

「…もちろんだよ…」

ずっと大好きだから。
胸に顔をうずめながらそう呟いてみたけど、ちゃんと億泰くんに届いたかどうかは知らない。



萌えたらぜひ拍手を!


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bkm